圧倒的な「グリーン周り」の強さ
守るべき時はアプローチで凌ぎ、攻めるべき時は一気に牙を剥く。そのギアチェンジこそが王者の証である。そのハイライトは、劇的な上がり2ホールに集約されている。池が絡み、多くの選手がプレッシャーに苦しむ終盤の17番(パー3)で鮮やかなバーディを奪うと、続く最終18番(パー5)では見事なチップインイーグルフィニッシュ。極限状態の中で、わずか2ホールで3つもスコアを伸ばしてのけた。最後まで攻めの姿勢を貫いた松山はこの日「64」をマークし、通算20アンダーの3位タイへと見事に食い込んでみせた。
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x.comこの激しいバーディ合戦の中で松山を牽引し、上位へと押し上げた最大の武器は、疑う余地なく「アプローチ技術」であった。PGAツアーが弾き出す精緻な公式スタッツ(データ)が、その“魔法”のようなショートゲームの凄みを雄弁に物語っている。
特筆すべきは、グリーン周りのスコア貢献度を示す「SG: Around The Green」だ。松山は大会4日間トータルで、このスタッツにおいて「8.170」という驚異的な数値を叩き出し、堂々のフィールド全体1位に君臨した。グリーンを外した状況から、他の選手よりも8打以上もスコアを稼ぎ出した計算になる。
さらに、猛チャージを見せた最終日単独のデータを見ても、同スタッツは「3.173」で全体2位と極めて高い水準をキープしていた。絶体絶命のピンチを易々とパーセーブで凌ぎ、あるいはチップインを狙うほどの精度でチャンスへと変え続けた彼の技術は、まさに世界最高峰の芸術品であった。
リカバリーの神髄
そのアプローチ技術がいかにスコアメイクの要(かなめ)となっていたかは、「スクランブリング(リカバリー率)」のデータにも如実に表れている。
最終日の松山のパーオン率は「72.22%(13/18)」と、ビッグスコアを出すための条件としてはやや伸び悩んでいた。5つのホールでグリーンを外し、アプローチでの寄せを余儀なくされる展開だった。しかし、ここからが松山の真骨頂である。

最終18番ホールのギャラリーの声援に応える松山英樹
グリーンを外した際にパー、あるいはそれより良いスコアで上がる「スクランブリング」の確率は、最終日に「80.00%(4/5)」を記録した。つまり、グリーンを外しても5回中4回は確実にスコアを落とさずに切り抜けたのだ。ショットの調子が完璧ではなくとも、世界一とも称されるショートゲームの引き出しの多さと繊細なタッチでスコアをまとめ上げる。これぞまさに、トッププロのリカバリーの神髄である。
次戦へ向けた確かな手応え
振り返ってみれば、初日を終えた時点で松山は「70」と出遅れ、リーダーボードの下位に沈んでいた。しかし、そこから「65-65-64」と3日連続でビッグスコアを並べ、怒涛の巻き返しで3位タイフィニッシュを果たしたその安定感と修正力は称賛に値する。
極限まで研ぎ澄まされたグリーン周りの冴えと、バックナインで見せた爆発力は、本格化するプレーオフシリーズや次戦に向けて非常にポジティブな材料となるはずだ。
さらに、この3位タイという好成績により、松山はフェデックスカップポイントを大きく上積みした。選ばれしトップ30の選手だけが出場できる最終戦「ツアー選手権」への「現役最多となる13回目の出場」に向けて、足場を築き上げたのだ。
データが完全に証明した“魔法のアプローチ”を武器に、日本のエースがさらなる大舞台でどんな熱狂を見せてくれるのか。私たちの期待は高まるばかりだ。
写真/Getty Images

