
タイガー・ウッズの26年マスターズで復帰はあるか(写真は24年マスターズ、撮影/岩本芳弘)
「固定」された足首とは違う。背中の回復に見る“リアル”
会見のたびに繰り返される「体調は?」という質問。しかし今回、ウッズの回答はこれまでになく具体的で、かつ自虐的なユーモアを含んでいた。引き合いに出されたのは、同じく腰の手術から復帰を果たしたウィル・ザラトリスだ。
「ウィルは私と同じ手術(椎間板置換手術)を受けたが、復帰までにかなりの時間を要した。そして、私は彼よりも『少しばかり』年寄りだからね。もう少し時間がかかるのは仕方がないことさ」
会場の笑いを誘ったこの言葉だが、その裏にある現実は笑い事ではない。かつて受けた脊椎固定術(フュージョン)とは異なり、可動域が残る手術箇所には、日によって波があるという。「フルショットは打てるのか?」という問いに対し、ウッズは隠さずに答えた。
「ああ、打てるよ。ただ、毎日うまく打てるわけじゃない。患部はまだ疼くし、時間がかかるんだ」
固定されて動かない足首の不自由さとはまた違う、動くからこそ生じる痛みと、回復の遅れ。50代に入った肉体が発する悲鳴と向き合いながら、それでも彼はティーグラウンドに立つ準備を進めている。
視線は「オーガスタ」へ。明言されたマスターズへの“可能性”
そして、我々が最も聞きたい問い――「4月のマスターズは断念したのか?」について、ウッズは短く、しかし力強く否定した。
「いいや(No)」
多くを語ることはなかったが、その視線が確実にオーガスタを捉えていることは間違いない。「PGAツアーかシニアツアーへの復帰は近いのか?」との問いには「努力はしている、と言っておこう」と慎重な言い回しに終始したが、水面下では着実にその時を窺っている。
かつてのような連戦は難しいかもしれない。しかし、すべてはグリーンジャケットのため。今はホストとしての責務を全うしながら、自身の肉体を極限まで仕上げることに全力を注いでいる。
ライダーカップ主将への「迷い」が生じる理由
2027年ライダーカップの米国選抜キャプテン就任。既定路線かと思われたこの人事に対し、ウッズは明確に「まだ決断していない」と明言した。
PGAオブ・アメリカ側から意見を求められ、対話を重ねていることは認めたものの、彼を躊躇させているのは、現在彼が担っているPGAツアー政策理事会(ポリシーボード)での重責だ。
「現在、ツアーの未来を設計するために、毎週何時間もの時間を費やしているんだ」
新たなスケジュールの再編や、ツアーの在り方を巡る議論。会議室でのウッズは、コース上と同様に一切の妥協を許さない。だからこそ、キャプテンという大役を引き受けることに慎重にならざるを得ないのだ。
「引き受けるなら、チームUSAと選手たち、そして関わるすべての人々に正当な貢献ができる確信が必要だ。今の理事としての業務と両立させながら、それだけの責任を果たせるのか。まだその答えが出ていないんだ」
中途半端な関わり方で、国を背負う選手たちを率いることはできない。その誠実すぎるほどの責任感が、レジェンドの決断を鈍らせている。
復活のアンソニー・キムへ。かつての天才に送ったエール
会見の終盤、話題は16年ぶりに競技ゴルフ(LIVゴルフ アデレード)で優勝を果たしたアンソニー・キムにも及んだ。かつてツアーで輝きを放ちながら、怪我と個人的な事情で姿を消した“AK”。ウッズは彼を「信じられないほどの天賦の才を持っていた」と絶賛した上で、ゴルフの成績以上の部分に言及した。
「誰しも人生において苦しむことはある。彼がその『どん底』から這い上がってきたこと、その事実に、心を震わせずにいられるだろうか」
同じように怪我に苦しみ、プライベートでの困難も乗り越えてきたウッズだからこそ語れる言葉だった。
「彼がまた戦い、優勝し、家族への献身を見せている。そのストーリーこそが、何物にも代えがたい」
痛みを知る者だけが持つ優しさと、組織を背負う厳しさ。会見でのタイガー・ウッズは、単なるプレーヤーの枠を超え、ゴルフ界の父としての顔を覗かせていた。

