●取材通訳&解説・堀口宣篤コーチ
世界最先端のスウィングとギアに精通。海外選手の取材&通訳を担う。
弾道のイメージと求める数値が明確

「『どのショットのデータ?』と聞き返してくれるほど、彼の中にはストレートだけではなく、ドローやフェードの理想値までありました」(堀口)
ドライバーの〝飛ばせる弾道〞を研究するために、日本で開催された米ツアー「ベイカレントクラシック」の試合会場に足を運んだ。現場でトッププロたちに聞いたことは、ドライバーの弾道イメージと、弾道データのなかで重視している数値。海外選手への取材と通訳を買って出てくれたプロコーチの堀口氏はこう話す。
「選手たちに〝飛びの3要素〞の理想値を聞いたところ、みんな即答でビックリしました。なかでも、この大会で優勝したザンダーは『どのショットのデータ?』と聞き返してくるほど。ストレートだけじゃなくて、ドローやフェードの理想値もあるんです。HSが55m/s近くの〝モンスター〞たちが話してくれたデータ、とても興味深いですね」
【“飛びの3要素”】を改めておさらい!
①ボール初速:インパクト直後にボールが飛び出すスピードで、初速が速いほど球を遠くに飛ばせる。
②打ち出し角:インパクト直後にボールが飛び出す高さのこと。打ち出し角が適正だと、効率的に飛距離を伸ばせる。
➂スピン量:ボールを打ち出したときのバックスピン量。この数値が少なすぎても多すぎても、飛距離をロスする。
ザンダー・シャウフェレ▶25年ベイカレント C レクサス優勝

ストレート弾道だけでなく、ドロー、フェードの理想値も持っているというザンダー・シャウフェレ
ザンダー・シャウフェレのドライバーの理想値
| ボール初速 | 85m/s |
|---|---|
| 打ち出し角 | 11度 |
| スピン量 | 2500rpm |
【堀口コーチがクラブとスウィングをチェック】
腕とシャフトをしなやかに使い、高効率のインパクト
「滑らかなスウィングで強振しなくても飛ばせるのは、今年取り組んだフィジカルの強化と、エネルギー伝達や弾道効率の高さゆえ。腕をしなやかに使いつつ、やや動きがあるシャフトを生かしてヘッドを加速させています」(堀口・)

ザンダー・シャウフェレの使用ドライバー。キャロウェイ「Ai SMOKE♦♦♦(10.5度)」×三菱「Diamana PD 70TX」
アダム・スコット ▶13年マスターズ優勝。USツアー14勝のベテラン。45歳。平均飛距離304.9Y(83位)

飛びの3要素は頭に入っているよ
アダム・スコットのドライバーの理想値
| ボール初速 | 81m/s |
|---|---|
| 打ち出し角 | 10~11度 |
| スピン量 | 2500~2700rpm |
【堀口コーチがクラブとスウィングをチェック】
みんなのお手本になる美しいスウィングで、ストレートに飛ばす
「ベーシックで淀みのないスウィングです。球が250Y先まで行っても、フィニッシュで止まっていられるバランスの良さ。ストレートな球を打つには、安定性や直進性が高い『GT2』が合うのでしょう」

アダム・スコットの使用ドライバー。タイトリスト「GT2(10度)」×三菱「Diamana WB 63TX」
ニコ・エチャバリア▶昨年の『ZOZO』優勝が米国男子ツアー2勝目。31歳。平均飛距離296.9Y(154位)

しっかりフェードで攻めていきたい
ニコ・エチャバリアのドライバーの理想値
| ボール初速 | 78m/s |
|---|---|
| 打ち出し角 | 10度 |
| スピン量 | 2300~2400rpm |
【堀口コーチがクラブとスウィングをチェック】
クラブの軌道といい、インパクトの形といい、明らかなフェーダー
「クラブパス(アウトサイドイン1度)を重視していて、その通りの軽いフェードをイメージしています。ローテーションが少なめのヘッドで、ハンドファーストに当てているところもフェードヒッターらしいです」

ニコ・エチャバリアのドライバー。ダンロップ「スリクソン ZXi(9度)」×三菱「Diamana BB73TX」
コリン・モリカワ▶メジャー2勝。23年の『ZOZO』が米国男子ツアー6勝目。28歳。平均飛距離298.3Y(143位)

