
ウォーターシャワーで祝福されるジーノ・ティティクル(PHOTO/Getty Images)
岩井千怜の猛追を振り切った「勝ち切る」強さ
最終日のリーダーボードは、最後まで息を呑む展開となった。 サンデーバックナインに入り、猛烈なチャージをかけてきたのが日本の岩井千怜だ。「66」を叩き出し、通算23アンダーでホールアウト。先に上がった岩井が、首位を走るジーノに1打差のプレッシャーをかけて待つ状況となった。
かつての彼女であれば、この重圧に押し潰されていたかもしれない。しかし、今のジーノには「勝ち切る」ための強靭なメンタルが備わっていた。勝負の分かれ目となったのは、後半の我慢だ。13番ホール、完璧な感触で放ったショットが突風に煽られ、不運にもバンカーへ転がり落ちた。
【動画】ジーノが話す13番ホールは10:36~【LPGA公式YouTube】
Jeeno Thitikul WINS on home ground
www.youtube.com「少しイラッとしました。でも『良いショットを打ったからといって、良い結果になるとは限らない』と自分に言い聞かせ、ひたすら忍耐強くプレーしました」
コントロールできない不運を受け入れ、コントロールできる一打に集中する。この13番をボギーとし、岩井に並ばれる苦しい展開ながらも、17番で値千金のバーディを奪い、再び手にしたリードを死守して勝ち切った。それは、惜敗を重ねてきた過去の自分との決別を証明する、真の王者のゴルフだった。
「お願いだから勝って!」重圧を力に変えた14歳からの道のり
ジーノにとって、この「ホンダLPGAタイランド」は特別なトーナメントだ。 彼女が初めてこの大会のティーグラウンドに立ったのは、なんと14歳のアマチュア時代。以来、このコースは彼女の成長を記録し続けてきた。LPGAツアーのトップ選手へと駆け上がり、世界ランク1位にも上り詰めた彼女だが、2021年や2022年に優勝争いを演じながらも、あと一歩のところで母国のタイトルには手が届かずにいた。
「タイのファンはいつも『お願いだからホンダLPGAで勝って!』と叫んで応援してくれていました。私は『すごく努力しているのよ!』と思いながら、ずっと悔しい思いをしてきたんです」
世界No.1としての矜持と、母国のファンの痛いほどの期待。それは時に想像を絶するプレッシャーとなっていたはずだ。しかし彼女は、その重圧から逃げることなく真っ向から受け止め、ついに母国に歓喜をもたらした。
23歳のバースデーウィークに飾った、母国での「初戴冠」
奇しくも大会2日目の2月20日、彼女は23歳の誕生日を迎えていた。今週、コース上でファンから何度も「ハッピーバースデー」の合唱を贈られた彼女は、最高の結果でそのお祝いに報いてみせた。
23歳になって最初に掴んだこのビッグタイトルは、彼女にとっても、応援し続けてくれたタイの人々にとっても、忘れられない特別なプレゼントとなった。「ジーノ」の名が、名実ともに世界とタイに轟いた歴史的な一週間となったのだ。
「メジャー以上の意味がある」次なる高みへ
ウィニングパットを沈めた直後、18番グリーンには涙を流しながら駆け寄る母の姿があった。
「母が泣きながら来てくれて、私も感情が溢れてしまいました。『ついにあなたたちの前で勝てたよ』って伝えました」
そう語るジーノの目には、まだうっすらと涙が浮かんでいた。
「メジャー大会と比べるような規模ではないかもしれない。でも私にとって、母国で勝つことは『メジャーで勝つ以上の意味』があるんです。自己評価をつけるなら『A+++』ですね」
重くのしかかっていた「母国での勝利」という呪縛から解放された世界ナンバーワン。プレッシャーを跳ね除け、究極の安堵と自信を手にしたタイのヒロインは、今シーズン、メジャー制覇という次なる高みへ向けてさらに加速していくに違いない。
※2026年2月24日8時41分、一部加筆修正しました。


