今週21日からPGAツアー「ザ・CJカップ バイロン・ネルソン」が開幕を迎える。広大なテキサスの地で繰り広げられるバーディ合戦を前に、PGAツアーの公式データシステム『ShotLink』がある驚くべき事実を弾き出した。過去7年間の大会優勝者の傾向から導き出された極めてシビアな条件で、今大会に出場する147選手全員をふるいにかけた結果、見事にすべての関門を突破し、最後に残った「唯一の優勝候補」が日本の久常涼だというのだ。データが示す彼のポテンシャルと、初優勝への期待を紐解いていく。

なぜ久常だけが残ったのか? 公式が導き出した条件

まず、公式が示している久常が「唯一の優勝候補」の条件は以下の通りだ。
年齢:21歳〜35歳
ツアー出場回数:26回〜326回
FedExCupランク:116位以上(久常は33位)
世界ランク(OWGR):138位以上(久常は60位)
SG: アプローチ:141位以上(久常は37位)
SG: アラウンド・ザ・グリーン:125位以上(久常は68位)
平均バーディ数:122位以上(久常は17位)
ボギー回避率:122位以上(久常は77位)
グリーンを狙うショット(Going for the Green):69位以上(久常は55位)
バーディ・オア・ベター獲得率:29.97%以上(久常は33.09%)
国籍:過去70年間優勝がないイングランド出身ではないこと
PGAツアー勝利数:「未勝利(初優勝)」であること(※本大会は2005年以降、10人もの選手が「ツアー初優勝」を飾っており、すでに優勝経験のあるトップ選手はこの条件で除外された)

底知れぬ「安定感」と「弱点の克服」

世界最高峰の舞台で戦う久常の最大の強みは、その群を抜く安定感にある。彼は現在、今季ツアーで2番目に長い「13大会連続予選通過」を継続中である。さらに今季は、FedExCupランキングのトップ70に自身のキャリア最多となる16週間も滞在しており、常に高いレベルでポイントを稼ぎ続けている。

そして、飛躍的な進化を遂げているのがグリーン上のプレーだ。昨シーズン156位だった「10〜15フィートのパット成功率」が、今シーズンは24位へと急上昇し、実に132ランクも順位を上げている。ツアーで最も神経を使う距離のパットを克服したことが、結果を大きく底上げしているのだ。

コースに完璧にフィットする「フェードボール」戦略

今大会の舞台であるTPCクレイグランチは、パー4・パー5の全14ホールでフェードボール(左から右への軌道)が有利とされている。現代のパワーゴルフにおいて、コースレイアウトに合わせた球筋を打ち分けることは勝敗を大きく左右する。

久常のスタッツを見てみると、今シーズンはティーショットの52%で左から右への軌道を打っていることがわかる。さらに彼は、昨年の同大会でもティーショットの「61%」でフェードボールを選択しており、フェアウェイキープ時のフェードの曲がり幅は平均35フィートと完璧にコントロールされていた。まさにこのコースでフェードを武器に戦った確かな実績があるのだ。彼の持ち球である精度の高いフェードボールはコースの要求に完璧にフィットしており、その戦略的なアドバンテージは計り知れない。

歴史的なバーディ合戦を制する「爆発力」

画像: 公式が「今大会、唯一の優勝候補」と名指しで指名した久常涼(写真は26年トゥルーイスト選手権、撮影/岩本芳弘)

公式が「今大会、唯一の優勝候補」と名指しで指名した久常涼(写真は26年トゥルーイスト選手権、撮影/岩本芳弘)

もちろん、安定しているだけではPGAツアーの頂点には立てない。「ザ・CJカップ バイロン・ネルソン」は、毎年20アンダー以上のスコアが求められる異次元のバーディ合戦となる。事実、昨年の優勝者であるスコッティ・シェフラーは、1983年以降のPGAツアー最少スコアタイ記録となる「通算31アンダー(253)」という驚異的なスコアで優勝している。

この熾烈なバーディ合戦において不可欠となるのが、久常に備わっているもう一つの顔、驚異的な「爆発力」だ。今季の彼の「バーディ・オア・ベター獲得率(バーディ以上を獲る確率)」は24.28%に達し、自身のキャリア最高ペースを記録している。 その爆発力は、今季の「AT&Tペブルビーチ・プロアマ」の第1ラウンドで、首位タイとなる「62(10アンダー)」のビッグスコアを叩き出したことでも証明済みだ。さらに、「WMフェニックス・オープン」の第2ラウンドでは、13番ホールから「バーディ、バーディ、イーグル、バーディ、バーディ」と、一気に6アンダーを稼ぐ猛チャージを見せている。ひとたびゾーンに入れば、誰にも止められないスコアメイクの力を持っているのである。

新生コースで鍵を握る「アプローチ力」

今大会のTPCクレイグランチは、2500万ドル(約40億円)を投じた大規模なコース改修が行われ、グリーンの張り替えやバンカーの再配置により、これまで以上に高い精度が求められるようになった。過去にこの大会を2連覇しているイ・キョンフンも、「グリーンのアンジュレーションが大きくなった。今年はアイアンショットの精度により集中しなければならない」と証言している。

実際、TPCクレイグランチに舞台を移した2021年以降、過去5人の優勝者のうち4人が「SG: アプローチ」でトップ10に入っている。久常の同スタッツは現在ツアー37位と高く、優勝基準をクリアしている。難化したコースだからこそ、彼のアプローチ力が最大限に活きるはずだ。

弱点を克服し、持ち球がコースに完璧にフィットし、さらには異次元のバーディ合戦を勝ち抜く安定感と爆発力を兼ね備えた久常にとって、この新生コースは初優勝を飾るための最高のステージとなるだろう。すべてのデータ条件をクリアした「たった1人の男」が、アメリカの地で歴史的なブレイクスルーを果たす瞬間は、もう目の前まで来ている。


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