飛ぶだけじゃない。しっかりと枠に収まる
2025年、JPDA(日本プロドラコン協会)の試合で、北海道、静岡、兵庫大会など、各地で優勝を飾った柳井紗奈選手。女子ドラコン界の中心選手の一人だが、今年の好成績を引き出したのがヤマハのドライバーだったという。

柳井紗奈(やない さな)。身長156センチと小柄ながら、最長382ヤードの記録を持つ女子ドラコンプロ。ヤマハのドライバーに替えて調子を取り戻した
「ドラコン大会は無差別級で出場していましたが、今年は勝てるチャンスを増やそうと他の階級にも出られるように減量に取り組みました。そうしたら飛距離が落ちてしまって……。そんな中、今年の初めに “ヤマハが飛ぶよ”という話を聞いて、すぐに試させてもらったんです。その時点では前作の『RMX(リミックス)VD/M』でしたが、これがいい感じで飛んで。調子を取り戻す良いきっかけになりました」
ちなみに柳井選手は、ボール初速が67~69m/s、スピン量が1800~2200回転/分、キャリー270ヤードを飛距離データの目安にしているというが、ドライバーを替えたことで、これをコンスタントに達成。
シャフトに関しては、しばらくは「50グラム台・SR」というスペックを使っていたが、「もっといいものがあるはず」と、この夏に10本以上のさまざまなシャフトを試した結果、バチっとはまったのが30グラム台のシャフト『VANQUISH(ヴァンキッシュ)』だった。
「ドラコンでは男子選手でも40グラム台を使う時代。やっぱり軽い分、速く振れるので有利です。軽いとタイミングが難しくない? と聞かれますが、今回のシャフトは30グラム台でもSフレックスなので軟らかいことはなくて、私のスウィングスピードにもしっかりついてきてくれます。初速も上がって、振りやすくもなった。スピン量も申し分なく、すぐにスイッチできました」
そして秋口からさらに優勝を重ねていくが、そこで今度は新しいヘッドを投入。カーボンフェースになった『RMX DD-1』(ロフト9度)だ。

RMX DD-1(9度)とVANQUISH 3Sの組み合わせ。長さは45.5インチに設定

RMXにも採用した最新のカーボンフェース。最適なバルジ設計でトウ・ヒールに打点がずれたボールを真ん中に集める効果があるという
「カーボンフェースは間違いなく飛びますね。(カーボンは)打感がぼやけるかなと思ったんですが、トウやヒールに当たった時には、チタンフェース以上にしっかりフィードバックがあるので問題なし。そして何より、“球がまとまる”ことが大きい。ドラコンは飛ばすと同時に曲がり幅を抑えて枠に入れなくてはいけません。その点で『RMX DD-1』は、右に出た球はドローで、左に出ればフェードして戻ってくるんです。右に出たら行きっぱなし、みたいなことがない。この感覚とイメージの合致は何より安心感につながります」
2026年は「無差別級と-65㎏級の両方でチャンピオンを目指します!」という柳井選手。バージョンアップしたドライバーで、さらなる活躍が期待される。
ヘッドスピードが3m/sは上げられそうだ
さて、柳井選手を支えるカーボンフェースの『RMX DD-1』ドライバーと超軽量シャフト『VANQUISH』の組み合わせはどんな性能なのか。実際に同じスペックで組み上げ、飛距離、正確性の両面から調査してみた。
飛距離面でその優位性を語るのは、フィッターの平野義裕さん。

平野義裕(ひらの よしひろ)。東京の練習場・スイング碑文谷内の「クールクラブス」のカリスマフィッター。試打経験も豊富で、ヘッドとシャフトの性能を感じ取る感性にも優れる
「私は普段、海外ブランドのカーボンフェースドライバーを使っていますが、それよりも打感がチタンっぽい。カーボンとは思えない弾く感じで、打っていて気持ちいいですね。ミート率も1.50ですから、ボール初速の面でもかなり優れたドライバーです。スピンも少なめ。ヤマハはあまり打ったことがなかったのですが、正直驚きました。このヘッド、飛びますね」
構えやすさも、気持ちよく振り抜ける一因だという。

