複数ボギーを叩いての「61」と、完全無欠のスタッツ
驚くべきことに、シェフラーはこの日のラウンドで2つのボギーを叩いている。PGAツアーの公式データ(ShotLinkが導入された2003年以降)によれば、1ラウンドで複数のボギーを叩きながら「61以下」のスコアを出したのは、彼が史上9人目という極めてレアなケースだ。
ボギーを叩けば、通常は流れが途切れてしまうものだ。しかし、彼にはそれが当てはまらない。8番でボギーを叩いた直後の10番ですぐさまバーディを奪い返し、12番でボギーを叩いた後も13番で再びバーディを奪取した。「ボギーを打っても、すぐにバウンスバックしてモメンタム(流れ)を保つことができた」と本人が会見で語った通り、ミスを引きずらない圧倒的な切り替えの早さが歴史的なスコアを生み出した。
さらに恐ろしいのが、この日の内容の「質」だ。本来は異次元のショット力で圧倒し、パッティングに苦しむ(SG: Puttingがマイナスになる)ことも少なくないシェフラーだが、この日は完全にゾーンに入っていた。
グリーンを狙うショットの貢献度(SG: Approach to Green)が「+3.479」で全体1位。そしてパッティングの貢献度(SG: Putting)も「+3.868」で全体1位を記録。18ホール中、実に「13ホールで1パット(13 one-putts)」を沈めるという、まさに隙のない完全無欠のゴルフでコースを完全に制圧したのだ。
ライバルたちのリアルな心理。「達観」のアバーグと「挑戦」のフリートウッド
これほどまでに完成された強者を前に、同業のトッププロたちは何を思うのか。リーダーボードの上位で彼を追うライバルたちの言葉からは、PGAツアーの過酷な現実と、彼らなりの闘い方が見えてくる。
通算7アンダーの4位につける若き天才、ラドビッグ・アバーグは、シェフラーのプレーについて半ば“達観”したような心理を吐露した。
「彼が手を抜くことはない。僕らは皆、彼が常にこういうプレーをするだろうと期待(覚悟)してしまっているんだ。それは彼にとっては少し不公平な見方かもしれないけれど、彼自身がこれまでのプレーで築き上げてきたものだからね」
一方で、通算6アンダーの5位タイから追うトミー・フリートウッドは、諦めることなく己の足元を冷静に見つめている。
「彼に対して何ができるか? と聞かれても、それは陳腐な答えかもしれないが、ただ自分のゲームをできる限り管理して、最高のスコアを出すことしかできない。彼は追いかける対象として素晴らしい人物だ。僕たちも週末、自分たちに何ができるか挑戦するだけさ」
圧倒的な強者にどう挑むのか

フェアウェイキープ率も初日の28.57% (4/14)から78.57% (11/14)に跳ね上がったスコッティ・シェフラー(写真は26年WMフェニックスオープン)
精度を極めたボールストライキング、外さないパッティング、そしてミスを即座に取り返す強靭なメンタル。2ボギーを叩いてなお「61」を叩き出す完全無欠の王者に対し、週末の決勝ラウンドで他の選手たちはどのような戦略で挑むのか。
アバーグのように王者の強さを認めつつ自身の限界を押し上げるのか、フリートウッドのように雑音を消して自分のゴルフに徹するのか。猛暑のメンフィスで繰り広げられる、最高峰のサバイバルレースから目が離せない。
写真/岩本芳弘
