16歳でPGAツアーデビューを果たした思い出の地「マートルビーチ」
ブラウンにとって、マートルビーチは特別な場所だ。
「ここは僕が16歳の時に初めてプロの試合に出場した場所。だから、もはやホームのように感じるんだ」
思い出の地に戻ってきた18歳は、初日から堂々としたプレーを見せていた。
最終日もその強心臓ぶりは健在だった。プレッシャーのかかる最終ラウンドの立ち上がり。出だしの4ホールで4回の1パットを沈め、一気に3アンダーを稼ぎ出すという鮮やかなロケットスタートを切ったのである。得意のパッティングと若さ溢れるアグレッシブな攻めで、プロの猛者たちを次々と抜き去っていく姿は、まさに圧巻の一言だった。
83歳の祖母も応援に。PGAツアーで家族と分かち合う喜び
この日の素晴らしいプレーを後押ししたのは、ロープの外からの温かい声援だった。最終日は「母の日」。会場には、83歳になる祖母を含む彼の家族が応援に駆けつけていたのだ。
実は、この家族の応援の裏には壮絶な背景がある。ブラウンの父親は以前、医師から「骨肉腫で余命6カ月」と宣告されるという絶望的な状況を経験している。しかしその後、鎌状赤血球白血病(回復率80%)であることが判明し、見事に癌を克服したのだ。ブラウンは「父は『死ぬまで一緒にいる(ride or die)』と言って、どこへでも応援に駆けつけてくれる」と語っている。
「競争することも大好きだけれど、家族がフェアウェイを歩きながら僕を見守ってくれるのが何より嬉しい。それこそが、PGAツアーの最高の部分だと思う」
この言葉は、単なる18歳の無邪気な感想ではなく、深い感謝に根ざした非常に感動的なものであることが読者にも伝わるだろう。プロの厳しい世界に身を置きながらも、家族と喜びを分かち合う純粋な心を忘れないブラウン。その爽やかな笑顔は、多くのギャラリーの心を掴んで離さなかった。
迫る特別テンポラリーメンバー入りと、大人顔負けのプロ意識

ブレーズ・ブラウン(右)は24年のツアーデビュー時も予選を通過し、26位タイに入っている。なお、ライアン・ムーアやアダム・シェンクのキャディを務めたことのあるブレット・スウェドバーグ(左)がいまのキャディ(写真/Getty Images)
今回の9位タイという見事な結果により、特筆すべきは、PGAツアーの特別テンポラリーメンバーシップ(暫定シード)獲得まで残りわずか44ポイントに迫ったという事実だ。
シード権や順位を巡るプレッシャーは計り知れないが、当の本人に焦りはない。その驚異的なメンタルの強さを証明する場面が、最終日の17番ホールにあった。トップ10入りを逃すかもしれない痛恨のボギーを叩いたのだ。約1.3メートル(4.5フィート)のパーパットを外し、プレッシャーに押しつぶされてもおかしくない場面だった。しかし本人は「自分が選んだラインにしっかり打てた。頭の中では入っていたけれど、ただカップに落ちなかっただけ。何が起きても満足するつもりだった」と全く動じなかった。
「順位のことは気にせず、自分がコントロールできることに集中している。今はただ、自分がなれる最高の選手になることだけを考えているんだ」
口先だけではなく、本当に結果を手放してプレーに集中している彼の冷静なメンタルが、この17番での事象によって立体的に証明されている。
CJカップへの出場にも期待がかかるが、本人は「今はただ次に予定されているコロンビアでの大会に集中している」と語るなど、しっかりと地に足がついている。さらに、今月(5月)21日に19歳の誕生日を迎えるまだ18歳の若者でありながら、会見では「キャロウェイ、トラビスマシュー、フローキャストといった素晴らしいチーム(スポンサー)が背後にいてくれるからこそ、ゴルフをするのが本当に簡単になる」と、周囲への感謝を忘れない極めてプロフェッショナルな姿勢を見せている。
18歳とは思えない極めて冷静なメンタルと、ゴルフへの純粋な情熱。思い出の地マートルビーチで確かな足跡を残した新星は、シード権獲得という大きな目標に向け、力強く歩みを進めていく。

