
左が今回キャディを務める兄の福住将で、右がACNツアーで優勝し、日本OPに初出場する弟の修(撮影/大澤進二)
ライバルであり、最高のパートナー
福住修(弟)と将(兄)は、小学校1年でゴルフを始め、中学・高校(高知県・明徳義塾)も常に同じ道を歩んできた。修は22年『日本アマ』5位、24年『アジアパシフィックアマ』8位などアマチュア時代からトップレベルで活躍し、今季プロ転向。兄・将も今年のプロテストで10位以内という好成績で合格を果たしている。
修は兄の存在について「互いに負けたくないと思ってやっているので、いい効果を生んでいると思います」と語る。しかし、兄・将にとって、ライバルである弟が結果を出す状況は精神的にツラいプレッシャーとなることもあったという。
それでも、今大会での兄弟タッグは、単なる偶然ではない。
「直接、修から聞いたわけではないのですが、『この試合に優勝したらマスターズに行ける。そのために誰をキャディにすれば良いか』という話になり、『ずっと一緒にやってきた将がキャディをすれば上手くいくかもしれない』という話になり、両親を通じて打診され、はじめて弟のキャディバッグを担ぐことにしました」
兄は、弟からそう持ちかけられたことに「とても嬉しく」思い、挑戦を決意した。自身がファーストQTで涙を飲んだ分まで、弟に大舞台で活躍してほしいという願いが、そこには込められている。
キャディが活かす「双子ならではの利点」
将にとって、ツアーでのキャディ経験は初となる。不安要素として、自身の経験不足や、兄弟間でのゴルフの組み立て方の違いを挙げた。しかし、長年の付き合いからくる「相性」が、不安を打ち消す最大の武器となるともいう。
兄は兄弟キャディの利点をこう語る。
「似た考え方をしていることがあるので、『自分だったらこういうミスをしてしまうかもしれない』というところを私がちゃんと言えば、修も同じ考えだった場合に修正してくれると思います。そこはすり合わせながら改善できる」
長年最も近くでゴルフを見てきた兄だからこそ、「ミスを先読みし、軌道を修正させる」という、他のキャディにはできない緻密なサポートが可能になる。
狭き門「日本オープン」で見据える大きな夢
修にとって初めての「日本オープン」の舞台、日光カンツリー倶楽部は「コース自体は広くてもフェアウェイが狭く、ラフが長い。かなり難易度が高いです」というタフなセッティングだ。
しかし、修は先々週のACNツアーでの初優勝で勢いに乗っている。「自分ができるところまでしっかり上に上がっていきたい」と語り、目標スコアを「4日間アンダーパーを並べられたら『できた』と言える」と現実的に設定する。
一方で、大会の優勝者にはゴルファーの憧れ「マスターズ」への切符が与えられる。「優勝を狙うのも大事ですが、自分が今できることをしっかり一つずつこなしていくのが、一番大事」としつつも、「やはり現時点ではマスターズ(への出場権獲得の可能性)もあるので、優勝は狙っていきたい」と、大きな目標を掲げることを忘れない。
兄・将は、このキャディ経験を「レギュラーツアーの現状をよく理解するための貴重な機会」と捉えており、「選手の近くに立って、実際のライや、グリーンの傾斜などを直接見られる」経験を、将来自身がプロプレーヤーとしてツアーに立つ際の糧とするつもりだ。
将に「初キャディだけど、いま一番ドキドキしているのは何?」と聞くも悩んでいたので、「勝手がわからないとか、なんでもいいよ」と助け船を出すと「ん~、修がミスしないか、ですかね。やっぱり」と兄の表情に。
ライバル関係を超えた「双子の絆」が、難攻不落の「日本オープン」で、兄弟二人の夢であるマスターズへの扉を開くことができるのか。福住兄弟の挑戦に注目が集まる。