米国男子ツアー「3Mオープン」の2日目、世界中のゴルフファンの視線は、ひとつのペアリングに注がれていた。日本のエース・松山英樹と、世界ランキング1位に君臨するスコッティ・シェフラーの同組対決である。この日のTPCツインシティズ(7431ヤード・パー71)は、午後になるにつれて牙を剥いた。ラウンド後のシェフラーが「午後になって風が強くなり、コースがより難しくなった」と振り返ったように、選手たちはタフな気象条件の中でのスコアメイクを要求されることとなった。しかし、同じ強風の中でプレーしながらも、両者のラウンド内容は極めて対照的なものとなる。データが如実に物語る、最高峰のコースマネジメントと技術のぶつかり合いを紐解いていきたい。

松山英樹、データが証明する“鉄壁の小技”で54人抜き

画像: 2日目にしっかり伸ばし、スコッティ・シェフラーと同じ13位タイで週末に進む松山英樹(写真/Getty Images)

2日目にしっかり伸ばし、スコッティ・シェフラーと同じ13位タイで週末に進む松山英樹(写真/Getty Images)

初日「70」で出遅れていた松山英樹は、この2日目に圧巻のプレーを披露した。6バーディ、ノーボギーの「65」をマークし、一気に54人抜きを果たして通算7アンダーの13位タイへと急浮上。見事に週末への切符を手にした。

強風下でのこの猛チャージを根底で支えたのは、劇的に改善したアイアンショットと、鉄壁のグリーン周りの技術である。PGAツアーの公式スタッツ「Strokes Gained(ストロークス・ゲインド)」を見ると、その凄みがよくわかる。初日はグリーンを狙うショットの指標(SG: Approach to Green)が「-2.477」で全体134位と極度の不振に陥っていたが、わずか一晩でこれを修正。2日目は「2.137」を記録し、全体17位へと劇的な向上を見せたのだ。

さらに驚異的だったのが、グリーン周りの技術(SG: Around The Green)である。この日は「1.878」で全体8位を記録。パーオンを逃したホールは4つあったが、そのすべてでパーを拾う「スクランブリング100%(4/4)」を達成した。強風の中でいかにグリーンを外そうとも、絶妙なアプローチで凌ぎ切り、ボギーを一つも叩かずにラウンドを完遂したのである。感情や感覚の揺れ動きではなく、圧倒的なデータが松山の勝負強さと技術の高さを証明している。

世界1位を狂わせた「風」と「不運なバウンド」

一方、初日「65」と好発進を決めていた世界1位のシェフラーは、風の罠に苦しめられた。4バーディを奪ったものの、1ボギー、1ダブルボギーを叩き、「70」とスコアを伸ばしきれず。猛追してきた松山と同じ、通算7アンダーの13位タイへと後退した。

松山の鉄壁の小技とは対照的に、この日のシェフラーはまさにその「グリーン周り」で大苦戦を強いられていた。今季、あらゆるスタッツで1位に君臨する彼だが、この2日間を終えた時点での「SG: Around The Green」は「-1.979」で全体133位と極度の不振に陥っている。松山がグリーンを外しても100%パーを拾ったのに対し、世界1位がグリーン周りでボロを出したという対比は、松山のショートゲームがいかにハイレベルであったかをさらに浮き彫りにしている。

シェフラーを苛立たせたのは、バックナインでのミスと不運だ。彼は後半のプレーについて問われた際、「12番(パー5)も少し雑なプレー(sloppy)をしてしまった」と振り返っている。本来ならスコアを伸ばしたいパー5での取りこぼしが、彼のリズムを微妙に狂わせたのだ。

その焦りが伏線となったのか、14番(パー4)では手痛いダブルボギーを叩く。囲み取材では「スウィングが悪く、風に落とされてボールが池に入ってしまった」と自身のミスと風の影響を分析した。また、17番(パー3)のボギーについても「正しい場所に外したのに、不運なバウンド(bad break)があった」と語り、風と不運に対する隠しきれないフラストレーションを覗かせた。世界No.1プレーヤーであっても、僅かなジャッジの狂いやリズムの乱れが命取りになる。それが強風の吹くPGAツアーのセッティングの恐ろしさである。

歴史的「59」を追うサバイバルと、日本勢の現状

同組で明暗が分かれる形となった両者だが、戦いはまだ半分を終えたばかりだ。現在の首位とは7打差がついているが、その首位を走るマイケル・キムは、この日PGAツアー史上16回目(15人目)、そして大会史上最少記録となる「59(12アンダー)」という歴史的ビッグスコアを叩き出している。風が吹く中で12個のバーディを量産した別次元の首位の背中を、最高峰の2人がどう猛追するのか。

シェフラーは過去に「2日目を終えて7打差以上」のビハインドから3度(2022年WMフェニックスオープン、同年アーノルド・パーマー招待、2025年プロコア選手権)も逆転優勝を果たしている恐るべき実績を持つ。ボギーフリーで絶好調の波に乗る松山とともに、彼らが週末のリーダーボードをどう駆け上がっていくのか、エキサイティングなサバイバルへの期待は高まるばかりだ。

なお、予選通過ラインが3アンダーというハイレベルな伸ばし合いの中、日本勢として出場していた中島啓太(通算2アンダー)、金谷拓実(イーブンパー)、平田憲聖(通算8オーバー)の3名は、残念ながら無念の予選落ちとなった。過酷なセッティングの中で得た経験を糧に、次戦以降の彼らの奮起にも期待したい。


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