カーボンフェースの難点は「ディープフェース」になること
GD イメージですけど、カーボンよりチタンのほうが弾きそうな感じがするんですけど。
長谷部 金属の特性としてそうですよね。
GD だけどそこにはルールの壁があるから、単に弾けばいいという話ではない。ルールの壁の中で“一番効率よく弾かせるためにはどうしたらいいか”という考え方ってあるんですか？
長谷部 ここはちょっと難しい話なんですけど、反発性能にはCT値とCOR値という計測の仕方が違う基準があって、もともとはCOR値で反発性能を測るのが基準だったんです。これを簡易的にしたのがCT値（CT＝接触時間）という測定方法なんですが、反発性能を基準内に収めながらさらに反発を部分的に上げることに着目しているのかもしれません。
これまでもあった肉厚の変化、特に「キャロウェイ」がAi設計で打点のバラツキに対応した設計を訴求していますが、そのひとつの方法が大きい面積のカーボンフェースであり、フェースの肉厚設計であり、はたまた今噂されている複合的なフェースで、フェースの重量を軽くするとか、フェースの肉厚を薄くするとか、そういうとことにつながっているかもしれないので、その辺の進化はすごく期待しています。
GD 高反発フェースが規制になって以降、ルールの壁に限りなく近づく進化をしてきました。「テーラーメイド」に至っては、一度ルールの壁を超えてからルール内に戻す技術もあったじゃないですか。
長谷部 単純にチタンを薄くしたのでは壊れてしまう、強度の限界があるので、闇雲に反発性能を上げられないということをみんなわかっています。例えば「日本シャフト」のスチールシャフトとカーボンを組み合わせたハイブリッドシャフト、愛称『ゴースト』という名前で言われていますけど、軟らかいスチールシャフトにカーボンを何層か巻くことによって硬く弾きをよくする技術があるんです。
接着方法に新しい知見を取り入れて作っているんですけど、それと似ている発想と思えば「弱いものを強くする、軟らかいものを硬くする」性能をカーボンに期待するならば、ボディで使っている軽さ重視のカーボン系軽比重素材とは違う目的での、カーボンフェースや複合フェースを期待してもいいのかなと思います。
GD 余剰重量を出すためのカーボンであって、余剰重量によって重心位置をコントロールするためのカーボンという役割があったように感じるんですけど、フェース面に使われるとなるとちょっと違うような気がします。
長谷部 「テーラーメイド」の主たる目的は重量配分ですよね。クラウン、ソールとさらにフェースまでカーボンが使って、余剰重量が増えて何十グラムもウェイトを動かせる技術を進めているのがテーラーメイドです。その中でCT値のルール範囲内で、カーボンでも十分に耐久性やオフセンターヒットに強い設計が出来るから進化を続けている。このノウハウは「2代目グローレ」から十数年やってることなので、そこは一日の長がテーラーメイドにあるでしょう。
でもそれに続いて「ヤマハ」も出してきたからいよいよカーボンフェースがいいのか？ というとは違います。気をつけてほしいのが、今あるカーボンフェースは割とディープフェースであることです。その結果、重心設計にも影響するし、打ち手や飛ばせる打点をある程度限定してしまうことが考えられます。
GD 「テーラーメイド」がヘッドの内部にジェル（レジン）を入れて反発を調整したことがありました。ジェル入れたようにチタンとカーボンを複合化することによって反発を調整するという考え方はできるんですか？
長谷部 あるでしょうね。それが来年にもしかしたら出てくると言われるチタンプラスアルファの異素材でそこを調整してこようとするんじゃないですかね。
GD カーボンじゃないかもしれないけど……。
長谷部 カーボンの接着技術とか複合技術がだいぶ進化しているし、あるいはその他のポリマー系だったり、違うノウハウを持っているブランドとか会社があったとすれば異業種のやっているノウハウが取り入れられることもあるでしょう。
もともとチタンは軍需、航空機産業の流れからゴルフの応用された技術ですから異業種のテクノロジーや最新のアイデアをゴルフヘッドへの提案というのは、非常に興味深く見た方がいいんじゃないですかね。
GD 2025年はドライバーの飽和状態だった感じがします。
長谷部 飽和状態で「10K」に向かってとにかくヘッドをデカくする。“大慣性モーメント（高MOI）が一番いい！“という感じにみんな横並びに行っちゃったけども、それがダメだというように理解したり、ちょっと限界を考えたのか……。次はシンプルにフェーステクノロジーで勝負しようというのが2026年だと思います。
GD 2026年モデルの見どころは、フェースの争いになりそうですね。
長谷部 重心位置の考えは熟成されている。「ピン」が一番それをわかっている。だからバリエーションが上手く作れているよねってこれまでも話してきた事とともに、次はフェースで打点のバラつきのミスを防いで、初速もスピンも安定させる。
「ブリヂストン」が言っているフェースの表面粗さでインパクトのスピンを制御することもそうですし、様々なフェーステクノロジー、フェース理論がまた活性化するんじゃないかと期待しますね。
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