
日本時間の3月19日0時にリモート取材に対応したマキロイはグリーンのジャケットを羽織って登場した(写真は25年マスターズセレモニー、撮影/岩本芳弘)
三つ星の味を完全再現したオーガスタの執念
輝かしい宴の幕開けを飾る第1のコースに選ばれたのは、ニューヨークの超名店「Le Bernardin(ル・ベルナルダン)」の名物であるキハダマグロのカルパッチョだ。この一皿は、マキロイが同店を訪れるたびに必ず注文するという、彼にとって特別なフェイバリット・メニューである。
驚くべきは、このメニューを提供するためのオーガスタ・ナショナルの執念だ。クラブの関係者は、王者のリクエストを完璧に再現するためだけに直々にニューヨークの同レストランへ足を運び、現地のシェフたちと直接協力して準備を整えたというのだ。マキロイ自身も「本当にクールなことだ」と喜ぶほどの並外れたホスピタリティが、この一皿には込められている。
地元愛と、生まれ年の「液体の黄金」
メインディッシュのフィレミニョンなどに添えられるのは、「ビダリア・オニオンリング」である。ジョージア州ビダリアは、オーガスタから車でわずか2時間ほどの距離にある街だ。マキロイは当地のゴルフクラブのメンバーでもあり、自らの祝宴にこの粋なローカルテイストを取り入れることで、地元への愛と敬意を示した。
そして、ディナーを彩るワインのセレクションにも、彼の人生の歩みが色濃く反映されている。デザートワインとして用意された「1989年 シャトー・ディケム」は、マキロイの生まれ年(1989年)のヴィンテージである。彼自身がこれを「液体の黄金」と称賛し、「素晴らしい食事はシャトー・ディケムで締めくくられるべきだ」と特別な思い入れを語る、極上の一本である。
親友が関わった「歓喜の赤ワイン」
さらにドラマチックなのが、赤ワインのチョイスである。注がれるのは「1990年 シャトー・ラフィット・ロートシルト」。このヴィンテージは、マキロイが悲願のマスターズで優勝を果たした、まさにその歓喜の夜に祝杯として飲んだ思い出のボトルなのだ。
しかし、歴代チャンピオン全員に振る舞うだけの希少なオールドヴィンテージを揃えるのは決して容易ではない。この特別なワインを手配するために動いてくれたのが、彼の盟友であるシェーン・ローリーだった。マキロイは「あのワインを手に入れるのに、シェーン・ローリーが少し関わってくれたので、彼にも感謝したい」と、裏方として尽力してくれた親友への想いを口にしている。
人生と感謝が詰まった「究極のディナー」
単なる高級食材の羅列ではない。マキロイ自身の人生の歩み、親友への感謝、そしてオーガスタの規格外のホスピタリティが詰まったこの「究極のディナー」は、マスターズという大会がいかに特別で、温かい人間ドラマに満ちているかを教えてくれる。
