
ショットのキレが戻ってきたというリディア・コー(写真は24年、撮影/Yasuhiro JJ Tanabe)
「ここ数年で最悪」からのV字回復。驚異のパーオン率
「この数年間、私のアイアンにおける『パーオン率(GIR)』のスタッツは最悪だったの。だから、そこを最優先の課題として取り組んできたわ」
実際、LPGAの公式スタッツがその言葉を裏付けている。2021年(73.06%/34位)や2022年(72.88%/26位)と安定していたパーオン率は、2023年に「65.57%(111位)」へと急降下。昨季(2025年)も「66.98%(113位)」と、ツアー100位圏外に沈んでいたのだ。かつて世界を席巻した正確無比なショットメーカーにとって、この数字はまさに「最悪(worst)」と呼ぶにふさわしいどん底の状態だった。
しかし、その不調を冷静に見つめ、地道にスウィングの修正を重ねてきた成果が、このパタヤの地でついに数字として表れた。
「1ラウンドで16回もグリーンを捉えた(パーオンした)のは、本当に久しぶり。こうやって結果に出るのはとても嬉しいことね」
この日、彼女のパーオン率は18ホール中16ホールの約89%を記録した。ピンをデッドに狙うアイアンショットのキレが戻り、パッティングの負担を大幅に減らしている。彼女の言葉通り、ボールストライキングの復調こそが、このビッグスコアの最大の原動力である。
「メンバーズバウンス(幸運な跳ね方)」を引き寄せる技術
ショットの調子を象徴するもう一つのシーンが、15番で奪った見事なイーグルだ。 1オンも狙えるこの短いパー4で、彼女の放ったティーショットはグリーン手前の傾斜に着弾し、そこからピンそば約1メートル(3〜4フィート)へと転がった。
「フロントエッジを越えるために、本当に良いショットを打つ必要があった。ダウンスロープに当たって、最高の『メンバーズバウンス(コースを知る会員のような幸運な跳ね方)』をしてくれたわ。パー3でもパー4でも、イーグルのためにあんな短いパットが残るのはボーナスみたいなものね」
運の要素(メンバーズバウンス)を笑顔で認めつつも、その幸運を引き寄せたのは「狙ったポイントに確実にボールを運ぶ」という高い次元のコントロール能力があってこそだ。
「普段は傘をささない」女王が氷のうを手放さない理由
そして、灼熱のタイでの戦いを勝ち抜く上で欠かせないのが、フィジカル面のマネジメントだ。連日30度を大きく超える猛暑の中、彼女はプレースタイルにもある変化を見せている。
「私は普段、日傘をさすのが好きじゃないの。でも、今週は傘と氷のうを常に持ち歩いているわ。それはつまり、体を冷やすために『できることはすべてやっている』ということ」
ただ暑さを凌ぐためではない。彼女が見据えているのは、日曜日の最終ホールだ。
「(暑さへの対策は)その瞬間だけが重要なんじゃない。日曜日が終わる頃には長い一週間になるから、全体の疲労を管理するためなのよ」
技術的な不安を払拭し、持ち前のショット力を取り戻したリディア・コー。そこに、長年のツアー生活で培われた完璧な体力温存の術が加われば、もはや死角はない。週末のサイアムCC、復活した元女王の鮮やかな逆転劇が見られるかもしれない。



