日本メジャー第2戦「BMW日本ゴルフツアー選手権 森ビルカップ」の3日目、極限の緊張感が漂う宍戸ヒルズの3番ホール(パー3)で、劇的なホールインワンを達成した香港出身のタイチ・コー(許龍一)。この日「69」をマークし、通算4アンダーの5位タイへと鮮やかに浮上を遂げたアジアの新人王を、激戦直後の練習場で直撃した。手にはホールインワンを演出した6番アイアン、そしてヘッドのウェイトを自らイジり倒したという話題のミニドライバー。25歳の若きトリリンガルが見せたのは、自身で考え、実践しながら作り上げたギア、そして「ゴルフ職人」としての顔だった。

狙いはキャリー187ヤード。「完璧にめくれた」理想の弾道がピンを刺した

画像: 理想の弾道が打てたことを非常に喜んでいたタイチ・コー(撮影/岡沢裕行)

理想の弾道が打てたことを非常に喜んでいたタイチ・コー(撮影/岡沢裕行)

3番ホールは実測200ヤードのタフなパー3だが、タイチ・コーは打ち下ろしや風を計算して「キャリーで187ヤード」を目指してショットに臨んでいた。

選択したのは6番アイアン。少し大きめの番手であったため、スリークォーターショットのようなイメージでライン出しのコントロールショットを放ったという。 ここ2日間、宍戸の硬いグリーンに対してライン出しをすると弾道が低く出ていたが、あの瞬間は全く異なる球筋を見せた。

「あの6番アイアンの場面では、上から打ち込んだ際にキュッと上空で吹け上がってくれる、いわゆる『めくれた弾道』になってくれた。僕の理想とする高い弾道のままピンを真っすぐに刺して、そのままカップに入ってくれました(笑)」と笑顔で振り返る。

大歓声が沸き起こった一打だが、本人はホールインワンそのものよりも、ショットの感触に強い喜びを感じていた。

「もちろんホールインワンも嬉しいですが、実はあの理想の弾道が打てたことのほうが何倍も嬉しいです。ようやく『あれは完璧に打てた』と納得できる1打でした。そこから自分の中に良い流れが来た気がします」

画像: ヒールの鉛を抜き、番手それぞれ異なる位置に貼って調整しているタイチ、クラブはスリクソン「Zxi 7」

ヒールの鉛を抜き、番手それぞれ異なる位置に貼って調整しているタイチ、クラブはスリクソン「Zxi 7」

そのこだわりは、エースを達成した実際の6番アイアンにも表れている。

メーカーがクラブのバランスを整えるために通常入れるヒール側のおもりを、タイチ・コーはすべて抜き取っている。ヒール寄りに重心が来てつかまりすぎてしまうのを徹底的に嫌うため、そのおもりをバックフェイス側に貼り直し、全ての番手を細かく調整している。

「ドライバーはフェード、他はドロー」300Yの飛ばし屋を支えるギア

画像: 【ソール後方】ヒール側13g/トウ側4g、【ソール前方】ヒール側4g/トウ側13g

【ソール後方】ヒール側13g/トウ側4g、【ソール前方】ヒール側4g/トウ側13g

アイアンだけでなく、今週投入されてバッグの中で異彩を放っているのが、宍戸用のセッティングとして多用しているテーラーメイドのミニドライバー「r7 クワッド」だ。

実はこれ、今週キャディを務める水野眞惟智プロ(アジアンツアーなどで旧知の仲)の私物を借りているもの。シャフトも2人とも同じものを使っており、そのままバッグに入れていることからも、水野への絶大な信頼感がうかがえる。

装着されているシャフトにも強い愛着を持っており、「このミニドライバーはめちゃくちゃ気に入っています。シャフトは最近ではもう廃盤になってしまったモデルですが、最高なんです。ドライバーもスプーンもすべて、この『ツアーAD TP』で揃えています」と明かす。

さらに、ヘッドに付いているウェイトを自身で調整し尽くした結果、本来の配置ではなく「ウェイトをクロスさせるように」変則的な位置に固定し、自身のスウィングにアジャストさせている。

【タイチ・コーのストックショット】

ドライバー:290ヤード
ミニドライバー:270ヤード
5番ウッド:242ヤード
4番アイアン:221ヤード
5番アイアン:207ヤード
6番アイアン:195ヤード
7番アイアン:183ヤード
8番アイアン:168ヤード
9番アイアン:155ヤード
PW:143ヤード
50度:130ヤード
54度:115ヤード
58度:106ヤード

画像: 母親が日本人で日本語も堪能なタイチ・コー(撮影/岡沢裕行)

母親が日本人で日本語も堪能なタイチ・コー(撮影/岡沢裕行)

ドライバーの球筋をフェードに限定しているのにも明確な理由がある。

「ジュニア時代のスウィングのクセで、上体が後ろに残ってしまう傾向があるんです。そうなると上からクラブが入ってこず、打ち出し方向やスピン量が安定しないため、ドローだとどうしても出球のラインが揃いにくい。でも、フェードなら上からしっかり打ち込んでいけるので、狙ったラインに綺麗に出球を揃えられるんです。逆に、ドライバー以外のクラブはすべてドローで打ち分けています。常にスウィング改造をしながら試行錯誤の連続です」

かつてのクセと向き合いながら、今もなお進化を求めて挑戦を続けている。

色々と話してくれたタイチ・コーは取材後、「これから練習場行きます!」と足早に夕暮れのドライビングレンジへと消えていった。

ホールインワンの快挙を成し遂げ、5位タイという好位置にいながらも、「まだショットがいまいち」とさらなる高みを見据えている。この貪欲な職人魂が、明日、さらなるシビアさを増す宍戸のサンデーバックナインで、驚異のチャージを生み出すかもしれない。


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