【明】松山英樹:数字が証明する「ショットメーカー」の真骨頂とアプローチの魔法
初日、松山英樹は1イーグル、5バーディ、2ボギーの5アンダー「65」をマークし、11位タイという絶好のスタートを切った。31試合連続の予選通過をほぼ確実なものにする盤石のプレーだったが、その安定感を支えていたのは、データが明確に示している「ショット精度の高さ」だ。
初日の松山のスタッツを見ると、ティーショットの正確性を示す「フェアウェイキープ率」は78.57%(11/14)で全体16位タイ。さらに、グリーンを狙うショットの貢献度を示す「SG: Approach to Green」は「2.126」で全体15位。その結果、「パーオン率」は83.33%(15/18)で全体18位タイと、ショットに関する主要データがいずれも上位にランクインしている。
さらに、セッジフィールドCCのようにグリーンを外した際の難易度が高いコースでこそ、松山の“魔法”とも称されるアプローチ技術が最大のセーフティネットとなる。
松山はグリーン周りのスコア貢献度(SG: Around the Green)において、過去3シーズン連続でツアーのトップ10(2024年1位、2025年5位、2026年現在8位)を維持している、PGAツアー全体で唯一の選手なのだ。この日も同スタッツで「0.900(全体23位)」と高い水準をキープ。キレのあるアイアンショットに加え、万が一グリーンを外しても難なくパーを拾える圧倒的なショートゲームの安心感があるからこそ、松山はピンをデッドに狙う攻めのゴルフを貫くことができる。
この日「73フィート8インチ(約22.4メートル)」というパット総距離が決して長くはない(全体72位)ことからも、ショットとアプローチでピンに絡めてスコアを作っていたことが分かる。松山本来の凄みが存分に発揮された1日だった。
【暗】久常涼:難コースの罠と、大逆転に必要な「絶対条件」
一方、22試合連続の予選通過を目指す久常涼にとっては、非常に苦しい初日となった。3バーディを奪うも、2ボギー、2ダブルボギーとスコアを落とし、3オーバーの「73」で133位タイと大きく出遅れてしまったのだ。
苦戦の最大の要因は、松山とは対照的に「ショットの不調」にあった。
セッジフィールドCCは、ひとたびティーショットを外してラフに入れると、極めてタフなペナルティが待ち受けるコース特性を持つ。昨シーズンのPGAツアー公式データによると、このコースのラフからのリカバリー(スクランブリング)率はわずか42.49%。これは全米オープン開催地となったオークモントCC等に次ぎ、ツアー全体で3番目に高い難易度を記録している。
初日の久常は、ティーショットのスコア貢献度(SG: Off The Tee)が「-1.964(全体140位)」、フェアウェイキープ率も42.86%(全体129位タイ)と大きく低迷。ツアー屈指の深さを誇るセッジフィールドのラフに捕まり続けたことがアイアンショットのキレを奪い、痛恨のダブルボギーへと繋がってしまったのだ。グリーンを狙うスコア貢献度(SG: Approach to Green)も「-2.216(全体136位)」と苦戦を物語っている。
ホールバイホールのデータを見ると、その苦しい展開がより生々しく伝わってくる。後半の13番(パー4)で痛恨のダブルボギーを叩いた直後、14番(パー4)で意地のバーディを奪いはしたものの、続く15番(パー5)で再びダブルボギー。出入りの激しい展開となり、悪い流れを断ち切れないままホールアウトを迎えることとなった。
崖っぷちに立たされた久常だが、2日目に大逆転で予選通過を果たすための明確なフォーカスポイントは、初日に低迷したアイアンショット(SG: Approach to Green)の完全復活にある。
実はセッジフィールドCCにおける過去の優勝者データ(2016年以降)を紐解くと、歴代覇者が獲得した全スコア貢献度(Strokes Gained)の実に41.53%が、このアイアンショットによって稼ぎ出されたものなのだ。さらに、歴代優勝者の平均パーオン率(GIR)は、フィールド平均の73.10%を遥かに凌駕する83.61%という驚異的な高さを記録している。
初日、アプローチの貢献度(SG: Around The Green)では全体37位(0.598)と粘りを見せている久常。2日目にカットラインへ滑り込むためには、ピンに絡める高精度のアイアンショットを取り戻し、いかに多くのバーディチャンスを作れるかが絶対条件となる。
記録更新を懸けた2日目へ

最終日最終組でこの場面が見たい(写真は26年ソニーオープン・イン・ハワイ)
記録更新に向けて余裕の足取りを見せる松山英樹と、記録ストップの危機に立たされた久常涼。データは残酷なまでに、初日の2人の明暗を浮き彫りにしている。
しかし、ゴルフは何が起こるか分からない。久常もショットの感覚さえ取り戻せば、一気に巻き返す爆発力は十分に持ち合わせている。
松山がこのまま上位争いを演じるのか。そして久常が背水の陣から猛チャージを見せ、見事なカムバックで連続予選通過記録を死守するのか。PGAツアーの過酷なサバイバルレースの中で、日本人選手たちが紡ぎ出す「記録」を巡るヒリヒリとした戦いから、まだまだ目が離せない。
撮影/岩本芳弘
