急造キャディの夫と乗り越えた「見えない重圧」

夫ジャリード・フェルトンとのコンビでは初となる優勝となったハナ・グリーン(PHOTO/Getty Images)
実は今大会、グリーンのバッグを担ぐ予定だった専属キャディは、ビザ(グリーンカード)申請の都合で急遽アメリカを出国できなくなっていた。そこで白羽の矢が立ったのが、プロゴルファーでもある夫のジャリード・フェルトンだったのだ。
最終日のサンデーバックナイン。首位を争う極限のプレッシャーの中で、グリーンは自分でも予期せぬ感情に襲われていたという。
「正直に言うと、コース上で本当に緊張していたの。夫にも『なぜこんな気分になるのか分からない。久しぶりだからかな』とこぼしていたくらいよ」
見えない重圧に押し潰されそうになる彼女を支えたのは、他でもない夫だった。同じプロゴルファーとしてプレッシャーの正体を理解する彼は、妻に向かって静かに、しかし力強く声をかけ続けた。
「深呼吸して」「水を少し飲んで」
そのシンプルな言葉の繰り返しが、彼女に冷静さを取り戻させた。
「夫と一緒に勝てたから、以前の勝利よりもずっと感情的になったわ」
ラッキーナンバーである「7」勝目を、最愛のパートナーと分かち合った特別な瞬間。表彰式で見せた彼女の涙が、その絆の深さを物語っていた。
**【動画・約14分半】HSBC女子世界選手権最終日、ハナ・グリーンのハイライト【LPGA公式YouTube】
Hannah Green WINS for the second time in Singapore
www.youtube.comミンジー・リーとの“地元”のような最終組
そしてもう一つ、彼女の心を安らかに保つ支えとなった要因がある。最終日最終組を共に回ったのが、同い年で同じオーストラリア・パース出身のミンジー・リーだったことだ。
世界トップレベルの優勝争い。通常であれば、張り詰めた空気が同組の選手間に漂うものだ。しかし、この日の二人の間にピリピリした雰囲気は皆無だった。「まるで実家(パース)で一緒に回っているような、普通の感覚だったわ」とグリーンは振り返る。
グリーンがバーディを重ねて首位を走る一方、リーはスコアを落とす苦しい展開。それでも、お互いのキャディ(グリーンの夫を含む)を交えて和やかに会話を交わし、リラックスした空気が途切れることはなかった。ホールアウト後、敗れたリーは笑顔で友人の勝利を心から祝福した。
「次に夫にキャディしてもらうのは、(3月12日開幕の)オーストラリアン女子オープンの予定よ」
愛する夫との二人三脚、そして盟友との温かい時間。過酷な世界最高峰の舞台で、ハナ・グリーンは「最高に心地よい」環境を作り出し、見事に勝利の女神を微笑ませたのだ。


