19回目のプレーオフ進出。記録が裏付ける「鉄人の圧倒的一貫性」
まず、ローズには他の追随を許さない驚異的なスタッツが存在する。2007年のフェデックスカップ創設以来、プレーオフの舞台で「アンダーパーで回ったラウンド数」が通算「124ラウンド」に達しており、これはローリー・マキロイ(123ラウンド)やダスティン・ジョンソン(111ラウンド)を抑えてツアー歴代単独1位の記録だ。
さらに、彼が昨年この大会で2度目のプレーオフ制覇を果たすまでに要した期間は、なんと「5075日」(2011年BMW選手権以来)。これはタイガー・ウッズの3297日を遥かに上回る、フェデックスカップ史上最も長い優勝間隔である。つまり、スタッツ的にいえば、「圧倒的な一貫性」と「不屈の忍耐力」が、彼がトッププロであり続けられる理由だということがわかる。
限界説に逆らうローズの「逆張り」のモチベーション
今大会のトップ70のフィールドにおいて、ローズはアダム・スコット(46歳)に次いで2番目の年長者である(といっても、誕生日が14日しか違わない同い年だ)。多くの同世代がレギュラーツアーのシード権を失っていく中で、彼のモチベーションの源泉はどこにあるのだろうか。
開幕前の公式会見で、ローズは力強い言葉を放った。
「ただ人数合わせのためだけにツアーに残り、シニアツアー(PGAツアー・チャンピオンズ)のお呼びがかかるのを待つようなことには、全く興味がない。私にとって重要なのは、自分自身をプッシュしてエリートであり続け、トップレベルでプレーし続けることなんだ」
さらに彼は、ベテランに必ずつきまとう“限界説”すらも自らの燃料に変えている。
「この年齢になれば成績が落ちていくべきだ、という世間のナラティブ(思い込み)があるだろう? 私はそのトレンドに逆らうという挑戦を楽しんでいるんだ。それが私にとって、とてつもなく大きなモチベーションになっている」
その「限界突破」の姿勢を世界に見せつけたのが、まさに昨年の今大会だった。最終日の残り5ホールの時点で首位と3打差という絶望的な位置に配されながら、そこから怒濤の4アンダーを奪取。ストロークス・ゲインド(SG: Total/貢献度を示す指標)で驚異の「+3.84」を記録してプレーオフへ滑り込み、奇跡の大逆転劇を演じてみせたのである。
生き残るための「徹底した準備」とミニドライバーの投入
限界説を跳ね除ける強靭なメンタリティだけでなく、生き残るための「泥臭い準備」こそがローズの真骨頂だ。
大会の舞台となるテネシー州メンフィスのTPCサウスウィンドは、毎年うだるような猛暑に見舞われるうえ、ツアー屈指の深さを誇る凶悪なバミューダ芝のラフが選手たちを苦しめる。ローズは今週、この難コースに対抗するため、飛距離よりもコントロールを重視した「ミニドライバー」を急遽バッグに投入。見栄を捨て、勝つための最適解を導き出す徹底ぶりを見せている。
さらに、46歳の肉体を過酷なコンディションからいかに守るかについて問われると、長年の経験から導き出されたリアルな極意を明かした。
「水分補給はもちろんだが、重要なのは火曜、水曜の段階から良い習慣を作っておくことだ。コースに着いてから『よし、水をたくさん飲もう』では遅いんだよ。一度遅れをとると、そのリカバリーは本当に難しいからね」
合理的な猛暑対策にも躊躇がない。
「今年はパラソル(日傘)を使うことを検討しているよ。傘の下は摂氏で11度近くも涼しいからね。これまで使ったことはなかったけれど、週末に向けて気温が38度近くまで上がるなら、間違いなく活用するよ」
連覇への挑戦と「生涯の記憶」

20回目を迎えるプレーオフシリーズ。そのうち19回に出場しているジャスティン・ローズ(写真は26年キャデラック選手権)
トップレベルを維持するための、途方もない自己管理と努力。それを彼に強いているのは、プロゴルファーとしての純粋な野心に他ならない。
「家族や友人と過ごす大切な時間を犠牲にしてまでツアーで戦い続けるのは、最高峰の舞台でしか味わえない、一生の記憶に残るような瞬間を刻み続けたいからだ。もしそれが叶わない(ただ出場しているだけになる)なら、何のために愛する家族との時間を犠牲にしているのか、自分でもここにいる意味を見失ってしまうだろう」
ジェイソン・デイの敗退が象徴するように、過去の栄光や名前の大きさだけでは1年も生き残れないのが、PGAツアーの残酷な現実である。
そんなシビアな世界で、46歳のジャスティン・ローズは今週も「通算124ラウンドのアンダーパー」という鉄人の安定感とミニドライバーを手に、年齢という限界説をあざ笑うかのようにディフェンディングチャンピオンのプライドを懸けてティーイングエリアに立つ。
写真/岩本芳弘
