メジャーの洗礼とトッププロたちとの夢のような交流
怪物たちが集う全米オープンの練習場は、17歳の少年には夢のような空間だ。幼い頃から憧れていたジョーダン・スピースのすぐ隣でボールを打ち、全米オープンを2度制しているあのブライソン・デシャンボーが、練習の手を止めてわざわざ歩み寄って挨拶をしてくれたという。
プロに混ざってプレーする興奮を語りつつも、彼の素顔は驚くほど等身大で心温まるものだ。
「自分以上に、後ろに立っていた父をはじめ、両親のほうが興奮していたと思います。子供の頃に憧れていた選手の隣で、我が子がボールを打っているのを見ているのだから」
初のメジャーに向けた準備についても、浮足立つことはない。「ここに来られた興奮でやりすぎないこと。友達とあと9ホールプレーしたくても、自制心を持って球数を抑え、コースを見て歩くことに時間を使うようにしています」と、ベテランさながらの冷静な自己管理を実践している。
プロから学んだ「退屈な(boring)ゴルフ」の真髄
そんな若き天才が、プロのトーナメントに出場して悟ったトッププロの「本当の凄さ」がある。

弱冠17歳のアマチュア、マイルズ・ラッセルがシネコックヒルズでどういうプレーをみせるのか注目だ
ラッセルは単なる勢いのあるアマチュアではない。2024年のコーンフェリーツアー「LECOMサンコースト・クラシック」において、15歳にして同ツアー史上最年少の予選通過記録を打ち立て、さらに今季のPGAツアー「プエルトリコオープン」でも50位タイに入っている。すでにプロの世界で揉まれてきた彼に対する「プロから何を学んだか?」という問いへの答えは、一般的なアマチュアゴルファーのゴルフ観をも揺さぶる非常に興味深いものだった。
「プロたちがいかに『退屈(boring)』なプレーをするかということです」
圧倒的な飛距離や派手なスーパーショットではなく、彼が目にしたのは、ただ淡々とフェアウェイとグリーンをとらえ続ける、ある種平凡にすら見えるプレーだった。
「何も特別なことはしていないように見えるのに、ラウンドが終わってスコアを見ると『65』を叩き出している。それが一番の驚きでした」
一見地味に見える「退屈なゴルフ」こそが、究極の強さである。その真髄に触れたラッセルは、自身の課題についても「パッティングの悪い週の底上げをして、一貫性を保ちたい」と語り、派手さよりも堅実な安定感を求めている。
シネコックヒルズでの新たな挑戦と、17歳の素顔
フロリダ州立大学への進学を控える17歳は、難関シネコックヒルズの罠もすでに見抜いている。
「ここのグリーンはタフです。ショートサイドなど、絶対に乗せたくない場所がある。だからこそ、チップとパット、そしてフェアウェイキープが重要になる」と的確に分析する。
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x.comその綿密なコース戦略の裏には、心強い「情報源」の存在がある。彼のコーチは、前回(2018年)のシネコックヒルズ開催の全米オープンでキャディを務めていたのだ。ラッセルは会見で「彼(コーチ)が僕の情報源であり、経験そのもの。彼が僕を助け、この場所を案内してくれる」と語り、17歳の初挑戦を支える周到な準備の様子を覗かせた。
派手さよりも堅実さを求める彼の成熟ぶりは、彼がゴルフを愛する理由にも表れている。
「誰か他の人に頼る必要がなく、すべてが自分次第の個人競技であること。そして、平和なところです。今週は観客も音も多くてあまり平和ではないけれど、一人で9ホールをプレーしに行く時が、このゲームで一番好きな時間です」
大舞台の喧騒の中でも自分を見失わない17歳。「AJGAの試合に出るのと同じように、ただ良いゴルフをして、自分のゲームが世界最高の選手たちとどう重なるかを見たい」と語気を強める。
純粋な挑戦心と、トッププロから学んだ「退屈なゴルフ」という真の教訓を胸に。若き才能が、世界最高峰のサバイバルテストへと静かに歩みを進める。
写真/USGA
