フロリダ州のPGAナショナルで開幕した「コグニザントクラシック」初日。難コースとして知られるこの舞台で、リーダーボードの最上段に名乗りを上げたのは、9バーディ・ノーボギーの「62(9アンダー)」という圧巻のスコアを叩き出したオースティン・スマザーマンだ。完璧なラウンドを支えたのは、鬼神のごときグリーン上のパフォーマンスだった。この日、彼が沈めたパットの総距離は驚異の「132フィート(約40メートル)」。なぜ、これほどまでに面白いようにパットが決まったのか。ラウンド後の会見で彼が明かしたブレイクスルーの秘密は、パッティングに悩むすべてのアマチュアゴルファーにとって、目から鱗のヒントになるはずだ。
画像: たしかにボールの線を合わせていないように見えるオースティン・スマザーマン(PHOTO/Getty Images)

たしかにボールの線を合わせていないように見えるオースティン・スマザーマン(PHOTO/Getty Images)

「線」を合わせるのをやめ、グリーン上の“アーティスト”になる

「今週は久しぶりに、ボールの線を合わせるのをやめたんだ」

スマザーマンは事もなげにそう語った。多くのゴルファーはグリーン上で、ボールに引かれたラインをターゲットに真っすぐ向けようと神経を尖らせる。しかし、彼はあえてそのルーティンを捨てたのだ。

「線を使わないことで、ストロークがとても自由になった。ラインはあくまで外部的なものとして捉え、カップを見て、ボールを入れたい場所をイメージする。あとは、自分の感覚とスピード感に任せるだけ。自分がグリーン上の『アーティスト』になったような気分だったよ」

PGAナショナルのグリーンは傾斜が強く、風の影響も受けやすい。ボールの線に固執しすぎると、構えた後に「本当にこのラインで合っているのか?」という疑念が生まれ、ストロークが萎縮してしまう。線を消し、ターゲット意識と自らのタッチ(距離感)にのみ集中することで、彼は淀みないストロークを取り戻し、132フィートものパットを沈めきったのだ。

世界No.1シェフラーも実践する「線を消す」トレンド

実はこの「線を合わせない(消す)」というアプローチは世界ランキング1位のスコッティ・シェフラーも実践している。

画像: シェフラーもパッティングではボールの線を消していると明言している(写真はAT&Tぺブルビーチプロアマ、撮影/岩本芳弘)

シェフラーもパッティングではボールの線を消していると明言している(写真はAT&Tぺブルビーチプロアマ、撮影/岩本芳弘)

先週の「ジェネシス招待」の会見で自身のパッティングについて語ったシェフラーも、かつてはボールの線を真っすぐ合わせることに執着していた一人だった。しかし、2024年にマレット型(Spider)パターへの変更と共に「ボールの線を消すこと」を選択し、劇的なV字回復を遂げている。

「ラインを合わせようとしすぎると、それが逆にノイズになっていた。線を消したことで、よりシンプルに軌道をイメージできるようになった」とシェフラーは振り返っている。パッティングという繊細な作業において、「過剰なアライメント(方向合わせ)」が逆にスムーズな動きを阻害してしまうのだ。

スマザーマンの初日の大爆発は、この「シェフラーの哲学」の正しさを図らずも証明する形となった。「合わせる」ゴルフから「感じる」ゴルフへ。ストロークに迷いのあるアマチュアゴルファーなら、このスタイルを試してみるのもありだろう。

第3子誕生を控えた「無の境地」

技術的な閃きに加え、スマザーマンを後押ししているのが、精神的な余裕だ。3月23日には、妻との間に第3子が誕生する予定だという。出産を約1カ月後に控える中、彼はテキサスからフロリダへの遠征を続けている。

「これから数週間、どんなシナリオが起こるか分からない。もしかしたら、試合の途中でテキサスに飛んで帰らなきゃいけないかもしれない。でも、だからこそ心は自由なんだ。赤ちゃんは生まれる時に生まれる。僕にできるのは、ただ目の前のゴルフを楽しむことだけさ」

結果をコントロールしようとせず、流れに身を任せる。ボールの線を合わせないパッティングスタイルは、今の彼の「無の境地」とも言えるメンタリティと完璧にリンクしている。自由な心と研ぎ澄まされた感性を武器に、スマザーマンが悲願のツアー初優勝へ向けて最高のスタートを切った。

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