2026年「全英オープン」を制したライアン・フォックスは、プレーオフシリーズ第2戦「BMW選手権」の公式会見で「全英を制したクラブ変更の全貌」を語った。

陥没したフェアウェイウッドと「2番アイアン」の発見

フォックスは全英オープンの約1カ月前というタイミングで、ドライバー、3番ウッド、そして3番アイアン(2番仕様)というバッグの中の上の番手のクラブをすべて一新した。自身の感覚を信じ、急遽投入した新モデルがリンクスコースで完璧に機能し、彼をメジャー初制覇へと導いた。メーカーの「スリクソン(ダンロップ)」にとっても、新ギアの性能を最高の形で証明することになった。

クラブ変更のきっかけは、スコットランドへ渡る直前に起きた予想外のトラブルだった。

「気に入っていた3番ウッドがあったんだけど、僕は半年くらいでフェースを凹ませてしまう傾向があるんだ。スコットランドでそれが起きてしまって、スピン量が増えすぎてコントロールできなくなった」

困り果てた彼を救ったのは、欧州のツアー担当者であるジェイソンだった。彼から「新しいヘッドを見てみるかい?」と提案されたフォックスは、一目でそれを気に入り即座にバッグへ投入した。

「見た目も前に使用していたモデルに似ていたし、パフォーマンスもすごく良かったからね」

同時期、彼にとってもう一つの強力な武器となるギアが見つかった。「トラベラーズ選手権」のツアバンでのことだ。

「誰かが新しい3番アイアンをテストしているのを見て、『すごくカッコいいな。ロフトを立てて2番アイアンにしてくれないか?』と頼んだんだ。中空構造だから、中にホットメルト(重量調整剤)を入れてヘッドを重くしてもらった。トラベラーズでテストして好感触だったから、7番ウッドが不要になるスコティッシュオープンと全英オープンのリンクスコースで使うことにしたんだ。本当に素晴らしいパフォーマンスだったよ」

「ベンタス TR ブラック」へ辿り着いたギリギリの微調整

画像: スリクソン ZXi RKT LS × ベンタス TR ブラックの組み合わせで「間違いなく今年一番のドライバーショットが打てた」と話すライアン・フォックス

スリクソン ZXi RKT LS × ベンタス TR ブラックの組み合わせで「間違いなく今年一番のドライバーショットが打てた」と話すライアン・フォックス

フェアウェイウッドとアイアンの変更がスムーズに進む中、ドライバーに関してはさらに繊細な調整が行われていた。トラベラーズ選手権の頃から、フォックスはドライバーのコントロールに違和感を覚減していたという。

「真っすぐ構えればそこへ飛んでいくんだけど、僕は少しフェードを打つのが好きでね。その球筋をコントロールするのに苦労していたんだ」

実際、公式データ(ShotLink)を見ても、今季のフォックスのティショットはドロー系(25%)に対してフェード系(LTR)が実に「73%」を占めており(ツアー平均は56%)、ツアーでも屈指のフェード偏重ヒッターである。だからこそ、フェードの曲がり幅をミリ単位で管理できるシャフトの微調整は死活問題だったのだ。

彼はスコットランドに入る前の練習で、以前使っていた古い「ベンタス」のシャフトをテストしてみた。すると数値が劇的に良くなったため、スコティッシュオープンの月曜日に本格的なテストを開始。ツアー担当者と「このままのシャフトで行くか、それとも少し新しいモデルにするか」と協議した結果、彼は日本発のシャフトブランド「Fujikura(フジクラ)」の「ベンタス TR ブラック」を選択した。

「最初の2打を打った瞬間に『ああ、これは本当にフィーリングが良い』と感じたよ。そのままバッグに入れたんだ。全英オープンでは、間違いなく今年一番のドライバーショットが打てたね」

新ヘッド「RKTモデル」との相性と、ギアが導いたメジャー制覇

この劇的なシャフト変更と同時に、彼はドライバーのヘッドも「スリクソン ZXi RKT LS」に変更していた。しかし、これに関しては「見た目がこれまで使っていたプロトタイプとほとんど同じだったから、移行はとても簡単だった」と語っている。

「スリクソン ZXi RKT LS」のヘッドと、Fujikuraの「ベンタス TR ブラック」という“和製ギアの黄金コンビ”。そして、急造の2番アイアンと新しい3番ウッド。

新ギアを引っ提げて挑んだ全英オープンだが、初日は「72(2オーバー)」とメジャー覇者としては非常に重いスタートを切っていた。しかし、彼は自らが選び抜いた新たな相棒たちを信じ抜いた。2日目以降、これらの武器が狂いなく火を吹き、終わってみれば通算10アンダー(270)での劇的な逆転メジャー制覇を成し遂げたのだ。

メジャーという極限のプレッシャーがかかる舞台で、フォックスは直前のフィッティングで自らの感覚を研ぎ澄ませた。その決断とスリクソン(ダンロップ)およびFujikuraの技術力が完璧に噛み合った結果が、あの誇り高きクラレットジャグなのだ。トッププロとツアーレップによる緻密な作業、そして直感という名の“ギアドラマ”が、彼の全英制覇をさらに味わい深いものにしている。

写真/R&A提供


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