「長谷部祐とギア問答!」は、国内外大手3メーカーで、誰もが知る有名クラブの企画開発を20年超やってきたスペシャリストの長谷部祐氏に、クラブに関する疑問を投げかけ、今何が起こっているのか? その真相を根掘り葉掘り聞き出すものです。クラブ開発の裏側では、こんなことが考えられているようです……。

プロギアDUOとピンでは「やさしさ」の質が違う

GD 2026年上期、最後に満を持して登場したのがプロギアの「RS DUO(デュオ)ドライバー」です。かつてカーボンコンポジットとして大ヒットした名器のリバイバルということもあり、大きな話題を呼んでいます。
 
以前、コースで試打テストを行いましたが、今回は練習場でじっくり打ち込んでもらいました。今回「RS DUO MAX(マックス)」を打ってみて、どのような印象を持たれましたか?

長谷部 コース試打(連載#72)から2カ月以上が経ち、YouTubeやネット上でもプロギア「DUO」の情報が随分と溢れてきました。その多くが、コースで体感した「初速の速さ」に注目してレビューしている印象です。
 
今回、改めて練習場で打ち込んでみたのですが、測定器で数値を測ったわけではないものの、弾道の見た目の速さはコース試打同様に圧倒的でした。それに加えて、今回は「芯が広い(スイートスポットが広い)」という点を強く実感しました。

GD DUOのヘッド構造は、最深部に薄肉チタン、その手前に特殊弾性接着剤とナイロンメッシュのインナーを挟み、その上(アウター)にカーボンフェースを重ねた複合型(コンポジット)になっているのが特徴です。この「芯の広さ」は、カーボンの効果なのか、それとも薄肉チタンによるものなのか、打感はどう感じられましたか?

長谷部 正直なところ、感覚だけでどちらの影響かを正確に見極めるのは難しいです。ただ、一般的なチタンフェースの特性として、全体的な反発性能を上げようとすると、どうしても反発の高い部分と低い部分が出てしまいます。メーカーがすべてを明かしているわけではないので想像の域を出ませんが、DUOは反発が高くなりすぎる中央部分をカーボンでうまく抑えつつ、周辺部分の反発性能を維持しているのではないでしょうか。
 
チタンの偏肉構造だけでは達成できない領域をカーボンとナイロンメッシュと樹脂の複合構造によってクリアし、「高反発エリアの広さ」や独自の広範なスイートスポットを実現しているのだと思います。カーボンの細かな活かし方は、我々外部の人間には計り知れない技術が詰まっているのでしょうね。

GD プロギア独自の複合フェース技術というわけですが、カーボンフェースといえばテーラーメイドが先駆者です。テーラーメイドとはアプローチの仕方が違うのでしょうか?

長谷部 明らかに違うと感じます。ミズノの「JPX」などとも異なるのかもしれませんが、テーラーメイドは「カーボンという素材を使いながら、いかにチタンの特性に近づけるか」を追求していると思います。チタンと同等の性能を出しつつ、比重の軽さを生かした余剰重量のメリットを狙っている。
 
つまり、アプローチの次元がまったく違うんです。テーラーメイドはモデルチェンジごとに正常進化を続け、ロフト調整やフェースのラウンド(曲率)を変えたりして最適解を追求していますが、プロギアの「DUO」は突如として現れたまったく新しい構造なので、まだ底が知れない面白さがあります。

GD 実際に打った印象はいかがですか? 独特といえば独特ですが、意外と普通に打ててしまう感覚もあります。

長谷部 違和感は非常に少ないです。「カーボンコンポジットだな」というのは、言われれば分かりますし打感でも伝わりますが、すぐに慣れるレベルです。むしろ特徴的なのは、芯を外したミスショットの感覚が手に伝わりにくい点。どこに当たっても打感が真ん中に当たったときと非常に近いため、逆に「今、芯を食ったかどうか」の気持ちよさは少し犠牲になっているかもしれません。
 
しかし、「とにかく真っすぐ飛ぶ、初速も速い、だけどフェースのどこに当たったかはわからない」という、アマチュアにとっては大きなメリットになる仕上がりになっています。