スピン・初速・打ち出しは、飛距離・キャリーに影響
コリン・モリカワのドライバーの理想値
| ボール初速 | 79m/s |
|---|---|
| 打ち出し角 | 11度 |
| スピン量 | 2400rpm |
【堀口コーチがクラブとスウィングをチェック】
スピン量を抑えたパワーフェードで、高いFWキープ率
「オープンスタンスのカット軌道で、左に振り抜いてフェードを打っています。でも(左手首の)掌屈が強く、ロフトが立って当たるし、ロースピン系のヘッドと動きが少ないシャフトでスピンが増えません」

コリン・モリカワのドライバー。テーラーメイド「Qi10 LS(9度)」×三菱「Diamana D-LIMITED60TX」
サヒス・ティーガラ▶2020年にプロ転向でPGAツアー1勝。27歳。平均飛距離303.6Y(91位)

球を左に打ち出すことを考えているよ
サヒス・ティーガラのドライバーの理想値
| ボール初速 | 79m/s |
|---|---|
| 打ち出し角 | 11度 |
| スピン量 | 2600rpm |
【堀口コーチがクラブとスウィングをチェック】
上体を右に倒しても、柔軟性と長い腕でヘッドは前に走る
「インパクトにかけて強烈なサイドベンド(側屈)が入り、大きなフェードを打っています。アイアンで硬いグリーンに止めるため、カットに打ってスピンをかけているので、そこから来たスウィングでしょう」

サヒス・ティーガラのドライバー。ピンゴルフ「G440 LST(10.5度)」×USTマミヤ「LIN-Q 6TX PROTO V1」
カート・キタヤマ▶アジア、欧州でも活躍。PGAツアー2勝。32歳。平均飛距離318.0Y(6位)

打ち出し角とスピン量がとくに大事
カート・キタヤマのドライバーの理想値
| ボール初速 | 80m/s |
|---|---|
| 打ち出し角 | 10~11度 |
| スピン量 | 2500rpm |
【堀口コーチがクラブとスウィングをチェック】
ハンドファーストのゾーンインパクトで、力強いフェードに
「構えたときからハンドファーストが強くて、ロフトを立てて当てるので11度を選んだのでしょう。フェースのローテーションを抑えて長いゾーンでとらえていく、フェードヒッターの飛ばし屋です」

カート・キタヤマのドライバー。タイトリスト「GT3(11度)」×グラファイトデザイン「Tour AD VF 7TX」
ビリー・ホーシェル▶欧州ツアー3勝、PGAツアー8勝。38歳。平均飛距離298.7Y(-位)

入射角は1~2度アッパーなんだ
ビリー・ホーシェルのドライバーの理想値
| ボール初速 | 79m/s |
|---|---|
| 打ち出し角 | 12度 |
| スピン量 | 2400rpm |
【堀口コーチがクラブとスウィングをチェック】
適量スピンに収まるカットフェードで、弾道をコントロール
「ややウィークなグリップで、クラブをアウトに上げてカットに打っていくし、フェースの向きを長く保ちながらしっかり押し込んでいます。少しアッパーに入れる分、ロフトを9度にしているのでは」

ビリー・ホーシェルのドライバー。タイトリスト「GT3(9度)」×フジクラ「VENTUS TR BLACK 7X」
取材・文/新井田聡
写真/有原裕晶、岡沢裕行、Getty Images
協力/PGST、ユニオンゴルフ、ロイヤルCC、PRGR 銀座EX、ビームスゴルフスタジオ
※月刊ゴルフダイジェスト1月号「僕らが飛ばせるドライバー」より一部抜粋
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上記の世界を舞台に戦うトッププレーヤーたちの“理想の弾道データ”を参考に、誌面ではアマチュアが目標とするべき最適弾道を紹介している。さらに、“飛び弾道”を実現する理想的な数値が出やすいモデルのロフト別の試打も実施。ドライバー選びの参考にぜひ一読いただきたい。続きはMyゴルフダイジェスト、月刊ゴルフダイジェスト1月号で掲載中!




