20年ぶりに無冠に終わった2001年。 賞金ランク11位、平均ストローク8位と54歳という年齢を考えれば立派な成績だが、ファンにとってはもの足りない結果となった。それは、ジャンボにとっても同じ。「不満、不満、大不満」という2001年を終え、2002年に復権をかけるジャンボに王座奪還のシナリオを語ってもらった。

※「週刊ゴルフダイジェスト」2002年1月8日&15日合併号に掲載した記事を再編集しました

画像: 02年の全日空オープンで復活優勝を遂げる(写真は全日空オープンの表彰式)

02年の全日空オープンで復活優勝を遂げる(写真は全日空オープンの表彰式)

「飛距離こそ、オレの勝利への最大の課題」

――01年は20年ぶりで未勝利のシーズンオフとなってしまいましたが、思うところはありますか。

尾崎: 不満、不満、何もかもが大不満。今はその悔しさをバネにして、新たなるシーズンへ向かう時期。もちろん感情論じゃなく、対応策を練り直してな。

――国内のみ25試合。例年以上に積極的な出場でしたが。

尾崎: いや、試合数が多いってことは自慢にはならない。焦ってる証拠だよ。思いどおりにいってない証拠、調子の悪い証拠(笑)。シーズン通して半分故障を抱えながらだからしょうがない部分もあるが、それは言い訳にはできない。それを承知でやり遂げなきゃいけないんだから。そういう時期に入っているのは、残念ながら事実だね。

――その対応策ですが、秘策はもう具体化しているんですか?

尾崎: 日本シリーズが終わってから、バットを振ってみたんだよ。

画像: 01年ジャンボマスターズの写真。尾崎の前に座っているのは稲尾和久

01年ジャンボマスターズの写真。尾崎の前に座っているのは稲尾和久

――えっ? あ、野球のマスターズリーグが始まりましたからね。

尾崎: 野球は、まぁお祭りみたいなもんで、実際のところ関係ないけど、少しは準備しておこうと思ってバッティングセンターに行ってみたんだが、ゴルフのスウィングを続けてたんだから何とかなるとタカをくくってたけど、全然ダメだった。950gのバットでビュッと音が出せないんだ。昔は小気味いいくらいにビュッと振れてたのに。100g落として何とかって感じだった。

――軽くても速く振れればボールを飛ばせるのでは? 相手だって150kmの速球を投げるわけじゃないし。

尾崎: そうはいかない。ボールを飛ばすには重量とスピード、その両方がマッチしないと。800g台じゃ、軟式バットで硬球を打つようなもんだ。950gのバットを振れないという現実に接すると、ゴルフスウィングの鈍りを実感するよね。だから、このオフはバットをビュンビュン振ってやろうかと思う。野球のためだけじゃないぞ(笑)。

――ということは、01年はスウィング的に不満だったということですか?

尾崎: 不満は結果に対して。でもその原因はスウィングにあるんだから。タイミングを図りながら素早く振る。野球もゴルフもスウィングはみな同じ原理だと思う。だからまずはバットで鍛え直そうと思うんだ。

――数字的には、00年と01年、飛距離に大きな変化はありませんが。

尾崎: でも順位(17位)でみたら……。もう絶対に許せないんだ。そりゃどのスポーツにも特定のジャンルで秀でたヤツはいるよ。だから3人までは許す。でも俺より飛ばすのが10人以上いるのは……。

――クラブ、ボール。道具の影響も大きいですよね。

尾崎: その分野の影響が大きすぎるな。現実に超Aクラスの飛ばし屋は、ヘッドスピードが55m/sくらいある。平均して53m/sでは振れている。オレは今、平均して51m/s。問題は、オレよりもヘッドスピードがない人間がもっと飛距離を出すということ。これはスポーツ力学の観点からもおかしい。要は道具だよな。もっとも、ゴルフは現実に道具の科学開発が認められている。いたずらにあやしい、あやしいといってもそれは遠吠えに過ぎない。取り入れられるものは積極的に取り入れていかなきゃいけないと思う。

――自身の肉体と操る道具。それらの総合力で順位挽回?

尾崎: クラブ選びも実力の内。ヘッドとシャフトのバランス。それをいかに自分のモノにするか。そしてボールだ。実質的にボールが50%以上の影響を占めるんじゃないか? 飛距離決定要因はボール、ヘッド、シャフトの順だね。

飛距離による優越感がオレのゴルフスタイル

画像: このインタビューの約3年前、1999年のジャンボ尾崎のクラブセッティング

このインタビューの約3年前、1999年のジャンボ尾崎のクラブセッティング

――飛びすぎはゴルフをつまらなくするという指摘もありますね。

尾崎: 確かに。各メーカー、競争だから仕方ないけど、スポーツとしての面白みはなくなる。他のスポーツでは、すべて公認球が決められていて公平さを守っているけど、ゴルフは歴史的にも市場の拡大と歩調を合わせて拡大してきたからな。アマチュアの飛距離もどんどん出るようになった。いまさら、プロだけ飛びを抑えた公認球というわけにはいかないだろう。

――プロだからこその夢がなくなってしまいますからね。

尾崎: そういうことだ。それもこれもやっぱりタイガーの出現の影響かな。タイガーが圧倒的な飛距離で制圧したからな。この間のワールドカップでも、太平洋御殿場の18番、あの寒さ、風のなかで左のバンカーを越えていった。キャリーで290ヤードは必要だぞ。夏場ならいざしらず、考えられんよ。 ヘッドスピード1m/sで5ヤード違うというだろ。2m/s違えば10ヤード。タイガーと並みの選手とでは10m/s違うわけだから、距離にして50ヤード、タイガーに置いていかれることになる。

――実際もそうですね。

尾崎: その50ヤードが道具によってどんどん縮まってる。どう考えても弱者救済だろう。恩恵を受けた人間は日本のプロにも沢山いるわな。そんなんアリかよって感じてしまう。

――20ヤードの伸びで世界は変わる。

尾崎: 20ヤード……、そりゃ楽しいだろう。たとえば450ヤードのホール。250ヤードしか飛ばなければ200ヤード残すことになる。セカンドはクリークか3番アイアン。それが20ヤード飛距離を伸ばせば残りは180ヤード。すると5番アイアン? アイアンも飛ぶようになるから6番アイアン。クリークが5、6番アイアンに変わったら、そりゃ楽しいし、世の中一変だよ。基本的に飛ばない人間は、女子プロもそうだけど曲がらないからな。

――ジャンボ自身のゴルフプランにも影響が出る?

尾崎: 飛距離による優越感が、オレのゴルフの基本スタイルなんだから(笑)。それだけは曲げられない。それが10人にも順位を超されることに納得できない。許せないんだ。

――飛距離アップがジャンボ復権に直結しますか?

尾崎: 当然だよ。飛距離こそオレにとって勝利への課題。そのためにしっかりやらなきゃダメなんだ。今までだって怠けちゃいないけど、数字で突きつけられて思い知らされたよ。

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