
久常涼はニコニコしながらの一日だった(撮影/岩本芳弘)
2025年とは何が違う? データが語る「弱点克服と武器の研磨」
久常といえば、精度の高いショットを武器に戦う「ショットメーカー」という評価が定着している。実際、2025年シーズンのスタッツを見てみると、彼のプレースタイルは明確だ。
「SG: Tee-to-Green(ショットの貢献度)」はプラス圏内で安定している一方、「SG: Putting(パッティングの貢献度)」は「-0.205(141位)」と、グリーン上でスコアをロスする傾向にあった。つまり、「ショットで稼ぎ、パットで耐える」のが彼のゴルフだった。
しかし、2026年に入り、そのゴルフは別次元へと進化している。
今季のスタッツを見ると、最大の武器であるアイアンショットを示す「SG: Approach」は、昨季の「0.151(71位)」から「0.999(5位)」へと劇的に向上。さらに、課題とされていた「SG: Putting」も「-0.205(141位)」から「0.479(44位)」へとプラスに転じている。
ショットの精度がさらに研ぎ澄まされ、パッティングも武器になりつつある今季、総合力を示す「SG: Total」は昨季の「86位(0.23)」から「6位(1.636)」へと急上昇。スタッツ上では、すでにツアー屈指のプレーヤーへと変貌を遂げているのだ。
今日は何がよかった? 「158フィート」の衝撃
2026年の久常は「ショットもパットもハイレベル」な選手へと進化している。しかし、このペブルビーチの初日に限っては、少し事情が異なっていた。
驚くべきことに、この日のショット・スタッツは軒並みマイナスだったのだ。「SG: Off-the-Tee」は「-0.396(61位)」、「SG: Approach」は「-0.185(45位)」。今季の好調を支えるはずのショットが、この日はフィールド平均以下だった。
では、なぜ「62」が出たのか?
それはグリーン上のパフォーマンスが“神懸かっていた”からに他ならない。この日の「SG: Putting」は驚異の「+5.132(フィールド2位)」。さらに「SG: Around-the-Green(アプローチ)」も「+1.699(8位)」を記録し、ショットのミスを完璧にカバーした。沈めたパットの総距離は「158フィート(約48メートル)」。ショットが乱れても、グリーン周りとパターで拾いに拾いまくったのだ。
その要因について、久常は独特の感性を明かしている。
「ポアナ芝のグリーンが好きなんです。他の選手が嫌がるような独特の転がりも、僕にはむしろ心地よく感じる」
多くの選手が苦戦するペブルビーチ特有のポアナ芝を、彼は完全に味方につけていた。さらに、直近2試合連続トップ10入りという好調さが、メンタルに余裕を与えている。
「以前よりもコース上で落ち着いているし、自信もついている」
ショットが悪くても、パットとショートゲームで「62」が出せる。それこそが、今日の久常の強さだ。18番ホールでティーショットを木に当てながらも運良くフェアウェイに出た場面も含め、「今日はとてもラッキーだった」と笑う余裕も、今の彼にはある。
「ショットメーカー」の久常涼が、この日ばかりは「パッティングゴッド」に変貌し、ペブルビーチを攻略してみせた。その引き出しが、PGAツアー初優勝への布石となるはずだ

