
「現在(11月5日)、今季残り2試合というところで、SGオフ・ザ・ティーはラームに次いで2位。3位がマキロイとなっています」(佐藤プロ)
4月の中国・海南島、8月のデンマーク、そして10月のスペインと欧州ツアーで今季3勝、ポイントランクも2位(11月5日現在)と大ブレークしたのがマルコ・ペンジです。イギリス国籍の27歳。英語圏っぽくない名前なのは父親がイタリア人のため。母親のマリーさんが夫の40歳の誕生日にクラブをプレゼントしたことをきっかけに、5歳でゴルフを始めました。
順調なジュニア時代を過ごし、イギリスを代表するトップアマに。15年にはトミー・フリートウッド、コリン・モンゴメリーらも歴代優勝者に名を刻むスコットランド・アマチュアストロークプレー選手権を制し、17年、19歳でプロ転向します。
プロのスタートは、今はない3部のユーロプロツアー。19歳で初優勝を果たすと20年にチャレンジツアーに昇格。しかしコロナ禍により20-21シーズンとなり試合数は激減、さらに21年は右ひざを手術し6試合しか出場できませんでした。翌22年に復帰するもランク39位でレギュラーツアーに昇格できず。ちなみにチャレンジからの昇格条件は、ランク20位以内です。翌年はチャレンジで終盤の9月に初優勝を果たすも、ランク24位で10月の最終戦を迎えます。そこで優勝し、大逆転でランク1位となってレギュラーツアーの切符を勝ち取りました。ルーキーイヤーとなった24年は、29試合に出場するも予選落ちが19試合と苦しいシーズンに。
実はその原因が23年の暮れに発覚した賭博行為。欧州ツアーでは選手、キャディ、関係者がゴルフの試合を賭け行為の対象とすることを禁じています。ただブックメーカーで知られるイギリスの場合、なんでも賭けの対象にしてしまうお国柄。ペンジは自分の出場していない試合……具体的にはメジャーやライダーカップなどはいいだろうと他の国民のように気軽に賭けていたそうです。
調査に8カ月かかり、結論が出たのは24年暮れのこと。「自分はどうなってしまうのか」との思いで戦った29試合でした。出された処分は3カ月の出場停止。調査に協力的で反省もしており、また掛け金も24ポンド(約5000円)、得た利益も約200ポンド(約4万円)と少額だったことから、1カ月の執行猶予がつきました。
しかし、この2カ月の出場停止が彼のゴルフ人生の転機となります。自身が「自分を知る機会となった」と言うように、医療機関でADHD(多動性障害)の診断を受け、それに見合ったプログラムを取り入れました。ちなみにADHDには優れた才能の持ち主が多く、ゴルフ界ではバッバ・ワトソン、スポーツ界ではマイケル・ジョーダンなどが挙げられます。それはさておきペンジはコーチを代え、新しい練習方法を取り入れるなどして万全な準備で復帰します。
そして年間3勝したばかりか、全米プロでメジャー初の予選通過、スコットランドオープンで優勝争いを演じるなど、24試合に出場して19試合で予選通過、ベスト10フィニッシュは3勝を含め7試合と大ブレーク。世界ランキングも現在29位に。26年はPGAツアーでその姿が見られそうです。
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※週刊ゴルフダイジェスト2025年11月25日号「さとうの目」より
