未来富山女子ゴルフ部が発足して4カ月が経ちました。部員は杉崎希歩(すぎさき・のあ)ただ一人。監督である私と二人三脚で、ゴルフと学びの日々を過ごしています。
未来富山は通信制高校なので、普段の授業はプリントが中心。そこに、スクーリングと呼ばれる対面での授業を組み合わせています。生活はゴルフ中心ではありますが、勉強時間も確保されており、当たり前ですが、卒業後は高校卒業の資格が得られます。
もっとも、ゴルフ部監督である私は、学業に関しては生徒の自主性に任せてノータッチ。杉崎の目標である「稼げるプロになる」ことをサポートするのが私の役割です。
そのためにはなにが必要なのか。ゴルフ中心の高校生活というと、日がな1日練習場でボールを打つ日々を想像するかもしれませんが、実は違います。午前中はひたすらトレーニング。それが部員の日常です。

成長期の体に合わせて体力トレーニングメニューを黙々とこなす杉崎希歩
たとえば高校生にとって最高峰の試合である日本ジュニアは3日間競技。指定練習日を含めば4日間連続でプレーする必要があります。その最終日最終ホールで最高のパフォーマンスを発揮するためには、当然ながらそれを支える肉体が必要。ましてや、プロになればそれを毎週のようにこなす必要があります。パフォーマンスを高め、怪我を防ぐために、トレーニングは技術練習と同じくらい大切なことなんです。
プロたちは、トップ選手ほどトレーニングに時間を割いています。半年前まで中学生だった杉崎は、まだまだ体作りができていません。技術習得も急ぎたいところですが、焦らずしっかりと土台をつくる作業を進めています。
私が富山に行くのは月に10日ほど。その間はトレーニングを指導し、ラウンドに付き添います。そして、残りの20日間は練習メニューを本人に渡します。20日後に再会した際、愚直にそのメニューをこなしていたか、サボっていたかはもちろん一目でわかります。続けられる選手だけがプロになっていくのです。

理学療法士の資格を持つ杉崎広学さんが学校職員としてトレーニングを指導する
頼もしい味方も加わりました。それが、理学療法士・杉崎広学さんの“加入”です。未来富山高校には昨年夏の甲子園に出場した野球部もあることから、学校側がその手腕を評価し、野球部と女子ゴルフ部のフィジカル強化を担う専属トレーナー(学校職員)として、正式に迎え入れることになったのです。私が富山にいない間、トレーニング面を見てもらえるのはとてもありがたいです。
技術練習に関しては、アプローチやバンカーショット、パターといった基本中の基本から学び直しています。そして、立山カントリークラブの厚意のもと、コースを自由に使わせていただける環境を活かし、1球1球狙いを明確にする習慣づけを行なっています。どこを狙い、どのような球筋で打つのか。外れた場合ボールはどこに行きやすく、そこからどのようなリカバリーが可能かを考え抜いてショットを放つ。この習慣は、アマチュアゴルファーのみなさんも身につけていただけると、スコアアップにつながると思います。
恵まれた環境でラウンドさせてもらう一方で、杉崎にはもうひとつの重要な「日課」があります。それが、学費免除の代わりとして行うゴルフ場での裏方業務です。練習の合間や夕方には重い目土袋を提げてコースを歩き回り、ディボット跡の修復や業務の補助に汗を流します。
一見すると過酷な労働ですが、自分の足でコースの隅々まで歩き、傾斜や芝の起伏を体感することは、最強の「マネジメント練習」でもあります。プレーヤーたちが残したディボット跡やミスの痕跡を見ることで、「なるほど、ここではこういうミスが出やすいのか」と客観的なデータとして蓄積され、それが自身のコース戦略に活きてくるのです。泥臭い裏方業務のなかから技術を盗み取り、感謝の心を育む。それこそが、この前代未聞のゴルフ部が目指す“富山からの下剋上”の原動力でもあります。
その成果は徐々に出ており、6月に開催された「富山県年代別ゴルフ大会 ジュニアの部」では初日77、2日目75のトータル152で優勝することができました。

北陸ジュニアゴルフ選手権では6位と同年代のライバル達と切磋琢磨した
一方、約1カ月前に出場した北陸ジュニアゴルフ選手権では「76」で19人中6位。試合で70台のスコアをコンスタントに出せるようになってきたのは収穫といえますが、まだまだ試合のなかで体力と集中力が続かない面が見られます。
健全な魂は健全な肉体に宿るといいますが、土壇場でのナイスショットは集中力の途切れないタフな肉体から生まれるとも言えます。蛹が蝶へと羽化するように、毎日の地道なトレーニングがいつか花開く日がきっとくる。
そう信じて、トレーニングに励んでもらいたいと思っています。


