「週刊ゴルフダイジェスト」や「みんなのゴルフダイジェスト」で障害者ゴルフの取材記事を執筆してきたベテラン編集者が、日本だけでなく世界にアンテナを巡らせ、障害者ゴルフのさまざまな情報を紹介する連載。今回は、日本代表6名の今大会にかける熱い思いを聞いた。

8月7日~15日、スウェーデン(バルセバックリゾート)で開催される第15回世界デフゴルフ選手権大会に、日本選手18名(一般男子8名、一般女子5名、シニア男子3名、シニア女子2名)が参戦します。代表予選を勝ち抜いた精鋭たちに、出発前の意気込みをメールにて回答いただきました。

画像: 一般男子:左から、松島勲さん、米山優さん、川嵜晁生さん、前島博之さん、岩崎善徳さん、熊野岳之さん、袖山哲朗さん(その他、中島正行さん)

一般男子:左から、松島勲さん、米山優さん、川嵜晁生さん、前島博之さん、岩崎善徳さん、熊野岳之さん、袖山哲朗さん(その他、中島正行さん)

環境を変え、スウィングも刷新して挑む袖山哲朗さんの決意

まずは、日本デフゴルフ協会事務局長でもある袖山哲朗さん(38歳、HC2.9、ベストスコア67、ゴルフ歴29年)。生まれつきの感音性難聴ですが、父に連れられて打ちっぱなしに訪れたことでゴルフと出合い、ジュニア時代から数々の大会で活躍してきました。

「初めてボールがクラブに当たった瞬間の“気持ちよさ”に魅了され、あの感覚がゴルフを始めるきっかけとなりました。今では人生の大きな軸となっています。ゴルフは努力が結果につながる喜びと、自分自身の成長を感じさせてくれる大切な存在です」

会社員として、また事務局長兼選手として多忙な日々を送ってきましたが、2025年11月の東京デフリンピックで思うような結果が出せず、より競技に集中できる環境を選びました。

「さらに上を目指すため、今年2月に株式会社システムハウスR&Cへ障害者アスリート雇用として転職しました。環境を整えたうえで、大学時代から取り組んでいるマイクオースチン法の習得と精度向上を目指し、妻からスウィングチェックやSNSでの情報提供など多くのアドバイスを受けながら、スウィング改造に取り組んできました。
 
また、社会人になってから長く使用してきたキャッシュインパターから、約15年ぶりにONSA 00100(音叉パター)に変更。さらに、TGF(トータルゴルフフィットネス)でパッティングカウンセリングを受け、ルーティンの一部を見直すなどプレースタイルの刷新にも挑戦しています。今年の世界大会では、まず2018年以来となるベスト8入り、そして入賞を目標に全力で臨みます」

生活の糧でありパートナー! メダルを狙う岩崎善徳さん

同じく“アスリート社員”として世界に挑む岩崎善徳さん(43歳、HC0、ベストスコア65、ゴルフ歴30年)も、生まれつきの感音性難聴ですが、13歳の頃に父に連れられて練習場に行ったのがゴルフを始めたきっかけだそうです。

「ゴルフに真剣に向き合うなかで、特に精神面で大きな成長を感じています。また、ゴルフを通じてかけがえのない仲間が増えたこと、アスリート社員(三建設備工業株式会社・障害者アスリート社員)としてゴルフに関わるトレーニングをすることが生活のモチベーションになっています。私にとってゴルフは仕事でもあり、人生を豊かにするパートナーでもあります」

今大会に向けて、体作りから再スタートしたとのこと。

「さらにギアの調整、そして前回大会での課題を踏まえて技術向上に取り組んできました。目標は、個人戦・団体戦ともにメダルを獲得することです」

初代表の最年少! 川嵜晁生さんが世界大会にかける思い

代表のなかで最も若手となる19歳の川嵜晁生(かわさき・あきお)さん(HC+1、ベストスコア67、ゴルフ歴10年)は、先天性の聴覚障害があり、1歳のときから補聴器を装用しています。

「中学生の頃から少しずつ救急車のサイレンやバイクの音、人の声などを聞き分けることができるようになってきましたが、会話の内容までは聞き取ることができません。普段は手話や筆談、スマートフォンで文字を入力して相手に見せるなどの方法でコミュニケーションを取っています」

ゴルフは父の影響で始め、学生時代はジュニアの大会に数多く出場したそうです。

「練習を重ねるなかで少しずつ上達する楽しさを感じてきました。ゴルフは今では生活の一部になっています。自分を成長させてくれる大切な存在であり、努力を積み重ねることで結果につながることを教えてくれたスポーツです」

