
解説/内藤雄士
ないとう・ゆうし。丸山茂樹の米ツアー3勝をはじめ、これまで数多くの選手の優勝をサポート。現在は清水大成や大西魁斗など、若手の男子プロを指導している
PGAツアーの平均入射角は1.3度のダウンブロー
ドライバーは「最下点を過ぎてから」インパクトを迎える、つまりアッパーブローで打つのが良いとされてきた。そうすることで、飛距離を決める3要素(ボール初速、打ち出し角、スピン量)のうち、2要素(高打ち出し・低スピン)において有利に働くからだ。
しかし近年、男子プロ、とくにPGAツアーの選手たちは、「トラックマン」などの弾道計測器のデータから、ドライバーをわずかにダウンブローで打っていることが明らかになっている。これは一体、なぜなのか。
スウィングと弾道の関係に詳しい内藤雄士プロは、「クラブとボールの低スピン化がかなり進んだことで、現代のトッププレーヤーは『ハイローンチ(高打ち出し)+ロースピン』を意図的に狙って打つ必要がなくなっているのです」と言う。
もちろん、現代の道具を使い、理想的なアッパー軌道でヒットすれば、ローリー・マキロイやスコッティ・シェフラーのように、キャリーで350ヤードを超えるドライブも実現可能だ。しかし、350ヤードのドライブが「毎ホール」必要かというと、決してそんなことはない。
「たとえばバッバ・ワトソンは、練習場では6度くらいアッパー軌道なのに、試合では3度くらいダウンブローに打っています。つまり、試合では一発の飛びよりも、ある程度スピン量を確保して『曲がらない』ことを重視しているということです」(内藤プロ)
Q “ドライバーはアッパーブローがいい”その理由は?
A 高打ち出し、低スピンの飛ぶ弾道になるから
インパクトロフトを増やして飛距離を出すのに必要な高い打ち出し角を得られる一方で、スピンロフト(インパクトロフトと入射角の差)が小さくなり、スピン量を減らすことができるため。
では、PGAツアーの選手はなぜアッパーではないのか?
①スピン量をある程度確保したいから
②しっかり初速を出したいから
③曲がらないことを優先したいから
ある程度スピン量が確保されているほうが球は曲がりにくいため、PGAツアーの選手たちはそちらを重視する。また、ロフトを立てて打つほうが初速の面では圧倒的に有利に働く。

メジャー1勝PGAツアー14勝のアダム・スコットも1.1度のダウンブロー
LPGAの選手たちはどうなの?
3度のアッパーだった
PGAツアーのプロたちは圧倒的なヘッドスピードがあるからこそ、飛距離よりも弾道安定性を優先できる側面がある。女子プロ(とくにJLPGAツアーなど)の場合は、飛距離を重視してアッパー度合いが強い傾向にある。

3度アッパーのインパクト
「右足に体重が残る”ニセモノアッパー”は
飛距離をロスする原因になります」(内藤プロ)
2013年、米ペンシルベニア州のメリオンGCで開催された「全米オープン」で、ジャスティン・ローズがメジャー初優勝を飾った。当時、ローズをコーチしていたのは、タイガー・ウッズの元コーチでもあるショーン・フォーリーだ。
「その頃にフォーリーが提唱してかなり話題になったのが、『ドライバーはゼロ・ゼロで打つのがいい』というものでした。つまり、入射角0度の完全なレベルブロー、パス(ヘッド軌道)が0度の完全なストレート軌道ということですね。ローズはそれを実践して全米オープンに勝ったということになります」と、内藤プロが明かす。
では、アマチュアも「ゼロ・ゼロ」を目指すべきなのか。
「アマチュアはプロと比べて絶対的に初速が足りないので、レベルブローというよりは、ややアッパーで『キャリーを出すこと』に主眼を置くほうがいいと思います。飛距離不足で悩んでいるアマチュアは100%に近いくらい、キャリーが足りていませんから」と内藤プロ。
それなら「自分は普段からアッパーに打っている」と思った読者も多いはずだ。しかし、そのアッパーが”本物の”アッパーかどうかは、また別の話である。
「アマチュアの場合は、計測で実際に入射角がプラス(アッパー)になっていたとしても、”ニセモノ”のアッパーである場合があります。一番多いのは、ダウンスウィングがカット軌道(=ダウンブロー)なのに、インパクトで急にアッパーに打とうとして自分自身が『ひっくり返って』(上体を右にのけ反らせて)しまうパターンです。ひっくり返るのと同時に、手首を使ってヘッドを上向きに振ってしまうので、ボールにパワーがまったく伝わりません。
もうひとつ多いパターンが、切り返しで左に踏み込めずに右足に体重が残ったまま打つ、いわゆる『明治の大砲』です。これもロフトが必要以上に上を向いてしまう(初速効果ダウン)のと、体の力がボールに伝わらないため、飛距離アップにはつながりません」(内藤プロ)
ボールをつかまえたいという気持ちが強いと、アドレスの時点ですでに右サイドが前に出てしまい(肩や腰のラインがターゲットより左向きになり)、スウィングのスタートでヘッドが大きくアウトサイドに上がってしまう。こうなるとカット軌道は避けられない。多くのアマチュアの場合、入射角を考えるより先に、「アウト・イン軌道の修正が最優先」(内藤プロ)なのだ。
【ニセモノアッパー①】明治の大砲
ニセモノアッパー度【強】
切り返しでアッパーを意識しすぎることで左への踏み込みが弱くなり、右に体重が残ったままインパクトを迎えてしまう。体の力がボールに伝わらないので飛距離は出ない。

