ロースコアを生み出した「午前のグリーン」
彼が叩き出したスコアは、大会のコースレコードタイとなる驚異の「61(9アンダー)」。この「61」という数字は、彼のPGAツアーキャリア全404ラウンドにおいて、2024年「トラベラーズ選手権」で記録した「59」に次ぐ、自身2番目に良いビッグスコアである。
初日は72位タイ(とはいえ「69」で1アンダーだったが)と出遅れていたヤングだったが、この日の爆発で見事に挽回し、一気に通算10アンダーの首位タイへと浮上した。ラウンド後の会見で彼は、「ほぼすべてのホールで10フィート(約3メートル)のバーディパットを打っていたような気がする」と充実の表情で振り返った。ショットが次々とピンに絡む完璧な内容だったが、このロースコアを生み出した背景には、選手自身の卓越した技術だけでなく、コースが持つ“時間帯の魔法”が大きく関係していた。
ヤング自身が猛チャージの理由として明確に指摘したのが、グリーンの状態である。今大会では、午前中にスタートした選手がビッグスコアを叩き出す傾向が顕著に表れており、彼もその恩恵を最大限に活かした一人だ。
「朝のグリーンは本当に美しいんだ。少しの湿気があれば、砂も凹凸もなく完璧な状態だ」
総額1610万ドルをかけて全面改修され、張り替えられたばかりの真新しいグリーンは、朝露を含む午前中であればボールの転がりが極めてスムーズで、狙ったラインに正確に打ち出すことができる。
しかし、ヤングは続けてこう語る。
「1日の後半になり遅い時間帯になると、最終的にはスパイクマークなどで荒れて(chewed up)しまうんだ」
午後になり乾燥し、何十人もの選手が踏み荒らした後では、パッティングの難易度は劇的に跳ね上がる。つまり、プレーする時間帯がスコアに直結しているという残酷な事実があるのだ。ヤングが「61」を叩き出せたのは、ピンを刺す完璧なショットを、無傷の“朝のグリーン”で確実に沈めきったからこそと言える。
ゴルフの不条理と向き合うメンタリティ

「61」をマークしたキャメロン・ヤングは68ランクアップし、1位タイで週末を迎える(写真は26年トゥルーイスト選手権)
この日、神がかったプレーを披露したヤングだが、彼のメンタリティは驚くほどフラットで達観している。PGAツアー屈指の実力を持ちながらも、進歩を感じていてもなかなか結果(勝利)に結びつかない時期の苦悩について、彼は包み隠さず吐露した。
「『なぜうまくいかないのか?』と悩むこと。それがゴルフの難しさだ」
しかし、ひとたび歯車が噛み合うと、ゴルフは全く別の顔を見せる。
「うまくいっている時は、まるで二度と悪いプレーはしないと錯覚してしまうんだ。ゴルフとはそういうふうに行ったり来たりするもの」
良いスコアが出たからといって浮かれることもなく、不調に陥っても絶望しない。
「良くなる時もあれば、必ず悪くなる時も来る。だから、どちらの状況が来ても準備をしておくだけだよ」
常に次に来る波に備えるというこの冷静で達観したメンタリティこそが、彼がトップレベルで安定した成績を残し続けられる真の理由である。
データが示す「高い優勝確率」
現在世界ランキング3位に君臨するヤングは、今大会で予選を通過したことにより、これで21試合連続予選通過という圧倒的な安定感を証明した。ちなみに、いま連続予選通過記録を持っているのは松山英樹で今大会で30試合に達した。
さらに、公式データが彼の週末の優位性を強く後押ししている。ヤングが36ホール終了時点で首位(または首位タイ)に立つのは今回がキャリアで4度目となるが、そのうち過去2回(2025年ウィンダム選手権、2026年キャデラック選手権)で見事に優勝を飾っているのだ。
午前中の恩恵を最大限に活かして首位に浮上し、過去3回のチャンスのうち2回を勝利に繋げており、勝率約67%という心強いデータを味方につけたヤング。しかし、決勝ラウンドではティータイムが遅くなり、より荒れたタフなコンディションが彼を待ち受ける。“時間帯の魔法”が解けた週末のサバイバルで、冷静沈着なヤングがどのようなプレーを見せ、優勝カップを手にするのか。期待感は最高潮に達している。
写真/岩本芳弘