今年の4月から社会人となり、仕事とゴルフを両立しながら世界大会に向けて練習に励んできました。

「限られた時間のなかでも日々の練習を大切にし、一打、一打に集中できるよう準備を続けています。日本代表として初めて世界大会に出場できることを大変光栄に思い、このような貴重な機会をいただけたことに感謝しています。大会では世界中の選手との交流を楽しみながら、自分らしいプレーで最後まで全力を尽くしたいと思います」

誇れる母を目指して! 10キロ減量で挑む小林真樹子さん

女子シニアの部に出場する小林真樹子さん(50歳、HC13、ベストスコア83、ゴルフ歴10年)は、15歳(中学3年生)のときに突発性難聴を患い、両耳の聴力を失いました。

「父がシングルプレーヤー、姉がツアープロというゴルフ一家に育ち、幼少期からゴルフは常に身近な存在でした」という環境のなか、40歳になって満を持して始めたゴルフ。

「私にとってゴルフは、自分の限界に何度も挑ませてくれる最高の“挑戦の場”です」

今回は、その最高の挑戦である世界大会を勝ち抜くため、仕事(株式会社野村総合研究所)と両立しながら準備に取り組んできました。

「まずは10キロの減量を敢行し、5日間連続でラウンドできる徹底的な体力作りを行いました。また、技術面の練習だけでなく、普段は使う機会が少ない手話の勉強にも励み、国内外の選手たちと深く交流するための準備を進めてきました。これまで積み重ねてきた努力のすべてを世界大会の舞台で発揮し、全力でプレーします。そして、挑戦し続ける背中を子どもたちに見せ、“誇れるお母さん”になりたいです。目標は10位以内入賞!」

画像: シニア女子:左から松島京子さん、小林真樹子さん

シニア女子:左から松島京子さん、小林真樹子さん

卓球から転身! 初出場の松島京子さんが描く理想のゴルフ

同じく女子シニアの部に参戦する松島京子さん(50歳、HC9.4、ベストスコア79、ゴルフ歴9年)。生まれつきの感音性難聴ですが、ご主人の影響で40代になってゴルフを始めたとのこと。

「私も一緒にゴルフをやってみたいなあと思ったのがきっかけです。今までは卓球選手として活躍していたので、ゴルフではチャレンジすることや仲間と一緒に楽しめることが一番幸せだと思っています」

世界大会には初出場。会社員として働きながらの挑戦で、持てる力をすべて出して戦う意気込みです。

「初めてなのでどんなレベルなのかわかりませんが、今まで練習を重ねてきたことや悔しい気持ちを乗り越えて、よい結果を出せるように全力で戦ってきます。ドライバーで200ヤードを飛ばせたらいいですね(笑)」

主将としてチームを牽引。親子で挑む前島博之さんの挑戦

2025年の東京デフリンピックでは、個人戦7位、男女ミックス戦8位という日本選手最上位の成績を収めた前島博之さん(38歳、HC+0.5、ベストスコア63、ゴルフ歴30年)は、鳥取県立鳥取ろう学校の教員でもあります。生まれつきの感音性難聴で、普段は手話や筆談などを活用しながら生活しているとのこと。ゴルフ競技は、デフリンピックでも活躍した陸上競技を引退後、新たな挑戦として始めました。

「競技自体は30歳を過ぎて挑戦し始めました。最初は競技の難しさに苦労しましたが、練習を重ねるたびに上達を実感できることに魅力を感じました。ゴルフは自分自身と向き合い、成長し続けられるスポーツです。また、デフゴルフを通じて国内外の仲間と交流できることも大きな魅力であり、自分の世界を広げてくれた大切な存在です」

本大会は、初の“親子参加”。父・和雄さん(70歳、ゴルフ歴40年以上)は、シニアの部に出場します。今大会に向けて、デフリンピックでの経験を糧に、さらに上位進出を目指してショットの精度やアプローチ、パッティングなどスコアメイクに重点を置いた練習を重ねてきました。

画像: シニア男子:左から、前島和雄さん、野尻房男さん(東京デフリンピック日本代表監督)、渕暢介さん

シニア男子:左から、前島和雄さん、野尻房男さん(東京デフリンピック日本代表監督)、渕暢介さん

「今年は日本代表キャプテンを務めます。個人戦や男子団体戦でよい成績を目指すことはもちろん、チーム全体を盛り上げ、一人ひとりが持っている力を十分に発揮できる雰囲気づくりにも努めたいと考えています。日本代表が一丸となって戦い、チーム全員で納得のいく結果を残せるよう、キャプテンとしての責任を果たしたいと思います。また、応援してくださる皆さまへの感謝の気持ちを胸に、一打一打を大切に最後まで全力でプレーしてきます」

直接試合を目にすることはできませんが、日本代表選手の熱い想いを受け取り、遠く北欧の地へエールを送ろうではありませんか!

ファイト、ニッポン代表!

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