「こなしている感じ」からの脱却と孤独な戦い

過酷な3日間を制し、最後をバーディで締めくくった笠りつ子(撮影/姉崎正)
「実は、今年一勝したらもう(ツアーを)やめるではないですけど、自分を楽にしてあげたいと考えていたんです」
会見でそう切り出した笠の言葉には、ベテランゆえの孤独が滲んでいた。近年は毎週の試合をただ「こなしている感じ」になり、かつてのような勝利への貪欲さが消えかかっている自分に気づいていたという。シードを落とした昨年、ネットニュースのトップに躍る自分の名を見ては、「なんで私はいつも世間を騒がせてしまうんだろう」と、過去の出来事も含めた心ない書き込みに唇を噛む夜もあったと話す。
「一戦一戦、来年はもうここ(ツアー)にはいないかもしれない。そんな思いで、毎週の食事もホテルも、悔いのないように過ごしてきました」
ストイックさを捨てて見つけた「パンケーキ」と「再生」
ハワイに一人合宿!(引用:笠りつ子インスタグラムより)
そんな彼女を救ったのは、意外にも「ストイックさの返上」だった。
今オフの合宿、笠はあえて自分を縛り付けるのをやめた。ハワイでは、これまでコンディション管理のために禁止していたパンケーキやアサイーボウルを口にし、初めて山登りや海でのレジャーを楽しんだ。
「ただ練習するだけ」だった日々から、「心を楽にする」ことへシフトしたのだ。

土台を固めスウィングの安定感を上げた(撮影/姉崎正)
技術面でも「下半身が緩んでいる」と指摘を受け、アドレスの歩み方から一つひとつ丁寧に作り直した。気合を入れすぎず、かといって緩ませない。「気合と気楽の共存」こそが、難所ですみれコースを攻略する鍵となったのだろうか。
39歳を前に。嬉し涙で書き換えた「リベンジ」

会見では37歳だと思い込んでいたという、お茶目な一面も(撮影/姉崎正)
「今週、自分の年齢を37歳だと思い込んでいたら、実は38歳だったことに気づいて。次が39歳だと思ったら、本当にびっくりしたんです」と、会見の場を賑わせた笠りつ子。
笑い混じりに語ったが、その瞳は真剣だった。同年代の友人は結婚し、家庭を持っている。40歳という大きな節目を前に、「このまま一人で戦い続けるのか、第2の人生を歩むのか」という迷いの中に彼女はいた。
「だからこそ、一勝して自分に余裕を持たせてあげたかった。『もういいんだよ』って言ってあげたかったんです」

最終18番をバーディフィニッシュでしめた(撮影/姉崎正)
執念で沈めた18番のバーディパット。それは若手への対抗心ではなく、自分自身を許し、再び愛するためでもあった。38歳の階段を踊り場で見つめ直した笠りつ子の物語は、ここからまた、新しい色を帯びていく。
会見終了後、「まずは久しぶりの優勝を味わわせて!私の今後(ゴルフ)はちょっと待っててください!!」。その一言に“笠らしさ”が詰まっていた。





