米国ニューヨーク州のシネコックヒルズゴルフクラブで開催される「第126回全米オープン」。今年のマスターズを制したローリー・マキロイが挑むのは、わずか6人(7回)しか達成していない「同一年でのマスターズと全米オープンの制覇」だ。その6人とは、クレイグ・ウッド(1941年)、ベン・ホーガン(1951年、1953年)、アーノルド・パーマー(1960年)、ジャック・ニクラス(1972年)、タイガー・ウッズ(2002年)、そしてジョーダン・スピース(2015年)。現在PGAツアーで「9年連続優勝」という現役最長記録も更新中であり、単なる挑戦者ではなく、真の「歴史的レジェンド」としてこの大会に臨んでいるマキロイは7人目になれるのか。会見から紐解いていこう。

スウィングの「オーナーシップ」と孤高の調整法

数々の栄光を手にしてきたマキロイだが、彼の強さを支える独自の哲学がある。それは、自身のスウィングに対する強いこだわりだ。公式会見で彼は、「自分のゲームとゴルフスウィングに完全なオーナーシップ(主導権)を持ちたい」「誰かにゲームを委ねたくない」と力強く語った。

画像: 公式会見に出席したローリー・マキロイ

公式会見に出席したローリー・マキロイ

現代のツアーでは、プロが常に専属コーチを帯同させてスウィングを微調整するのが一般的だ。しかしマキロイは、不調時に頼るべきは自分自身の感覚であるべきだと考えている。

「調子が悪くなったとき、コーチはコース上で一緒にいてくれるわけではない。自分で自分のパターンを管理する方法を知る必要がある」

自らの感覚を研ぎ澄まし、スウィングの主導権を誰にも渡さない。その職人気質は、メジャー大会における「孤高の調整法」にも表れている。彼は今年の「メモリアルトーナメント by ワークデー」で、メジャー特有の喧騒についてこう苦言を呈している。

「今のメジャー大会は、ロープの内側に『取り巻き』が多すぎるんだ。関係者があふれかえり、進行が信じられないほど遅くなっている。誰もが9ホールをプレーするだけで3時間もかかるという事実を、半ば諦めて受け入れているんだ。だから皆、あちこちから何球もボールを打って時間を潰すしかない」

だからこそ、彼は周囲のサーカス状態に巻き込まれない道を選ぶ。

「朝6時半にティーオフして、他の連中がバックナインを回り始める前の8時半にはハーフを終えるようにしている。とにかく誰よりも前に出ること、それしかないんだ」

画像: 火曜の練習ラウンドは一人で……というわけではなく、仲のいいトミー・フリートウッド、ジャスティン・ローズらと回ったマキロイ

火曜の練習ラウンドは一人で……というわけではなく、仲のいいトミー・フリートウッド、ジャスティン・ローズらと回ったマキロイ

自分のペースと感覚を徹底して守り抜く自己調整能力の高さこそが、彼の圧倒的な安定感に繋がっているのだ。

「罠」に満ちた名門コースと忍耐の戦略

圧倒的な飛距離でコースをねじ伏せる攻撃的なイメージが強いマキロイだが、今週のシネコックヒルズでは全く異なるアプローチを見せるつもりだ。全米オープンという過酷な舞台において、彼が最も強調するのは「忍耐」である。

彼がここまで慎重になるのには理由がある。月曜日の段階でグリーンの速さは「11.5フィート」ほどに達しており、マキロイはコースの脅威をこう予測している。

「木曜日は15〜18m/sの突風が予想されている。グリーンがこれ以上速くなると、11番グリーンなどではボールが止まらなくなってしまうから注意が必要だ」

今年のコースセッティングでは、風向き次第で1番や13番などのホールで一気にピン近くまでボールを運ぶことも可能だ。しかし、彼はその甘い誘惑には決して乗らない。

「グリーン近くまで運べる可能性があっても、深いフェスキュー芝に入れるリスクを冒す価値があるのか? このコースは非常に大きな忍耐を要求し、やってはいけないことをやるように誘惑してくる」

彼が導き出した答えは、シンプルかつ堅実だ。

「ボールをグリーンの中央に乗せ、ピンがどこにあろうとそこからパットでコーナーへ寄せる。それは決して悪い戦略ではない」

画像: シネコックヒルズでの全米OPはピンを狙うのではなく、「グリーン中央に乗せることも悪くない」と話すマキロイ

シネコックヒルズでの全米OPはピンを狙うのではなく、「グリーン中央に乗せることも悪くない」と話すマキロイ

このリスクを徹底して排除する「忍耐」の戦略を精神面で支えているのが、16〜17年にわたり指導を受けているスポーツ心理学者、ボブ・ロテラの存在である。

「彼(ロテラ)は物事を非常にシンプルにし、コースに持っていけるような『一口サイズ』に噛み砕いてくれる。結果に気を取られがちな今週のような試合でも、『これとこれとこれをやれば、結果はついてくる』と、自分がコントロールできることだけに集中させてくれるんだ」

全米オープンという極限のプレッシャーの中で手堅い戦略を貫ける裏には、こうした強固なメンタルコントロールがある。

円熟味を増したスーパースターの戴冠なるか

自らのスウィングを完全に掌握し、コースに潜む甘い罠を冷静に見極める。かつて圧倒的な才能と勢いで世界を席巻した若きスーパースターは今、経験という武器を携え、真に成熟したゴルファーへと進化を遂げた。

コース内の罠だけでなく、コース外の喧騒に対しても、今の彼は「自分がコントロールできること」にのみ集中している。その成熟ぶりは、ニューヨークの熱狂的なファンへの対応にも如実に表れている。

昨年、同州のベスページで開催されたライダーカップでの厳しいヤジを浴びた経験について問われると、彼は完全に達観した大人の余裕を見せた。

「ニューヨークはニューヨークだし、彼らは声を上げるものさ。でもそれは良いことだし、プレーするのに素晴らしい雰囲気だよ。(ヤジが)今の自分の人生を生きるための代償だというなら、僕はそれで構わない」

強風と深いラフが牙を剥くシネコックヒルズで、マキロイは「忍耐」のプレースタイルを最後まで貫き通せるのか。歴史的偉業に挑む円熟の王者が、日曜日の夕方にどんなドラマを見せてくれるのか。我々は今、新たな伝説が誕生する瞬間を心待ちにしている。

写真/USGA


This article is a sponsored article by
''.