「長谷部祐とギア問答!」は、国内外大手3メーカーで、誰もが知る有名クラブの企画開発を20年超やってきたスペシャリストの長谷部祐氏に、クラブに関する疑問を投げかけ、今何が起こっているのか? その真相を根掘り葉掘り聞き出すものです。クラブ開発の裏側では、こんなことが考えられているようです……。

どこよりもフィッティングを重視してきたのがテーラーメイド

GD YouTube上でも、テーラーメイドの新製品レビューが大変な数が上がっています。ピンからも追加モデルが出てきて、取材している1月15日現在では“ピンを軸にしたテーラーメイド”という図式に見えていますが、長谷部さんはその辺りをどのように分析されていますか?

長谷部 1月14日に発表された「G440K」は、まさに“正常進化を遂げたモデル”という印象で、非常にピンらしい仕上がりだと感じています。一方で今回のテーラーメイド(Qi4D)は、客観的に申し上げると、“ピンを意識するのをやめた”というように感じます。

画像: 左から「G440K」、「Qi4D」

左から「G440K」、「Qi4D」

GD テーラーメイドはかつて「#1ドライバー・オブ・ゴルフ」を掲げていたメーカーでしたが、再び動き出した?

長谷部 それは形状にも如実に表れています。前作(Qi35)のように慣性モーメントを求めて投影形状を無理に大きくするのではなく、今回はヒール側をしっかりとシェイプさせてきました。
 
思わず「SIM2のような形」と表現してしまいましたが、テーラーメイド本来のプロや上級者が好む美しい形状に戻ってきたことは、テーラーメイドファンにとっても非常に喜ばしいことだと思います。名称も“Qi”の3代目となりましたが、これが一般の方にどう受け入れられるか注目ですね。

GD ネット上では「Qi35とは大きく違う」、「評価の高かったQi10の進化だ」という声も出ています。今回の特徴として「ロール(フェース上下の丸み)を付けてスピンを安定させた」と謳っていますが、どうなんでしょう。

画像: フェース上下の湾曲を“ロール”。左右の湾曲のことを“バルジ”と呼ぶ

フェース上下の湾曲を“ロール”。左右の湾曲のことを“バルジ”と呼ぶ

長谷部 「フェースのロール」という話には、実は興味深い歴史的な背景があるんですよ。パーシモン時代には、フェースに丸みがあるのは当たり前でした。それがステンレスのメタル時代になり、重心が浅くなったことで「丸みがあると球が戻ってこない」という理由から、フェース面を平らにした。極端に言えばそういう流れがあったんです。
 
しかし素材がチタンになり重心が深くなってきたことで、再び少し丸みを帯びるようになりました。かつてブリヂストンが「230チタン」の時に出した「8インチバルジ」も非常に評価が高かったのですが、これには2つの大きな理由があります。
 
丸みがあることで構えやすくなるという視覚的効果と、スピンを適正にコントロールして真っすぐ飛ばす補正効果ですね。そういったことを考えるとフェースのロール、バルジ(フェース左右の丸み)の設計は各社によって違いがあります。これは単に数値だけでなくフェースの形状だったり、シャローなのかディープなのかにも左右されるので同時に見なければいけないと思います。

GD 今回は5代目となるカーボンフェースで緻密に設計してきたわけですか?

長谷部 「チタンに回帰するだろう」と言っていたことが外れたわけですけど、カーボンの良さは「研磨を必要としない」という点にあるとテーラーメイドは説明しています。金属製ヘッドは叩く、流し込んで冷ます、研磨する工程で個体差が出やすいのですが、カーボンなら金型で狙った通りの形状を再現できる。
 
トミー・フリートウッド選手が昨年から使用しているという今回の少し丸いフェースも、実はコリン・モリカワ選手がなかなか変えられなかった「SIM」のフェース形状の再現という裏話がSNSで語られているほどで、そうした「偶然の産物」であったようなチタンのバラツキを、今回はカーボン素材の特性を活かして確実な性能として形にしてきたところにあります。

GD カーボンは曲面を作るのが技術的に難しいのではないでしょうか?

長谷部 カーボンと樹脂では硬化する際の収縮率の違いがあるので若干変形する現象がありますので、設計通りの曲面にするのは容易ではないはずです。ただ、金属の跳ね返りを制御するよりは、樹脂のほうが意図した形状をキープしやすい面もあるのかもしれません。カーボンだからバラツキがゼロではなくチタンよりは高精度にできるということになります。

GD 今回のモデル名にある「Qi4D」の「4」は4つの要素(Face, Head, Shaft, Fitting)を意味しているようです。

長谷部 前作の「Qi35」はあまり評判が芳しくなく、アマチュアの方の中にも「結局Qi10に買い戻した」という方がいらっしゃるほどでした。そこに対し、今回はヘッドの形状だけでなく、「シャフト」に関しても新しい取り組みをしてきました。

GD これまでのコラボシャフトとは何が違うのですか?

長谷部 今回は「ヘッドローテーションという観点でシャフトを選びましょう」と提唱しています。これは画期的なことです。

GD 具体的にはどのような違いがあるのでしょう。

長谷部 ざっくり申し上げますと、部分的な硬さのバリエーションを増やしているんです。一見すると同じような剛性分布のシャフトに見えても、実はシャフトの挙動が異なっている。その方の手の動きや体の動きに合わせて、重さや硬さ、トルクとは別の次元での「振りやすさ」を選べるようにしたわけです。


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