「長谷部祐とギア問答!」は、国内外大手3メーカーで、誰もが知る有名クラブの企画開発を20年以上携わってきたスペシャリストの長谷部祐氏に、クラブに関する疑問を投げかけ、今何が起こっているのか? その真相を根掘り葉掘り聞き出すものです。クラブ開発の裏側では、クラブ開発の裏側では、こんなことが考えられているようです……。

FWはコントロールショットを主眼にシャフトを選ぶ

GD フェアウェイウッドは通常、ドライバーよりも同重量か、10グラム重めにして、さらにチップカットしてちょっと先を固めることがありますけど、その辺はどうなんですか?

長谷部 昔からプロのシャフトのセッティングは、クラブの総重量と同じく、ドライバーより若干フェアウェイウッドは重くして、ヘッドだけじゃなくシャフトも重くしたほうがいいですよ、というところから発していると思うんですよ。ドライバー用の60グラムのシャフトをチップカット、バットカットしたら50グラム台前半まで落ちてしまうとすると、軽すぎるんじゃないかという懸念のもとで皆さんそのように言っているのだと思います。だからシャフトの重量が逆転しないレベルで、同じ重量か、もしくはフレックス、振動数を硬くするのが標準的なセッティングだと言われていいます。
 
これは間違いじゃないと思うんですけど、でもそこにはある一定の条件があって、メーカーの多くはフェアウェイ用でも主にフルショットのテストをするんですよ。ドライバーでもフェアウェイウッドでもフルショットのテスト。でもコースに出るとドライバーはフルショットできるけど、フェアウェイウッドはどれくらいフルショットできますか? シチュエーションも違うし、スタンスを取るところも違う。ボールのライも全然違うなかで綺麗にフルショットができない時に、じゃあ実践的なシャフトはどっちがいいんだというところまで本当は考えたほうがいいでしょうね。

GD 振れないのならフレックスを下げてもいいんじゃないかっていうこと?

長谷部 フルショットの場合はプロがセッティングしているように綺麗な重量の階段とフレックスでいいのかもしれませんが、アマチュアの場合、ドライバーは100%のチカラでフルに振れるけど、フェアウェイウッドはトップスウィングも小さくなるぐらいの60~70%程度でショットを調整しなければいけない時もある。そういった時にしなりをより感じやすい剛性の違いだったり、フレックスの違いがあってもいいんじゃないかなと思います。

GD 今日『ウルトラブラック(5S)』を打って、『MB(5R)』を打って、「Rもありだな」って言われていたところに繋がってくるんですね。

長谷部 自分は手元調子が好きなので手元のしっかり感のない、しなるシャフトが好きという流れからいうと、先調子のシャフトの多くは手元がしっかりしてるので、同じフレックスだったら硬すぎてダメだなってなるんです。
 
今回はたまたまRでしたが、打ってみると多少しなってくれるし、多少手元が硬いとはいえスリークォーターショットもすごく打ちやすかった。ボールの手前でのさばきが非常にしやすい。だからウェッジショットとまではいかないですけど、長いものでもキチンと球に当てたい時に当てやすいシャフトだなと。『アッタスMB FW』の人気の理由がそこにあるような気がしましたね。

GD そうなると、『ウルトラブラック』はどちらかといえばドライバーで使用したほうがいいシャフトということですか?

長谷部 『ウルトラブラック』はまさに大型ヘッドで飛ばしたいシャフトになるのかなと思いますね。振り遅れもないですし、しなり戻りが早いので手元調子なんだけどつかまる。だからメーカーが言っている「ウルトラやさしい」になるのでしょう。このシャフトはドライバーとのマッチングがすごく良かったです。
 
一方でちょっと考えた時にフェアウェイウッドにそのまま使ってしまうと、ミスのパターンが全部左だったんですよね。左に引っ掛ける、もしくは左に一直線に行ってしまうのはしなり戻りが早くて、タイミングが取りづらかったというのが結果的にあるので、フェアウェイウッドで使う場合はワンフレックスやわらかくすることを考えたほうがいいのかなと思いました。

GD プロのクラブを見るとシャフトを統一している人と、番手ごとにシャフトを変えている、重量も含めて銘柄も変えている人がいますけど、番手で求められている性能みたいなのがあるんですか?

長谷部 先ほど言ったように、プロは当然フェアウェイウッドでもフルショットもコントロールできるのに対して、アマチュアはフルショットはミスの確率が高くなるか振り切れない。15ヤードとか20ヤード、距離を落としてコントロールしてしまう。本来のフェアウェイウッドが持っている性能を使い切れていないことが多いです。
 
5番ウッドはフルショットに近いスウィングで飛ばしたいとなれば、5番ウッドに合うシャフトを選ぶべきなのかなと思います。スペックの階段とかをあまり気にせず、ドライバーに近いパフォーマンスを求めるなら、5番ウッドはドライバーと同じシャフトでもいいと思いますし、コントロール中心に打ちたい7番ウッドのシャフトは、今までの常識とは違う選び方をした方がアマチュアには結果
的に打ちやすい、当てやすい、コントロールしやすいという結果になると思いますね。

GD そうなると『ウルトラブラック』は7番ウッドにはちょっと適さないかもしれないけど、使用目的が飛ばすための5番ウッド、3番ウッド、もしくは4番ウッドと考えたら合うかもしれないということですか?

長谷部 そうですね。『ローグST LS』の4番ウッドを純正シャフトのまま使っているんですけど、これがなかなか手ごわくて、まだ使いこなせていないんですよ。つかまりにくいヘッドなので、そういった意味では『ウルトラブラック』を入れたらしっかりつかまってくれて、強い球で飛ばせるのかなっていうのは発想できますね。その代わりコントロールショットは諦めますけど。

GD レイアップ用やティーショット用だったり?

長谷部 本当に飛ばしたい広いロングホールの2打目には有効なのかなと。あとライが良い状況なら。

GD そうすると7番ウッドのシャフトは操作性が良いというか、操りやすいシャフトを探さなきゃいけないってことですね。

長谷部 なかなかこれが純正でもありそうでなくて。当てやすい、しかもトルクもしっかり締まってくれていて叩きにいってもそこそこヘッドが変な挙動をしないシャフトは、カスタムじゃないと対応できない。
 
そういった意味では『MB FW』はRだけどしっかりしている。フルショットではなくコントロールショットで調整しているわけだから、出力に合わせてRシャフトという選択肢は十分あるなと。ここを間違えちゃいけないんだなと。短くなればなるほど固くするっていう話だと、逆に力んでいい球が出ないところを、Rだからこそ手打ちでもいいからタイミングが合わせやすいし、当てやすいという結果になるのかな。

GD 逆に『MB FW』を飛ばすためのシャフトとして選んではいけない?

長谷部 それはスウィングの特性にガッチリ合わないとフルショットの場合、調整が効かないので、ある程度調整した出力で打ちたい。『MB』だったら自分はダフリとかそういうミスが出たので、そういった使い方をしてはいけないんだなということがわかりましたね。

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