「優勝を決定づけたショットは……ただダフっただけ」
優勝を決定づける最終ホールのティーショット。他のホールでは完璧なドライブを見せていた彼のボールは、この日一番飛距離が出ていなかった。今週の「ロケットクラシック」開幕前の会見で、そのショットの意図について問われると、コイブンは若者らしい屈託のない笑顔を見せてこう告白した。
「正直に言うと、ただダフっただけなんです」
「木曜日と金曜日、あのホールではあまり良い結果が出ていなくて。状況も状況でしたし、少し緊張していて、右にだけは絶対に打ちたくなかったんです」
テレビ中継で派手なディボット跡が映っていたことまで自ら笑いのネタにする愛嬌の良さ。しかし、緊張でダフりながらも、結果的にボールを安全なフェアウェイに置き、きっちりとパーで凌ぎ切って優勝を手にするあたりに、彼の底知れぬ強心臓が潜んでいる。
【動画・約9分半】「確かに気にしている……」J・コイブン、18番Hのダフリティーショットは05:30~【PGAツアー公式YouTube】
21-year-old Jackson Koivun claims FIRST PGA TOUR win! | Round 4 Highlights | 3M Open | 2026
www.youtube.com最小限のチームで挑む現代の若者
多くのトッププロが、スウィングコーチやパッティングコーチ、専属トレーナー、栄養士などを引き連れ、大所帯のチームを帯同させてツアーを戦うのが現代のPGAツアーの常識だ。しかし、コイブンの体制は拍子抜けするほどシンプルである。
「昔からのスウィングコーチはずっとカリフォルニアにいて、僕らはFaceTime(ビデオ通話)でやり取りをしているんです。それが僕らには合っています。あとはキャディと、両親が交代で来てくれるくらいですね」
スマートフォン一つで遠く離れたコーチと繋がり、身軽に全米を飛び回る。既存の枠組みや常識にとらわれない、まさに現代のZ世代らしい軽やかなエピソードだ。
先輩プロも羨む“恐れ知らず”の完成度
こうした若手たちの台頭に、今年の全米オープン覇者であり、世界ランキングトップ10に君臨するウィンダム・クラークも舌を巻いている。
「自分が出たての頃は少し緊張してしまって、うまくいかなかった。でも、今の若い選手たちは全く恐れを知らない。最初から『勝てる』と思ってツアーに出てきて、実際に勝っているんだから驚きだよ」と、彼らのメンタルの完成度に驚嘆する。
さらにクラークは、「PGAツアーユニバーシティのプログラムは本当に素晴らしい。自分の時にもあればよかったと少し嫉妬するよ」と語る。大学ゴルフで最高峰の競争を経験し、そのままプロの世界へシームレスに移行できるシステムが、コイブンのような「完成された若手」を生み出す大きな要因となっているのだ。
18年ぶりの偉業へ。次なる目標はプレーオフ進出
前週の優勝により、コイブンのフェデックスカップランキングは194位から一気に70位までジャンプアップした。これは、シーズン終盤のプレーオフシリーズ進出ライン(上位70名)のまさに「当落線(バブル)」である。
「70位にいるのは良いことでもあり悪いことでもある。でも、プレーオフ進出を自らの手で勝ち取るチャンスを得られたのは最高に素晴らしいことだね」と、コイブンは力強く意気込む。

愛嬌たっぷりのジャクソン・コイブンはまだ21歳。この後、快進撃があるのか、注目だ!
愛嬌たっぷりの笑顔の裏に鋼のメンタルを隠し持つ怪物ルーキー。もし今週のロケットクラシックでも優勝を果たすことになれば、「初優勝直後の出場試合で連続優勝」という、ゴルフ界で18年間誰も成し遂げていない大記録となる。
自らの力で道を切り開く彼が、今週再び歴史的な旋風を巻き起こすのか。その一挙手一投足から、当分は目が離せそうにない。
写真/Getty Images