GD 現在、多くのゴルファーが手にしているドライバーといえば「ピン(PING)」ですが、ピンの“やさしさ”と、DUOの“やさしさ”は、少し毛色が違う気がします。

長谷部 そうですね。ピンは一貫してシャローフェース(上下に薄い形状)設計を貫いているため、実は上下の打点ブレに対してはシビアな面もあります。ただ、フェースのどこに当たっても芯に近い位置になるため、左右のブレが非常に少ない。ここには意外と多くのゴルファーが気づいていません。
 
一方でDUOは、フェース形状そのものからやさしく作ろうとしているため、狙っているアプローチが違います。ピンのやさしさの空気感と、DUOの「芯を外したときのやさしさ」は、明らかに異なりますね。

GD 以前(連載#74)「D-1グランプリ2026」の分析では、現在のドライバーは「タイトリスト」と「ピン」の2大系統に分かれているという話がありました。それを踏まえると、DUOはどちら寄りになるのでしょうか?

長谷部 どちらのユーザーも取り込めるポテンシャルがあると思います。というのも、DUOの形状設計はピンのように極端な形に寄せていません。
 
今回打ったのは「RS DUO MAX」ですが、「RS DUO F」や「RS DUO」のようなコアモデルになれば、タイトリスト寄りの性能になります。「どっちつかず」という意味ではなく、どちらの系統のゴルファーにも受け入れられる柔軟なラインナップになっていると感じます。

GD 初速の速さはもちろんですが、スピン量や球筋など、打点以外の部分はいかがですか?

長谷部 スピンは若干多めの印象です。ただ、これはロフト角の影響や、フェース面の溝(ミーリング)の処理による部分も大きいです。またフェースのラウンド形状もスピン量に影響しますから、一概に重心設計だけで判断はできません。
 
いずれにせよ、「初速性能」を最優先に設計されていることは間違いないので、そこはウェイト調整や適切なロフト選び、しっかりとしたフィッティングを行うことで、理想的な打ち出し角とスピン量を導き出せるはずです。

GD 2026年は各社のフェーステクノロジーが大きく進化しました。ツアーモデルが「タイトリスト」、アマチュアに支持されているのが「ピン」だとしたら、このDUOは「第3勢力」になり得るでしょうか?

長谷部 この複合(コンポジット)フェースという新しい設計のアプローチは、キャロウェイやミズノも含めて、今後各メーカーが本格的にトライしていけば、かつてフルチタンからカーボンコンポジットへ移行したときのような、パラダイムシフトが起きる可能性を秘めています。
 
先送りになったボールのルール変更の対応のひとつとして、フェースのコンポジット構造が進化すれば、そこから新しい評価を得るブランドが台頭してくる可能性は十分にありますね。

GD フェースの進化が市場の勢力図を塗り替えるかもしれない。ただ、新しい構造が定着するには、性能以外の「感性」の部分も重要になりそうですね。

長谷部 おっしゃる通りで、一概に「性能が良いからこれ一択になる」と言えないのは、ゴルファーの「フィーリング(慣れ)」があるからです。心地よい打音を求める層が確実に存在します。
 
だからこそ、テーラーメイドも必死にカーボンの音をチタンの心地よい高音に近づけようとしていますし、コンポジットフェースであっても心地よい響きは不可欠になるでしょう。

GD これまでのクラブ進化の歴史を振り返ると、何十年もの間「打倒ゼクシオ」が掲げられてきましたが、最近はそのターゲットが「打倒ピン」にすり替わっている印象です。タイトリストとピンが両極にある中で、今回の複合系フェース(DUOなど)は「打倒ピン」の急先鋒にあるようにも見えますが、いかがでしょうか?

