当落線上の若武者が放った「意外すぎる本音」とドライバーの不運
ホールアウトした時点での彼のポイントランキング予測は、まさにボーダーラインちょうどの「70位」。後続の選手たちのスコア次第で自身の運命が天国か地獄かへと変わる、胃の痛くなるような状況だった。
当然、ラウンド後の会見では「自分の順位がどうなるか、リーダーボードの動きを気にして見守るか?」という質問が飛ぶ。しかし、この若き実力者の口から飛び出したのは、周囲を拍子抜けさせる意外すぎる本音だった。
「いや、全く見ないね。正直、全然気にしていないよ」
カスティヨはあっけらかんと笑い、さらにこう続けた。
「もしプレーオフに出られなくても、僕は完全にファイン(大丈夫)なんだ。だって、それは家に帰って休めるということを意味するからね。今年は本当にたくさんゴルフをした。精神的にも肉体的にも限界で、とにかく休みが必要なんだよ」

エースドライバーが破損してバックナインでは一度もドライバーを使用しなかったと話すリッキー・カスティヨ
実はカスティヨ、この勝負の最終日の朝に「エースドライバーが破損してしまい、おかしな球が出る」という絶体絶命のハプニングに見舞われていた。そのためバックナインでは一度もドライバーを使えず、3番ウッドなどを駆使して必死に「69」で耐え抜いていたのだ。
他のトッププロたちが命を削るようにポイントを争い、ドライバー破損の危機に青ざめる場面で、PGAツアー昇格2年目の彼は連戦による疲労困憊を包み隠さず赤裸々に打ち明けてみせた。
コイブンとの対比、そしてプレッシャーを無効化するZ世代の「釣りに行きたい」
「もちろん、最終的にプレーオフに進めれば素晴らしいことだ。でも、ダメならダメで全然OKだよ」
カスティヨの言葉はどこまでも飄々としている。そこには、「何が何でも生き残ってやる」というような悲壮感や焦燥感は一切ない。
同じくボーダーラインの瀬戸際(70位)で激闘を繰り広げていた21歳の怪物ジャクソン・コイブンが、会見で「僕は順位表をめちゃくちゃ見るタイプ。15番、16番、17番、18番のすべてにリーダーボードがあるから、自分がどうすべきかずっと見ていた。自分のゴルフができなくて、神経が擦り切れるような重圧で感情が高ぶったよ」と悲壮感を漂わせていたのとは見事なまでに対照的だ。
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x.comさらにカスティヨは、もしプレーオフ進出を逃した場合の、彼なりの究極のリフレッシュプランまで明かしてくれた。
「もし落ちたら、家に帰って釣りに行くよ。最高だね。どちらに転んだとしても、僕はハッピーさ」
プレッシャーに押し潰されそうになりながらボードを見つめるライバルを横目に、エリートフィールドで戦うか、家に帰ってのんびり釣り糸を垂らすかを天秤にかける。極限のサバイバルレースの真っただ中とは思えないこのドライでポジティブなメンタルこそ、計り知れない重圧を無効化するZ世代特有の強さなのかもしれない。
華やかなPGAツアーの裏側にある「等身大のリアル」と最高にユーモラスな結末
世界最高峰のPGAツアーは、華やかな夢の舞台であると同時に、毎週のように広大な国土を移動し、常に最高の結果を求められる底知れぬ過酷さを秘めている。
「今年は良い瞬間もあったし、去年よりは確実に良いプレーができている。ゴルフっていうのは、毎年少しずつ良くなっていればそれでいいんだよ。去年の今頃と比べたら良い位置にいるんだから、何も悲観することはないさ」
自身の現在地をどこまでも冷静に見つめるカスティヨ。従来の勝利至上主義や「歯を食いしばって耐え抜く」といった美学とは一線を画す等身大のプロゴルファーの姿。それは、決してやる気がないわけではなく、過酷な日常の中で自身の心と体を守るための、現代のアスリートが持つ新しく健全な価値観を私たちに教えてくれている。
そして、運命の全選手ホールアウト。
最終結果、スティーブン・フィスクが圏外へと押し出される中、カスティヨは見事に「トップ70(66位→68位に)」の圏内を踏みとどまり、土壇場でプレーオフ進出を決めてみせた。
……ということは、そう、彼が楽しみにしていた「家に帰って釣りに行く」という完璧なバカンス計画は強制キャンセル。悲壮感ゼロの若武者は、疲労困憊の体のまま、翌週から始まるプレーオフ第1戦の開催地・メンフィスへと向かわざるを得なくなったのだ。
「釣りはお預け」という最高にユーモラスでハッピーな悲鳴を胸に、リッキー・カスティヨの熱く冷徹で、少しだけタフなサバイバルはまだまだ続いていく。
写真/Getty Images
