PGAツアーのシーズン終盤戦、プレーオフシリーズの醍醐味といえば「ポイントランキングの劇的な変動」だろう。上位30人だけが進める次週の最終戦(ツアー選手権)、そして今年はプレジデンツカップ開催年ということで、上位6人が自動選出される代表枠。境界線上で戦うトッププロたちは、押し潰されそうな重圧のなかでどのような心理状態にあり、いかにして生き残りを図ったのか。極限の心理戦における、彼らの対照的なアプローチに迫る。

カントレーの「BMW選手権男」としての絶対的自負とモリカワの誇り

画像: 年間王者に輝いたこともあるパトリック・カントレーが19位で最終戦へ(写真は26年全英オープン)

年間王者に輝いたこともあるパトリック・カントレーが19位で最終戦へ(写真は26年全英オープン)

パトリック・カントレーは今大会開始前、ポイントランク43位と最終戦進出圏外に沈んでいた。しかし終わってみれば単独2位フィニッシュ。ランキングを19位まで急浮上させ、見事に逆転で最終戦行きの切符を掴み取った。

この土壇場での激走は決して偶然ではない。彼は2021年・2022年の「BMW選手権」を連覇しており、ジャック・ニクラスらと並ぶ大会史上わずか7人の連覇達成者の1人という異彩を放つ「BMW選手権キラー」なのだ。同組で彼の猛チャージを目撃したモリカワも「パトリックはなぜかBMW選手権ではいつも信じられないようなプレーをする。本当に何なんだろうね(笑)」と脱帽するほどだった。

土壇場での勝負強さの裏にあったのは、徹底した「自己対峙」だ。ラウンド中、リーダーボードやフェデックスカップの順位を気にするかと問われると、「時々見ることはあるが、目の前のタスクと自分のゲームプランを実行することだけに集中していた」と語る。キャディからの順位に関する情報提供も過度には求めなかったという。周囲の状況をあえて遮断し、自分にコントロールできる「目の前の1打」だけにフォーカスする極限の冷静さが、彼を這い上がらせた。

画像: 選考ランク6位を死守してプレジデンツカップの代表入りを決めたコリン・モリカワ(写真は26年全英オープン)

選考ランク6位を死守してプレジデンツカップの代表入りを決めたコリン・モリカワ(写真は26年全英オープン)

一方、コリン・モリカワはプレジデンツカップの米国選抜自動選出枠のボーダーライン上にいた。最終結果は4位タイ。これにより選考ランキング6位を死守し、キャプテンピック(推薦)を待たずに自力で代表入りを決めた。

実は今週のモリカワは、体に故障を抱え満身創痍の状態で戦っていた。本来のスウィングができない中で彼を支えたのは、ゴルフ界の有名な格言だった。

「昔から『怪我をしたゴルファーを警戒せよ』と言うんだ。体が万全ではないからこそ、余計なスウィングの技術迷宮に入り込まず、センターグリーンを狙うような最もシンプルでスマートなマネジメントに集中できた」

「スネデカー(キャプテン)からは一年中、『トップ6に入らなければ、誰が選ばれるか分からない』と言われ続けてきたからね」とモリカワは振り返る。

「だからこそ、自力で決めたかった。他人の判断に委ねたくなかったんだ」

すぐ後ろには今大会上位に入ったクリス・ゴッタラップらが僅差で迫っていたが、怪我を抱えながら「マネジメント」で勝ち取った自力での6位死守は、王者のプライドと凄みを強烈に印象付けた。

パット不振に苦しみながら掴んだ、フォックスの「人生初の最終戦」

画像: 47位と振るわなかったが、フェデックスカップランクは30位を死守したライアン・フォックス(写真は26年全英オープン)

47位と振るわなかったが、フェデックスカップランクは30位を死守したライアン・フォックス(写真は26年全英オープン)

プレッシャーとの闘いは、時に残酷なまでに選手の感覚を狂わせる。今年の全英オープン覇者であるライアン・フォックスは、今週パッティングの不振にひどく苦しんでいた。

「3日間ティーからグリーンまでは良かったのに、ボールをカップに入れられなかった。そして最終日はプレー自体がひどかった(4日間のSG: Puttingは『-5.279』で47位)」

しかし、終わってみればポイントランクはギリギリの30位。全英オープンを制した39歳にとって、主戦場をアメリカに移してからの悲願であった「ツアー選手権初出場」という最高のご褒美を掴み取った。

「ゴルフは本当に理にかなっていないよ」と自嘲気味に笑うフォックス。最終日は苦しみながらも、中盤でいくつか良いパットを決められたことが救いとなった。

「アトランタへ行けるのはボーナスのようなもの。ダメだったら1週間休みが増えるだけだと割り切っていた」

重圧のなかで、過度な期待を手放す「割り切り」もまた、彼が難関を乗り越えるための生き残り術だったのかもしれない。

「最終戦」と「代表枠」――極限の心理戦を制した男たちの思考法

最終戦進出者、そしてプレジデンツカップ代表枠の顔ぶれ。結果だけを見れば「順当」や「劇的」という言葉で片付くかもしれない。しかし、その境界線上の裏側には、徹底して自分と向き合う冷静さ、自力で運命を切り開くプライド、そして時にはすべてを割り切る泥臭さがある。選ばれし30人の男たちは、それぞれの決意と意地を胸に、シーズンを締めくくる最後の大舞台、アトランタへと向かう。

写真/R&A提供


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