
【試打クラブスペック】7I ●ロフト角/33.0度 ●ライ角/63.0度 ●価格(税込)/17万8200円(#5〜9、PW)※すべてメーカー公表値
ツアーモデルの基本設計が変わらない理由がある
GD 今回はタイトリスト「T100アイアン」(以下、今モデル)を前モデルと比較しながら分析していただきます。タイトリストのTシリーズの中でも、最上位モデルの位置付けとなるのが「T100」ですね。
松尾 そうですね。ラインナップは「T100」を含めた5機種があります。その中でもツアープロが好む小さなヘッドで、操作性を重視しているのがこのモデルになります。
左から前モデル、今モデル。「Tシリーズ」の中でもツアーモデルのポジションで操作性が優れている
GD タイトリストだけでなく、他のメーカーにもツアーモデルが展開されています。この連載でも何度も取り上げていますが、分析した結果「基本設計が完成されている」という結論になります。
松尾 ツアープロの意見を反映しているので、おおまかな性能面は落ち着いてきます。シビアな状況でインテンショナルな打ち分けを駆使して、コース攻略をすることから操作性を持たせるのは基本設計です。そしてミートする技術に長けているので、当然ミスヒットの強さといったお助け機能は控え目になります。
GD たしかにアベレージ向けのようにヘッドの慣性モーメントが、特別大きいわけではないですね。使用しているプロが「ミスにやさしい」と言っても、分析してみるとヘッドの慣性モーメント自体は、標準値よりも小さい数値だったことはこれまでにもありましたね。
松尾 はい。今モデルもツアーモデルらしく大元の基本設計は変わっていません。ヘッドの操作性を判断できる、ネック軸回りの慣性モーメント(標準値:5500〜5999g・㎠)は今モデルが5149g・㎠、前モデルが5148g・㎠と共に小さい値で、変わらず操作性抜群のヘッドです。
そしてヘッドの慣性モーメント(標準値:2600〜2799g・㎠)は前モデルが2636g・㎠、今モデルが2444g・㎠と、さらに小さくなりました。ですからお助け機能に期待するモデルではありません。
一方でフェースの長さが0.5mm長くなっています。それに伴い重心距離も1mm長くなりました。フェース面上の重心がわずかに中央側にシフトしたのが特徴です。
左の前モデルよりも、フェースがわずかに長くなり、重心距離も1㎜長くなっている
GD 他のメーカーにも見られる点ではありますが、フェース面上の重心位置を中心に持っていく施策をしています。これはどんなメリットがあるのでしょうか?
松尾 今よりも加工技術が無かった昔のアイアンは、現在よりもヒール寄り重心になっていました。数値で言えば“ヒール寄りに4mm”といったところです。今回の「T100」はヒール寄り1.4mmですから、当時はかなりヒールに寄った設計になっていました。
この影響で昔のプロはアドレスで、かなりヒール寄りにボールをセットしていました。実際にやってみると分かりますが、シャンクしそうなイメージが湧くかと思います。安定してミートができないアマチュアが使うには難しいものでした。
こういった経緯から、より広い打面に当てられるように、各メーカーさんはフェース面上の重心を中央に寄せる努力を行い、当時よりも簡単に扱えるアイアン作りをしているわけです。
右の今モデルはフェース面上の重心がわずかに中央にシフトした
GD なるほど。ツアーモデルとはいいながらも、昔と比べれば幅広い層が使えるように、アイアンも進化してきているわけですね。
松尾 はい。トム・ワトソンにアイアンを見せてもらったことがあるんですが、一円玉より小さい打痕がフェース面のヒール寄りだけに付いていました。それくらい精密なミート力がないと難しかったんです。ドローが持ち球のプロだともう少し中央寄りに打痕がついていましたね。
GD タイトリスト「T100アイアン」はどんなゴルファーにおすすめですか?
松尾 他のデータで言えばロフト角が1度ストロングになりました。ツアープロの要望で従来よりも少しだけキャリーの飛距離を出しやすくしたのだと思います。小ぶりなヘッドを生かして、弾道を操作してピンを狙っていきたいゴルファーは試してみると良いでしょう。