「長谷部祐とギア問答!」は、国内外大手3メーカーで、誰もが知る有名クラブの企画開発を20年超やってきたスペシャリストの長谷部祐氏に、クラブに関する疑問を投げかけ、今何が起こっているのか? その真相を根掘り葉掘り聞き出すものです。クラブ開発の裏側では、こんなことが考えられているようです……。

テーラーメイドとピンが描く、2026年「フィッティング戦略」

GD メーカー自らが提案する本格的なフィッティングですね。

長谷部 そうですね。ヘッドの進化がルールの限界に達している中で、シャフトまで含めてクラブメーカーとして提案しなければ、もはやメーカーとしての進化を示せなくなった。限界を感じた結果かもしれません。

GD これまでは「有名なカスタムシャフトを挿せばいい」という時代でしたが、それだけでは性能を体感できなくなったということではないでしょうか。

長谷部 ざっくり言うと部分的な硬さのバリエーションを増やして同じしなり方をしているように見えるものの、実はシャフトの挙動は違うみたいなもので、その人の手の動きや体の動きに合わせた硬さと重さとは異なる、振りやすさのところをより選びやすくしたっていうのが説明になりますかね。

GD これはメーカー推奨のカスタムってこと?

長谷部 そうですね。このヘッドに対してというよりも、テーラーメイドが3種類のゴルファーのタイプを見つけていますと。その3つのタイプのシャフト「LR」、「MR」、「HR」に重さと硬さでバリエーションが60gから40gまで豊富にあるので、その中から選んでくださいというフィッティングの仕方です。
 
従来だったら「TM50」とか「TM60」でRとSしかありませんでしたが、シャフトの硬さや重さ、さらに部分的な硬さの違いを作ったことで選びやすくしたということです。

画像: 上から「LR」、「MR」、「HR」

上から「LR」、「MR」、「HR」

GD 最近の流れからするとヘッドの性能はよく解説して、シャフトはどちらかというとそれほど説明されませんでした。“クラブメーカーなのにヘッドメーカーになっていた”感じでしたが、クラブメーカーに戻ろうとするっていう流れになってきた?

長谷部 そうですね。「ヘッドの進化はもう限界でクラブメーカーならオリジナルシャフトが絶対必要だよね」ってことをこの連載でも話してきましたが、一人一人のゴルファーに対してヘッドのフィッティングだけでは、さらに良い結果を出せなくなってきたということだと思います。

GD そう考えると、ピンはもともと「フィッティングメーカー」を自負していますよね。

長谷部 ピンの関係者の方は、誇りを持って「ピンはフィッティングメーカーですから」と仰います。ヘッドだけでなく、シャフトや長さまでトータルで最適化する思想が根底にあります。
 
今回、競合他社にとって脅威となるのは、やはり「G440K」でしょう。昨年の「MAX」や「LS」は、ピンとしては珍しく少し「飛び」を意識して投影形状をシャープにしましたが、そこへ満を持して「やさしく見える大型ヘッド」を投入してきました。

GD テーラーメイドとの比較ではなく、ピンの中で「どのピンにするか」で迷ってしまうのが怖い、と。

長谷部 その通りです。しかも「G440K」はソールまでカーボンを採用したり、内部のリブ構造で打音を「G430 10K」から改善したりと、着実に自分たちの土俵を広げています。またピンが独走してしまうのではないか、という予感すらします。

GD それぞれのブランドのファン層はどうなっていくと思われますか?

長谷部 最近の傾向を見ますと、ピンのファンというのは特定の層というより「アベレージゴルファー全体」に広がっていますね。かつてのゼクシオが担っていた領域です。
 
対してテーラーメイドは、情報の感度が高い熱狂的なファンを抱えています。広大なアベレージ層はピンで、それよりも感度の高い中上級者層がテーラーメイド、“自分は特別だ”というこだわりを持つ方々がタイトリストといった感じでしょうか。
 
もちろんブランドにこだわりすぎず、実際に打ち比べることが何より大切で、特に今回のテーラーメイドに関しては、シャフトのしなり方の違いを体感するために、「コアモデルで3つのLR、MR、HRを必ず試打すること」を強くお勧めしたいですね。

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