「AT&Tペブルビーチプロアマ」のムービングデー。太平洋からの風が強まり、ポアナ芝のグリーンが牙を剥き始めた午後のペブルビーチで、二人の日本人選手はあまりにも対照的な運命を辿った。優勝争いに名乗りを上げたのは、松山英樹だ。「67」で回り、通算15アンダー単独6位に浮上。首位とは4打差、十分に射程圏内だ。一方、首位タイからスタートした久常涼は「74」と崩れ、通算13アンダーの11位タイへと後退した。スコアだけ見れば明暗が分かれた形だが、その中身(スタッツ)を紐解くと、ゴルフというゲームの奥深さと残酷さが浮き彫りになる。
画像: 優勝争いに加わった松山英樹と一歩後退した久常涼(写真は26年AT&Tペブルビーチプロアマ2日目、撮影/岩本芳弘)

優勝争いに加わった松山英樹と一歩後退した久常涼(写真は26年AT&Tペブルビーチプロアマ2日目、撮影/岩本芳弘)

「曲げても、寄せればいい」松山英樹のショートゲーム・マジック

この日の松山のティーショットは、ここ最近のリプレーを見ているようだった。「SG: Off-the-Tee(ティーショットの貢献度)」は「-1.511(73位)」。フィールドの底辺に近い数字が示す通り、ドライバーは安定感を欠いた。フェアウェイキープ率は57%(8/14)に留まり、ラフやバンカーを渡り歩く苦しい展開。

しかし、スコアは伸びた。なぜか? グリーン周りで「魔法」を使ったからだ。「SG: Around-the-Green(グリーン周り)」は「+1.420(5位)」、「SG: Putting」は「+1.775(9位)」。ショットが乱れても、絶妙なアプローチでピンチを凌ぎ、際どいパットをねじ込む。スクランブリング(リカバリー率)は100%(5/5)。ある意味「パッティングが決まれば上位争いは確実」といわれる松山英樹らしさが出た3日目だった。

「フェアウェイキープ100%」でスコアを落とした久常の悲劇

対照的に、久常涼のスタッツは見る者を困惑させる。この日、彼の「ドライビング・アキュラシー(フェアウェイキープ率)」は「100%(14/14)」だった。「SG: Off-the-Tee」も「+1.615(2位)」と、ティーショットに関しては完璧に近い出来だった。

しかし、ゴルフはホールアウト時のスコアを争う競技。完璧なドライバーショットの後に待っていたのは、悪夢のようなグリーン上の苦闘だった。

「SG: Putting」は「-3.828(80位)」。初日に神懸かっていたパッティングが、この日は完全に沈黙した。さらに「SG: Approach」も「-1.740(68位)」と振るわず、フェアウェイからのアドバンテージを活かせない。「ドライバーは完璧、パットは絶不調」。ゴルフの残酷さを凝縮したような一日となり、順位を10ランク落とす結果となった。

【動画】久常も思わず苦笑い。強風のぺブルビーチ【PGAツアー公式X】

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モリカワが「62」で急浮上。その要因はパットにあらず?

上位陣に目を向けると、コリン・モリカワがこの日のベストスコア「62」を叩き出し、通算17アンダーの2位タイへ急浮上している。 驚くべきは、彼が手にしていたパターだ。

「カート(・キタヤマ)の予備パターを借りて使っているんだ」

会見でそのパターについて「パットが決まるべき時に決まってくれた」と語ったモリカワだが、スタッツを見ると面白い事実が浮かび上がる。この日の「Feet of Putts Made(パットの総距離)」は「58フィート11インチ(約18メートル)」でフィールド45位。11個もバーディを奪っているのに、決めたパットの距離は驚くほど短いのだ。

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これはつまり、「SG: Approach(+6.472/1位)」が示す通り、ショットが異次元の精度でピンに絡んでいたことを意味する。長いパットを入れる必要すらない“ベタピン”の連続。全盛期のタイガー・ウッズを彷彿とさせる「ショットの暴力」で、優勝戦線に割って入った。

首位バティアは「3つの季節」を耐え抜く

単独首位(通算19アンダー)を守ったのはアクシャイ・バティアだ。

「スタートは穏やかで、中盤はタフになり、最後は強風で凍えるようだった。1日で3つの季節を経験した気分だ」

目まぐるしく変わるコンディションの中、18番では強風でボールが動くハプニングにも動じずパーセーブ。「変な一日だったけど、明日が楽しみだ」と、22歳のレフティは若者らしい強心臓を見せる。

【動画】バティアの3日目前半「30」を振り返る【PGAツアー公式X】

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一方、世界ランク1位のスコッティ・シェフラーは通算11アンダーの20位タイ。「17試合連続トップ10」という記録について問われると、「一貫性の証としてはいいけど、それ以外はどうでもいい」とバッサリ。彼の視線は、あくまで「優勝」の二文字にしか向いていない。

松山の「粘り」か、モリカワの「キレ」か、それともバティアの「勢い」か。そして、久常は再びパターの魔法を取り戻せるか。ペブルビーチの最終日は、混戦必至の様相を呈している。


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