「フェース面の白いラインのデザインが絶妙。フェースの視認性も高く構えやすい」(平野)
「本当に形状がきれいでしっくりきます。フェース面はブラックですが、ほんの少し色が薄めなので9度のヘッドでもロフトがしっかり認識できて安心。フェース面に施された線も絶妙で、構えやすさにつながっています」
30グラム台のシャフトはどうだろう。頼りなさはないのだろうか。

トラックマンとGARMINの「アプローチR50」を併用してテスト。10球以上試打し、ベストボールを採用。両機器の平均値を取った
「確かに軽いですけど、意外としっかりしています。硬度的には50グラム台のシャフトでも同程度のものがあるくらいです。振りにいっても吹き上がらないので、ひたすら“速く振れる”ドライバー。普段のヘッドスピードは42~43m/sですが、これなら45m/sぐらいまでいけそうですね。」
【平野さんの計測データ】
ヘッドスピード:44.1m/s
ボールスピード:66.4m/s
打ち出し角:16.0度
スピン量:1879rpm
キャリー:252.7Y
トータル:276.4Y
30球以上打った球がほぼフェアウェイに
ボールのまとまりについては、実際にコースで調査。谷口雅之プロにテストをお願いした。

谷口雅之(やぐち まさゆき)。ステディなゴルフが持ち味のシニアプロ。Golfet平井店の店長兼チーフインストラクターを務める
「ヘッドサイズは450㏄ですか。締まって見えていいですね。小ぶりなヘッドが好みなので、弾道のイメージが湧きます」

RMX DD-1のヘッド体積は450㏄。やや小ぶりでプロ、上級者からの評価が高い形状。操作性にも長ける
打つとその直進性能に舌を巻く。
「柳井選手が言うように、フェースのどこに当たったかというフィードバックが鮮明。ですから真ん中を外すとはっきりとわかるのですが、その感触のわりに全然曲がらない。トウとヒール当たった時、それぞれ左右に打ち出される度合が小さく、しかも真ん中に集まってくる。特にヒール側が強い。ヒールに当たると球が滑ってコントロールが効かないものが多いのですが、それがなく、つかまって曲がり幅も極めて小さい。『RMX DD-1』の安定感、凄いですね。30球以上打ちましたがほとんどフェアウェイ。飛距離も出ているし、驚きました」

計測には「GARMIN アプローチR50」を使用。千葉バーディクラブの1番は左右がタイトなホールだが、ことごとくフェアウェイをとらえていく(データは飛距離上位3球の平均)

「こんなにまとまるドライバー、初めてかもしれません。距離も出ています」(谷口)
【谷口プロの計測データ】
ヘッドスピード:40.5m/s
クラブスピード:60.5m/s
打ち出し角:12.5度
スピン量:2588rpm
キャリー:228.7Y
トータル:247.2Y
シャフトはどうだろう。重いほうが安定しそうな印象もあるが。
「普段70グラム台のシャフトで頑張っているので(笑)。でも2、3球打ったらすぐに慣れましたし、タイミングが合います。軽くても軟らかいわけではないので、切り返しで待つ必要がないんでしょう。速く振れて、球も散らない。この尖った組み合わせがプラスに働く人は意外と多いと思います。打ち方のポイントをお伝えするならば、軽い分、身体の軸がブレやすいのでアドレス時の軸を固定すること、それからインパクトで手元が浮きやすくなるので、ダウンスウィングで手元を真下に下げるように振り下ろすこと。これを意識すると、このドライバーの威力をより味わえると思います」

しっかりと軸を意識してバックスウィング

ダウンスウィングでは手元を真下に下ろす感覚で
軽い分、振りが鋭くなりヘッドスピードが上がり、それでいてフェースの効果でボールが散らばりにくい『RMX DD-1』×『VANQUISH』の組み合わせ。「自分は60グラム台のS」といった固定観念は一度わきに置いて、普段手にしないヘッドやスペックを試してみると、意外な発見があるかもしれない。
PHOTO/Takanori Miki THANKS/クールクラブス、千葉バーディクラブ、スパイグラス(ドライバー組み立て)


