
手首の傷も癒え、ショットの精度も上がってきたジョーダン・スピース(撮影/岩本芳弘)
32歳、手首の痛みなし。「かつての自分」を取り戻す手元の位置
「バックスウィングのトップで、手をもっと深い位置(ディープ)に収める。これは僕のキャリアでショットが良かった時期の動きなんだ」
開幕前、スピースはそう語っていた。過去8年間、彼を悩ませ続けてきた手首の怪我は癒えた。「もう上手くいかない言い訳はできない」と断言できるほど、このオフは不安なく練習に打ち込めたという。
取り組んだのは、自分本来の「DNA」を取り戻す作業。トップでの手の位置を修正し、かつて世界を席巻したあのスウィングへの回帰を図った。
その成果は、数字に明確に表れている。 昨季(2025年)の平均飛距離は306.6ヤード(ランク56位)だったが、今大会2日間の平均は316.5ヤード(ランク9位)と約10ヤードもアップ。さらにパーオン率も昨季の約64%から75%(ランク19位)へと劇的に改善している。
「ウェッジプレーは昨年よりスタッツ的に良くなっている。(2日目の)8番ホールでは狙いよりも飛んでしまったが、ショットの質自体は完璧だった」(スピース)
身体の不安がなくなり、スウィングの核心を取り戻したスピースのショットは、全盛期の輝きを帯び始めている。
「僕らって変な生き物だよね」3番アイアン騒動
ショット好調のスピースが、なぜ首位と5打差にいるのか。その原因は、彼らしい「考えすぎ」と「実験」にあったようだ。
「実は(初日の)2日前に3番アイアンをバッグに入れたんだ。でも、それが間違いだった。そのクラブで打ったショットで2.5打は損をしたよ」
4カ月のオフがあったにも関わらず、開幕前日に5本の3番アイアンを引っ張り出し、急遽バッグに入れたという。「ドライビングアイアンが合うコースだと思ったんだ」と弁明するが、結果は裏目に出た。 「明日からはハイブリッドに戻すよ。僕らゴルファーって、本当に変な生き物だよね(笑)」
自虐気味に笑ったスピースだが、裏を返せば、その「2.5打」のミスさえなければ、今頃は優勝争いのど真ん中にいたことになる。
週末への視界は良好
初日はパッティングに苦しみ(SG: Putting -1.063)、スコアを伸ばしきれなかったが、2日目には修正(同 +0.729)してきた点も好材料だ。
【動画】公式が「ヴィンテージ」と称賛したスピースのロングパット【PGAツアー公式X】
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x.comショットの貢献度を示す「SG: Approach to Green」は2日間トータルで「2.009(ランク20位)」と高い数値を維持している。昨季のスタッツ(0.23/58位)と比較すれば、アイアンショットの切れ味は別人のようだ。
「この2日間は、もっとスコアが出ていてもおかしくなかった。明日からはもう少しパットを強気で打って、ビッグスコアを目指すよ」
迷走した3番アイアンを抜き、馴染みのハイブリッドを手にしたスピース。 5打差は、彼にとっては射程圏内だ。3年9カ月ぶりの勝利へ、週末のワイアラエで「ジョーダン・スピース・ショー」の幕が上がる。

