
プレッシャーを感じながらも完全優勝を果たしたネリー・コルダ(PHOTO/Getty Images)
「大きなリード」がもたらす精神的重圧
5打差の単独首位で最終ラウンドをスタートしたコルダ。誰もが彼女の楽勝を疑わなかったが、本人の内心は全く違っていた。ラウンド後の会見で、彼女は偽らざる本音を吐露している。
「これほど大きなリードを持ってプレーすることは、決して簡単なことではありません。精神的には、これまでで最も過酷な経験の一つでした」
後続の選手たちが「失うものは何もない」とアグレッシブにピンを狙ってくる一方で、首位を走る自分はどうしても守りに入りたくなる。その心理的なジレンマが彼女を苦しめた。
「守備的にプレーしたくなる時もあったけど、守りに入りすぎたくなかった。自分のゲームをしたかったから」
「守りに入りすぎたくないが、ミスもできない」というジレンマを象徴するのが、終盤16番(パー5)での決断だ。普段なら6番や5番アイアンで果敢にグリーンを狙う場面だが、キャディのジェイソンは彼女に「54度のウェッジで刻んで、58度で寄せる」という徹底した安全策を指示した。彼女は会見で「もし首位タイだったら絶対に狙っていた」と語っており、大差のリードを守り抜くためのチームのコントロールがうかがえる。
【動画・約9分】ネリー・コルダ、究極のマネジメント! 16番のティーショットは06:46~。いい位置からでも刻む【LPGA公式YouTube】
Nelly Korda Highlights | The Chevron Championship Rd. 4
www.youtube.com昨年の挫折を乗り越え、自分の「バブル」へ
実際、ラウンド中に短いパットを外した瞬間、彼女は自分自身を疑い始めたという。スコア上は誰も4打差より近づくことはなかったが、彼女の頭の中では、リードが実態以上に小さく感じられていたのだ。しかし、彼女はそこでキャディのジェイソンとともに気持ちを奮い立たせた。
「未勝利に終わった昨年(2025年)のように、あらゆることを考えすぎて自滅するような真似はしたくなかったんです。圧倒的な強さを誇っていたかつてのように、もう一度自分のバブル(世界)に入り込んで、ただゴルフをプレーしようと心に決めたの」
過去の挫折を乗り越え、再び自分の世界へと入り込んだ彼女の集中力は、決して崩れることはなかった。
ミスを受け入れ、次世代に贈る勝利のメッセージ
極限の重圧の中で、なぜ彼女は自分を見失わずに戦い抜くことができたのか。その最大の原動力は、テレビの前で応援している次世代の子供たちへの「伝えたいメッセージ」だった。
「どうしてもこのトロフィーを掲げたかった。なぜなら、家で見ている子供たちに『短いパットを外すようなミスをしても、メジャーで勝てるんだ』ということを教えたかったから」
完璧でなくてもいい。ミスをしても、100パーセントの力でその日に向き合い続ければ、頂点に立つことができる。絶対女王が自らの葛藤と失敗を乗り越えて見せたその姿は、どんな技術論よりも力強いメッセージとしてゴルフファンと子供たちの心に刻まれたはずだ。
彼女は今回の優勝により、ミッキー・ライト、パティ・バーグ、ルイーズ・サグスに次いで、「28歳になる前にメジャー3勝を挙げた」歴史上わずか数人しかいないアメリカ人選手の仲間入りを果たした。
すべての重圧から解放された彼女は、歓喜の中で新会場の池へとダイブした。場所が変わっても受け継がれるメジャーの伝統とともに、ネリー・コルダの新たな伝説が始まっていく予感を見せた一戦だった。
【動画】ネリー・コルダ、人生2度目の池ダイブ!【LPGA公式X】
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