「週刊ゴルフダイジェスト」や「みんなのゴルフダイジェスト」で、障害者ゴルフの取材記事を執筆したベテラン編集者が、日本だけでなく世界にアンテナを巡らせて、障害者ゴルフのさまざまな情報を紹介する連載。今回は女子プロが立ち上げた当たらなNPO法人に関するお話です。

NPO法人「日本障がい者ゴルファーズ推進機構」という団体をご存じでしょうか? その団体を立ち上げ、理事長を務めるのは、藤本裕子プロ。日本女子プロゴルフ協会のティーチングプロA級の資格を持ちます。前身は「桜会ゴルフ同好会」。「週刊ゴルフダイジェスト」の17年前の記事でも発見しました。

同機構では、毎月第3金曜日の午前中に、脳卒中で片麻痺となった方を中心にさまざまな障害を持つ方とご家族たちが集まり、「ゴルフふれあい会」と名づけられた「練習会」を行っています。

「障害者ゴルファーの方たちが自発的に行っていた会から『教えてほしい』と依頼があり、月1回ならばできるかなと思い、始めたら、30年経っていたんです(笑)」と藤本プロは話しますが、毎月1度、きちんと活動していくことの大変さと意義は、何かの活動に携わる方々ならば、心底感じることではないでしょうか。脳卒中患者が増え続けている事実は今も変わりませんし、リハビリ期間の過ごし方の選択肢も増えています。そして、ゴルフがリハビリにいいという事実は、さまざまな研究で近年データも積み重なってきているのです。

画像: 練習会は世田谷区立大蔵第二運動場で行われる。「東京オリンピックや世界陸上のとき、海外選手が練習などした場所。ここにゴルフ練習場もあるんです。公共の場所だから、30年前にはすでに車椅子で入れるバリアフリーのトイレがありました。環境がいいんです」

練習会は世田谷区立大蔵第二運動場で行われる。「東京オリンピックや世界陸上のとき、海外選手が練習などした場所。ここにゴルフ練習場もあるんです。公共の場所だから、30年前にはすでに車椅子で入れるバリアフリーのトイレがありました。環境がいいんです」

もとの会を立ち上げたのは海藤貢さん。障害を得て通った世田谷のリハビリテーションセンターの長谷川幹先生に「ゴルフが好きです。ゴルフをしたい」と相談したことから、先生に会の発足をすすめられ、奥さまと二人三脚で運営されてきたそう。

「すごく大変だったともおっしゃっていました。でも頑張って続けてこられたんです。ご夫妻が90歳になられて、継続が難しいとなりそうだったのですが、メンバーの方たちの『まだやりたい』という思いを汲んで、私が引き継ぐことになりました。海藤さんは、『オレはゴルフ場で死んだら本望だ』というくらいゴルフがお好きで、会のためにご自身のクラブをレンタルクラブとして使うようにと置いていかれました。私も63歳になって、あと何年できるかどうか。後継者も作りたいですし、きちんとした団体にして、いろいろとお声がけしていきたいと考えました。最近ようやくNPOとして認可されたんです。私たちの集まりは、競技を目指すのではなくて、もっとやんわりした感じです。ゴルフをリハビリとして使ってもらい、そしてご家族と一緒に楽しんでもらっています」

画像: 10月の練習会ではコースでのラウンドも行われた。秋晴れの下、プレーを堪能するメンバーたち。「普段されるリハビリ以上のリハビリとなり、楽しみながらも『疲れたー!』と。でも皆さん喜ばれていました」

10月の練習会ではコースでのラウンドも行われた。秋晴れの下、プレーを堪能するメンバーたち。「普段されるリハビリ以上のリハビリとなり、楽しみながらも『疲れたー!』と。でも皆さん喜ばれていました」

またここから、藤本プロの新しいチャレンジがスタートします。藤本プロは日本体育大学出身、幼少時から体操選手になるべく鍛錬を続けてきた根っからのアスリートです。社会人となり事業を始め、仕事で必要性を感じたため、33歳でゴルフを始めました。

「なかなか上手くいかないのが悔しくて、のめり込んでいっちゃったんです」

そして45歳の年にティーチングプロのテストに1回で合格。その根性と培ってきた“動きのスペシャリスト”としての知識で障害者ゴルファーにも創意工夫を持って教えています。

「今年から(日本の)PGAの男子プロ、真板潔さんも手伝ってくれるとおっしゃってくれて。あとは連盟の男子プロが3人いるんです。皆が『このレベルにはついていけない』という感覚にならないようにしたいですね」

競技に出られなくても、ゴルフに触れあう“場”を提供し続けること――障害者ゴルフの世界のなかにも“多様化”は必要です。年に2回、練習会の午後にコースでラウンドも行います。

「川崎国際(生田緑地ゴルフ場)さんにご協力いただいています。ホールを選んで、ゆっくり歩いて打ったり、カートでも乗り入れたり。これもリハビリの1つとして、とてもいいと思います」

もっと多くの方に参加してほしいと藤本プロ。

「競技に参加したいわけではないですけど、障害者ゴルフをこういった団体がやっていることを皆さんに知っていただいて多くの方に集まっていただき、盛り上がっていけばいいなあと考えています。障害者が1人でゴルフ場に行くことはやはり勇気がいること。アクセスの問題で足が遠のく方もいる。でも、やっぱりゴルフが好きな方が集まれば楽しいですし、一緒に1つ1つの不安を解決していければと思っています。たとえば、コースで転んだときに立ち上がるのが難しくなったりする方もいますけど、理学療法士さんにその場で立ち上がれるような講習をしてもらったりもしています」

もちろん、教える側も、協力してくれる練習場やコースも、支援してくれる企業・団体なども増やしていきたいと考えています。ゴルフに興味がある方やゴルフ再開に一歩踏み出せない方、仲間を探している方などなど、障害者ゴルフの“入口”として存在する本会の扉を叩いてみてはいかがでしょうか?

画像: 12月の練習会は19日(金)に行われる。参加をご希望する方は、こちらのポスターの連絡先へどうぞ!

12月の練習会は19日(金)に行われる。参加をご希望する方は、こちらのポスターの連絡先へどうぞ!

写真提供/日本障がい者ゴルファーズ推進機構

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