長谷部 ミズノの「JPX」などは、まさにその「打倒ピン」を明確に狙ったモデルと言えます。テーラーメイドもピンの牙城を崩すために、やさしいモデルや軽量ヘッドを出しています。プロギアが今後も「初速」という独自の強みをさらに突き詰めていけば、「タイトリストでもピンでもない、独自の第3勢力」としての地位を確立できるかもしれません。

GD そうなると、「ピンのシェアを奪う」という単純な対立構造でもなくなってきそうですね。

長谷部 現代のゴルファーのニーズは非常に細分化されています。かつての「打倒ゼクシオ」のような分かりやすい対立にはならないでしょう。むしろ、これからのゴルフ界の主役となる30代、40代のゴルファーが「ピンの次に何を選ぶか」と考えたときに、その受け皿となる新しい選択肢(ブランド)が求められているのだと思います。

GD 先日、練習場で3人組のゴルファーを見かけたのですが、全員がピンのドライバーを使っていました。40代前半くらいの方々でしたが、全員が同じではなく、新旧モデルが混ざっていて、「あーだこーだ」と楽しんでいました。それを見て、「ピンが作り上げた新しいゴルフの景色だな」と感じました。

長谷部 そうですね。そこには「スリーブ(カチャカチャ)の互換性」の問題も大きく関わっています。プロギアも新しいスリーブに変えて2年目(2回目)になりますが、やはり過去のシャフト資産が使えなくなるのはユーザーにとって痛手です。
 
その点、ピンやテーラーメイドは長い間同じスリーブ形状を維持してくれているので、じわじわとファンが積み重なっていく強みがあります。アマチュア同士でも、ラウンド中に「ちょっとシャフト換えて打たせて」と気軽に試せますからね。

GD 道具としての使い勝手の良さやコミュニティでの楽しみやすさも、ピンの強さですね。そう考えると、ユーザー側のクラブに対する価値観自体も変化している気がします。

長谷部 本当に変わりましたね。かつてゼクシオが全盛だった時代は、企業の役職者層がステータスや高級感を求めて購入するケースが多かったですが、今は随分カジュアルになりました。
 
ピンが支持される理由は、ステータス性よりも「自分たちが純粋に楽しむための道具」として捉えられているからです。ユーザー自身が「自分に合うものを見つける」というスタンスに変わったため、ヒット商品の生まれ方や選び方のロジック自体が、昔とは大きく変わっています。

GD ピンを使っている人たちは情報感度が高く、お互いのギアをよく見ている印象があります。一方で、そうしたトレンドとは一線を画した「独自性」を求めるゴルファーも確実にいて、彼らがピン以外のクラブを探すときに、今回のDUOのような存在が選ばれるわけですね。

長谷部 その通りです。あえてスコアで「100以上」と「100未満」に分けて考えてみると、90前後を行き来しているような、非常にゴルフ熱が高く、ボリュームゾーンでもあるゴルファーたちが何を選ぶかです。
 
彼らが「フェースのどこに当たってもやさしく真っすぐ飛んでくれればいい。飛距離は二の次」という理由でピンを選んでいるのだとしたら、この市場のパイは非常に大きいです。競技志向のゴルファーや「D-1グランプリ」を熱心に見ている層とは異なる一般アマチュアの厚い層がピンを支えています。

GD クラブを分析するとどうしても「モノ(性能)」としての評価になりがちですが、ユーザーからすれば、最終的には「自分の腕前(ミス)をどれだけカバーしてくれるか」という比較になります。

長谷部 まさにそこです。世間で「飛ぶ」と騒がれていても、実際に打ってアマチュアがそれを実感できないケースは多々あります。むしろ「曲がらないこと」が結果的に一番飛距離をロスしない理由になる。
 
先日、ある調査でドライバーを選ぶ理由を聞いてみると、寛容性が約40%で飛びの30%より多い結果となっていました。ただ、メーカー側としては昔から「曲がらない」というフレーズは地味で宣伝文句になりにくいと言われてきました。しかし、機能として本当に大切なのは、「曲がらない(ミスに強い)」性能であり、それを理解して作られていることがどう伝わるかが重要です。
 
今回のDUOの「フェースのどこに当たっても初速が落ちない」という特性は、一見地味ですが実戦では非常に強力です。ラウンド中、一打一打のミスを感じさせないのは、ミスを気にせずポジティブにラウンドできるとも言えます。今はまだ見過ごされているかもしれませんが、今後アマチュアの間で最も評価される決定的なポイントになる可能性を秘めていると思います。

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