
現世界No.1のスコッティ・シェフラーとかつてNo.1を取ったことのあるベテラン、アダム・スコット(撮影/岩本芳弘)
アダム・スコット、45歳での進化。ロフトを「1度」立てて得たスピード
今年で24回目の大会出場となるアダム・スコット。2004年の覇者でもある彼は、45歳を迎えた今季、ある驚くべきスタッツを叩き出している。ドライバーのボール初速が、昨シーズンよりも時速4マイル(約1.8m/s)も上がり、平均184マイルという驚異的な数値を記録しているのだ。
年齢に逆行するようなこのスピードアップの秘密を問われると、スコットはあっさりと「ギアの調整」だと明かした。
「スピードを上げるために特別なトレーニングをしたわけじゃないんだ。実は、『ソニーオープン』の後に、ドライバーのロフトを10度台から9度台に、1度ほど減らしたんだよ」
彼がロフトを立てた理由は、距離を伸ばすためではなく「スピン量が多すぎたから」だという。データ解析によって弾道の最適化を図り、ロフトを減らしてスピンを抑えた結果、副産物としてボール初速の劇的な向上という恩恵を手に入れたのだ。
「今の年齢でスピードを維持できているのは、本当に楽しいおまけみたいなものさ。真っすぐ飛んでいるしね」
データを味方につけ、ギアの微調整によって自身のポテンシャルを最大限に引き出す。これぞ、現代ゴルフにおける正しいテクノロジーの恩恵と言えるだろう。
スコッティ・シェフラー「データは感覚の後についてくるもの」
一方で、そんなデータ偏重のトレンドに背を向けるように、「フィーリング至上主義」を貫いているのが世界ランキング1位のスコッティ・シェフラーだ。
先週の「アーノルド・パーマー招待」でシェフラーが新ドライバーを投入したのは既報のとおり。「スピン量が安定し、初速も少し上がっている」と、新テクノロジーの良さは認めている。しかし、今大会でも使い続けるかというと、話はそう簡単ではない。
「僕はボールを曲げて、いろんな球筋を打ち分けるタイプの選手だ。だから、スピン量が少し変わっただけでも、僕にとっては大きなアジャストが必要になるんだよ」
単に「数値が良いから」という理由だけでクラブを変えることはない。自分の思い描く弾道と、実際の球の動きがリンクしなければ、彼にとっては意味がないのだ。
さらに、スタッツ(データ)に対するシェフラーのスタンスは明確だ。「スタッツが、自分の感じていないことを教えてくれた経験はあるか?」という記者の質問に対し、彼はきっぱりと首を横に振った。
「ないね。僕のスタッツは、常に僕の『フィーリング(感覚)』と一致しているんだ。自分が良いアイアンショットを打てていると感じれば、スタッツも良い。逆に、感覚が悪い時はスタッツも悪い」
「僕は誰よりも自分自身の最大の批評家だ。スタッツを見るよりも、自分の感覚を一番に信じる」
弾道計測器が弾き出す数字よりも、長年培ってきた自分の手のひらの感覚と、ボールの飛び方を信じ抜く。圧倒的な練習量と経験に裏打ちされた、王者ならではの絶対的な自信である。
アダム・スコットのようにデータを活用してギアを最適化し、進化を続けるベテラン。スコッティ・シェフラーのように、最新テクノロジーを試しつつも、最後は自らのアナログな感覚にすべてを委ねる王者。どちらが正しいというわけではない。TPCソーグラスの難コースを前に、トッププロたちが己の信じる武器と哲学でどう戦うのか。そのスウィングの裏側にある「選択」に思いを馳せるのも、ゴルフ観戦の醍醐味である。


