
写真は16年のホンダクラシック
ツェンが勝ったのは母国・台湾で開催された欧州女子ツアーのウィストロン・レディスオープン。雨と風、濃霧に見舞われ36ホールに短縮されたが63-67の14アンダーで14年1月の台湾LPGAツアー、タイフォン・レディスオープン以来約12年ぶりにトロフィを掲げた。
「この瞬間をずっと待っていました」。家族や友人にウォーターシャワーで祝われたツェンは「故郷で勝てたのはとても感慨深いです」と歓喜の涙を流した。
15歳で単身渡米。全米アマパブリックリンクスでミッシェル・ウィを破って優勝。それがきっかけで注目され、08年のプロデビューイヤーに全米女子プロでメジャー初制覇。11年から13年にかけ109週連続世界ランク1位に君臨した。これは、史上2番目の最長記録となっている。22歳でメジャー5勝を挙げたのは男女を通して彼女だけだ。
しかし、20代半ばから突如勝てなくなった。最大の原因はパッティングのイップス。その他にもここ10年は股関節を痛めて手術を受けるなどさまざまな困難に直面した。
【動画】「驚異のスイッチ(Incredible switch!)」と紹介されたヤニ・ツェンの左打ちパット【ELT公式YouTube】
Incredible switch! Yani Tseng putts left-handed to win first title in 11 years
www.youtube.com転機が訪れたのは今年の1月。ブレイディ・リグスをコーチに迎え、彼からパットの左打ちを勧められたのだ。最初は戸惑ったものの「失うものはない」と左打ちにトライ。すると効果はてきめんで、弱点だったショートパットが「怖くなくなり、左打ちに切り替えた最初の試合では1.5メートル以内のパットを一度も外しませんでした」。
苦手を克服したことで「また良いゴルフができるという希望が湧いていた」と言うツェンは母国のギャラリーの前で見事復活。「夢は決して諦めてはいけないということを改めて実感しました」。まだ36歳。宮里やロレーナ・オチョアら往年のライバルたちも拍手を送っているに違いない。
※週刊ゴルフダイジェスト2025年11月18日号「バック9」より