これは明治の大砲
【ニセモノアッパー②】ギッタンバッコン
ニセモノアッパー度【超】
テークバックで左足に体重が乗りクラブが外に上がる。そのまま下ろすとカット+ダウンブローなので、途中から上体を右に傾け、インパクト直前で無理やりアッパーにする。

ギッタンバッコンもダメ
ニセモノアッパーになってしまう3つの動き
①球をつかまえようとアドレスで右サイドが前に出る
スライサーはボールを右に出したくないので、本能的に右サイドを前に出して(体のラインを左に向けて)左に振ろうとする。このとき、頭が左にずれ、左足体重になるため、このままだとカット軌道が避けられない。
②ボールを上げようと手首を使ってヘッドを跳ね上げる
インパクト直前に手首の動きだけでヘッドをアッパーに振ってしまうと、必要以上にロフトが寝てしまうので、初速効率が極端に下がってしまう。フェースコントロールも難しくなるので、ボールが曲がりやすくなる。
③アッパーの意識が強すぎて右足に体重が残る
本来のアッパーブローは、最下点を過ぎてからボールに当たるという「現象」のことであって、打ち方ではない。自分でアッパーに振ろうとしてしまうと、切り返しで左に踏み込めず、右足体重インパクトになってしまう。

①~③の動きはNG
内藤プロもアマチュアの入射角を調査していた
「シニアの上級者層も入射角はマイナスでした」
内藤プロが、とあるアマチュア大会でトラックマンデータを取ったら、平均値が「マイナス」(ダウンブロー)だったという。「OBだけは避ける意味で、ある程度スピン量を確保して打つ上級者が多かったです」(内藤プロ)

平均値はマイナスだった
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PGAツアーのトッププロたちは、飛距離よりも曲がらない安定性を求め、ドライバーを「ダウンブロー」に打っていた。一方で、多くのアマチュアは無理にすくい上げようとして、右足に体重が残る「明治の大砲」や、上体がのけ反る「ギッタンバッコン」といった“飛距離をロスするニセモノアッパー”に陥っている。あなたのドライバーが飛ばない本当の理由は、ここにあるのかも!?
では、パワーを100%ボールに伝える「ホンモノのアッパーブロー」を手に入れるには、一体どうすればいいのか?
続く【後編(有料版)】では、丸山茂樹プロらを指導してきた内藤雄士コーチが、その明確な答えを提示しています!
● アッパーに振ろうとする意識は今すぐ捨てろ! 劇的に飛距離が変わる「究極のビハインド・ザ・ボール」の作り方。
● トップの位置で「左わき」はどこにある? 正しく体重移動するためのセルフチェック法。
● 弾道計測器で判明した、一番飛んで曲がらない「理想の打ち出し角」とロフト選びの正解。
ニセモノのスウィングから脱却し、現代のドライバーの性能を極限まで引き出すプロの技術。あなたの飛距離を覚醒させるレッスンは、後編に続きます。
続きはMyGDへ 後編は有料記事になります
TEXT/Daisei Sugawara
PHOTO/Yasuo Masuda
THANKS/ハイランドセンター
週刊ゴルフダイジェスト2026年5月5日号より


