初日の好スタートから一転、メジャーの過酷なセッティングが容赦なく選手たちの体力と精神を削っていく。「KPMG全米女子プロゴルフ選手権」の2日目、日本の古江彩佳と渋野日向子は予期せぬ苦戦を強いられていた。初日を「69(3アンダー)」の8位タイで終えた古江は、2日目の前半も落ち着いたプレーでアンダーパーを記録して折り返した。しかし後半にスコアを落とし、この日は「71」。トータル4アンダーの11位タイでフィニッシュした。一方、初日を「71(1アンダー)」の27位タイで発進した渋野も、終わってみれば「73」とスコアを落とし、トータルイーブンパーの43位タイへと後退した。順位とスコアが示す以上に、彼女たちの口から語られたのは、見えない「疲労」との生々しい戦いだった。

古江彩佳が強いられた「すごい耐えのゴルフ」とそれを裏付けるデータ

精度の高いショットを武器とする古江だが、この日は目に見えない疲労感が彼女のスウィングを狂わせていた。ラウンド後のU-NEXTゴルフのインタビューで、古江は正直な心情を吐露している。

「後半になるにつれて、ちょっと体力面で持たなかったところが結構ショット面でばらつきがあった分、もっとすごい耐えのゴルフだったかなと思います」

実は、朝から少し体調面での「しんどさ」を感じていたという。過酷なセッティングの中で疲労が蓄積し、「感覚としては無いですけど、うまくバランスが保たれていなかったのかな」と、自身でも気づかないうちにスウィングのバランスが崩れていくメジャー特有の恐ろしさを語った。

しかし、そのまま崩れ去らないのが古江の強さだ。ショットが乱れる中でも、「バンカーショットも簡単ではないと思うんですけど、しっかり寄せながら楽にパーを取っていけた」と、グリーン周りで懸命にパーを拾い続けた。

彼女のこの証言は、2日目の公式スタッツに見事に表れている。データによると、この日の彼女はグリーンを狙うショットの貢献度(SG: Approach)が「-0.414」とマイナスに落ち込んでいた一方で、グリーン周りのアプローチ(SG: Around the Green)が「+0.391」、パッティング(SG: Putting)に至ってはフィールド上位クラスとなる12位の「+2.148」というプラス数値を叩き出している。

疲労で狂ったショットを、卓越したショートゲームとパットで完全にカバーしていた事実がデータにも明確に示されているのだ。極限の疲労の中で見せた、まさに「すごい耐えのゴルフ」でリズムを作り、上位戦線に踏みとどまった。

渋野日向子を狂わせた「ロケットスタート」からの暗転

同じく後半に苦しんだ渋野日向子。彼女の歯車を狂わせたのは、グリーン上のたった1つのミスだった。

彼女は出だしの1番、2番、4番ホールで立て続けにバーディを奪うという、誰もが波に乗れると確信するような完璧なスタートを切っていた。本人も「スタートがすごく良かったので、良い流れで行きたかった」と語るほどの最高の滑り出しを見せていたにもかかわらず、続く5番ホールの3パットがすべてを狂わせた。

「途中で3パットしてからなかなかパッティングが入らなくなってしまって、そこからショットも悪い流れに繋がってしまった」

ゴルフというスポーツの恐ろしさを凝縮したかのような負の連鎖。渋野はそれを「自分がよくやるパターンの感じだなとは思いますね」と苦笑いしながら自己分析した。1つのパットのミスが疑心暗鬼を生み、ショットの精度をも奪っていく。

焦りとプレッシャーの中で、「グリーンに乗せることもなかなか難しい状態で、すごく疲れました」と語る彼女の表情には、メジャーの壁に跳ね返された疲労困憊の様子がリアルに浮かんでいた。

【動画】渋野日向子、2日目ラウンド後のインタビュー【U-NEXTゴルフ公式X】

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選手を精神的に追い詰める「ヘーゼルティンのバックナイン」

両選手ともに後半(バックナイン)で苦しんでいるが、これは単なる体力低下だけでなく、コース自体の異常な難易度が関係している。

公式のコーススタッツによれば、この2日目に最も選手を苦しめた難易度トップ4のホールのうち、実に3つ(16番:1位、12番:2位、10番:4位)が後半に集中していた。特に後半の入り口である10番ホールが難易度4位として立ちはだかり、さらに12番ホール(難易度2位)に至っては、154人がプレーしてバーディを奪えたのがわずか6人(約3.9%)という過酷なセッティングになっていたのだ。

わずかな疲労やスウィングのズレを絶対に見逃してくれない。これぞメジャーという牙を剥くヘーゼルティンの後半ホールが、体力と精神を限界まですり減らしていくのである。

基本に立ち返り、フレッシュな状態で週末へ

画像: 渋野日向子は43位タイ、古江彩佳は11位タイで週末を迎える(写真は渋野が26年富士フイルム・スタジオアリス、古江が26年ブリヂストンレディス)

渋野日向子は43位タイ、古江彩佳は11位タイで週末を迎える(写真は渋野が26年富士フイルム・スタジオアリス、古江が26年ブリヂストンレディス)

容赦なく体力と精神を奪っていくヘーゼルティンの舞台。しかし、戦いはまだ半分が終わったばかりだ。苦しい1日を終えた2人は、週末に向けてそれぞれ「原点回帰」と「回復」を誓った。

満身創痍の渋野は、「まずはショットというか体をしっかり休めて、明日にいいフレッシュな状態で臨めるようにしたい」と心身のリカバリーを最優先事項に挙げた。一方、耐え抜いた古江は、「しっかりティーショットでフェアウェイをキープしたところで、うまく狙っていけたら」と基本戦略を再確認している。

機械のように完璧なプレーを続けるのではなく、悩み、疲れ、それでも必死に耐え抜く。彼女たちが見せる人間味あふれるリアルな姿こそが、メジャー大会の本当の凄みであり、魅力なのかもしれない。フレッシュな状態を取り戻した彼女たちの、週末の反撃に期待したい。

写真/大澤進二


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