「週刊ゴルフダイジェスト」や「みんなのゴルフダイジェスト」で障害者ゴルフの取材記事を執筆してきたベテラン編集者が、日本だけでなく世界にアンテナを巡らせ、障害者ゴルフのさまざまな情報を紹介する連載。今回は片マヒ障害オープンについて。

倒れる前からの片手打ち特訓

今年も世界で唯一の片麻痺ゴルファーの冠が付いた試合、「第26回片マヒ障害オープンゴルフ選手権」が、6月15日に山梨の小淵沢CCにて開催されました。

今回、参戦した片麻痺ゴルファーはいつもより多い19名。その中で初出場者は3名でした。

最初のラウンド後、「キャディさんにナイスショットと言われても『全然当たってないんだけどな』と思っていました」とニコニコしながら話をしてくれたのは石塚博光さん。ゴルフ歴約40年、脳出血で倒れる前は神奈川県の県アマを目指すくらい“本気モード”だったと言います。

画像: クラス分けのためのテストを行う“クラス分け委員”の中山侑哉氏。今回の「重度障害」部門は10メートル歩行で18秒以上かかる場合は該当(他にも基準あり)

クラス分けのためのテストを行う“クラス分け委員”の中山侑哉氏。今回の「重度障害」部門は10メートル歩行で18秒以上かかる場合は該当(他にも基準あり)

「倒れて今年でもう27年です。倒れてからも『ゴルフをやりたい』と言ったら、病院の方から『もう両手では打てないから、やるなら片手で』と言われました。でも、倒れる前にも右手、左手、それぞれ片手だけで練習はしていたので、何とかなったなという思いはあります」

“片手打ち”は上達に必要な多くの意味ある練習法。それに取り組んでいたとは、その本気ぶりがうかがえます。前向きに取り組むことが素晴らしいですが、最初は全然ボールに当たらなかったと言います。

「体の機能が上手く使えなくて……。でも、頑張ってやっていくうちに、いろいろな障害者ゴルフの大会があることを知り参加するようになりました」

画像: 明るい色のウェアがコースで映える石塚博光さん。常に向上心を忘れない「本気モード」が感じられるスウィングです! 感覚とデータを融合し、ここからまたレベルアップを目指します

明るい色のウェアがコースで映える石塚博光さん。常に向上心を忘れない「本気モード」が感じられるスウィングです! 感覚とデータを融合し、ここからまたレベルアップを目指します

毎年、若洲ゴルフリンクスで開催されている「フィランスロピー障がい者ゴルフ大会」(日本プロゴルフ協会主催)には10回以上参加、別の障害者ゴルフ団体でも活動していたそう。

「DGAもこの大会も存在は知っていたんですけど、今回初めて。これからはもっと出たいと思います。ゴルフ、好きですね。歩くのでリハビリにもいいですし、もう“極める”ことがない僕にとっても、ゴルフならばまだ先があります。そして、仕事以外の人とのつながりができる、特に障害を持ってから仕事に関係ない、異業種の方とも親しくなれました。ゴルフのつながりはすごいです」

病気になってからのベストスコアは94、飛距離は170ヤードでしたが、最近体調を崩し体重が10㎏減。今は、飛距離を元に戻し、安定したプレーをすることを目指して地元の駅近のインドアでレッスンにも励んでいます。

「トラックマンの公認ライセンスを持ったプロに習っています。以前は自分の飛んでいく球を見て練習していましたが、今はデータも見るようになりました。フェースのどこに当たっているか、クラブ軌道などが出るのでわかりやすいんです。目標はやっぱり片麻痺の大会でトップになること。友人やプロも応援してくれています。次は日本障害者ゴルフオープンにチャレンジしたいですね」

テニスの感覚で片手打ち挑戦

ラウンド後、「今回はいい勉強になりました。楽しかったし、いろいろな方と話もできてよかったです」と静かに語るのは福島啓次さん。20歳で始めたゴルフにハマり、“バリバリ”にやっていました。しかし、4年前の42歳のとき、脳出血にり患します。

「それでゴルフは一度やめました。でも2、3年経ち、リハビリがてらまたやろうかなと思い再開しました。でも最初はなかなか……。障害が残っているので、疲れることも多かった。それでも少しずつやっていくと面白いほうが上回って……。やっぱり好きだったんですね」

画像: 「結局ゴルフが好きで再会してしまった」という福島啓次さん。今回の大会では、選手たちの技と工夫も間近で見られたと言います。またお仕事仲間からのゴルフの誘いも増えそうですね

「結局ゴルフが好きで再会してしまった」という福島啓次さん。今回の大会では、選手たちの技と工夫も間近で見られたと言います。またお仕事仲間からのゴルフの誘いも増えそうですね

これこそ、ゴルフの魔力なのでしょうか。

もともとテニスもやっていた福島さん、右手1本で打つ感覚は「何となく一緒なので」と、片手でボールを飛ばします。

「体幹が悪いので、振った後にフラフラッとしたりしますけれど。訪問リハビリに来てもらっているので、その方と練習場に行ったりしています。以前のベストは87でしたけど、今はまだ120くらい。片手でも240ヤード飛ばしたり、80以下で回る方もいるのを見てすごいなあと。でも僕も再開してまだ1年。ハードルは高いですけど、頑張っていきたいですね」

建設業で働くので、お付き合いのゴルフの声もたくさんかかるそう。これからまた、仕事仲間との楽しいゴルフも増えそうです。本大会は月に1度のレッスン会(東京開催)に参加したことで存在を知り、初参戦を決めたとのこと。

画像: もう一人の初参加者、小濱氏文さん(左)は鹿児島から参加し2位に! 同郷の末廣信吾さん(右)の記事を見て本大会に参加したそう。グリップを太く巻いて工夫して真っすぐ飛ばしていました。今度話を聞かせてくださいね!

もう一人の初参加者、小濱氏文さん(左)は鹿児島から参加し2位に! 同郷の末廣信吾さん(右)の記事を見て本大会に参加したそう。グリップを太く巻いて工夫して真っすぐ飛ばしていました。今度話を聞かせてくださいね!

「試合は、なかなか普段にない感じなので楽しかったです。かみさんと小さい子がいるので理解を得ながら、これからも行ける範囲でどんどん参加したいと思います」

目標があるから18ホール歩ける

さて、“ベテラン”片麻痺ゴルファーの廣田和実さんは、今回は前方のティー(ピンから100~150ヤード)を使い“誰もが楽しめるゴルフ”を目指した「重度障害の部」で参加。体調を崩していましたが、この大会に向けて研鑽し、1年ぶりのラウンドに臨みました。

画像: スタッフにも必ず声をかけてくれるいつもジェントルマンな廣田和実さんと、ゴルフの腕前がグングン上がっている典子さん。仲良しご夫婦は美しい山々の景色も堪能

スタッフにも必ず声をかけてくれるいつもジェントルマンな廣田和実さんと、ゴルフの腕前がグングン上がっている典子さん。仲良しご夫婦は美しい山々の景色も堪能

ラウンド前は「とりあえず歩きます(笑)。目標はハーフ」と言っていた廣田さんですが、結局18ホール完走。「楽しかったです。この部門があってよかった」と嬉しそう。

奥様の典子さんによると「ずっと調子が悪くて、この大会に参加すると決めて息子と一度練習に行ったときは全然当たらなかったんです。でも、今日はすごく当たっていました。これに出ることが生活の中心になっていて。今日は生き生きしていてよかったです」。

試合に挑戦することで、目標ができ仲間との交流が生まれる。これこそ、片麻痺ゴルファーにとっての心身のリハビリテーションとなるものだと思います。

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