2028年から導入される、PGAツアーの劇的なフォーマット変更。しかし、どれほど魅力的なシステムであっても、それを支える巨額の賞金とインフラを誰がスポンサードするのかという問題は避けて通れない。次期コミッショナーに就任するPGAツアーCEOのブライアン・ロラップ氏が会見で明かした数字は、PGAツアーの現在の圧倒的な好調ぶりと、対立するLIVゴルフに対する強気で冷徹な姿勢を裏付けるものだった。

視聴率増と、チャンピオンシップシリーズ「残り4枠」を巡る14社の争奪戦

ロラップ氏によれば、現在のPGAツアーはまさに絶好調だ。テレビ視聴率は前年比19%増(2018年以降で最高を記録)、観客動員数も8%増と、ファンからの支持は拡大の一途をたどっている。「今季の36大会中26大会が2打差以内で決着した」という事実が示す通り、極めてハイレベルな実力伯仲の戦いがファンを魅了しているのだ。

この圧倒的な数字を背景に、2028年からの新システムにおいて最高峰の舞台となる「チャンピオンシップシリーズ」のスポンサー探しは、文字通りの“嬉しい悲鳴”を上げている。

想定している全15大会のうち、すでに7大会のスポンサーが発表され、さらに4大会の発表が控えている。そして驚くべきは、未定となっている「残り4枠」のレギュラーシーズン大会の座を巡って、現在「14社の企業と積極的な協議を行っている」という事実だ。

「これは非常に恵まれた悩みだ」とロラップ氏は自信を覗かせる。

通常、巨額の資金を提供する冠スポンサーには「自社推薦(スポンサー枠)で好きな選手を出場させる権利」が与えられる。しかし、2028年からの「チャンピオンシップシリーズ」ではこの推薦枠やマンデー予選が完全に廃止され、100%ポイント順位のみで出場が決まる完全実力主義(メリットクラシー)が徹底される。企業側からすれば、巨額の資金を出しても自社枠という特権が得られないにもかかわらず、14社もの企業が殺到しているのだ。これはPGAツアーのブランド力がいかに圧倒的であるかを証明している。

さらに、記者から「これだけスポンサー候補が殺到しているなら、2000万ドル規模の大会をもっと増やして稼げばいいのでは?」と質問された際、ロラップ氏は首を横に振ってこう答えた。

「お金のためだけに、あちこちに大会を増やすことには興味がない。私たちの『北極星』は、ファンにとって最も魅力的で最高の競争を設計することだ。それを正しく実現できれば、お金は後からついてくる」

目先の利益に走らず、ツアーの「競技的クオリティ」を最優先で守り抜くという次期コミッショナーの揺るぎない経営哲学が覗く。

さらに、商業的需要の熱波は「チャンピオンシップシリーズ」だけにとどまらない。2部にあたる「チャレンジャーシリーズ」に対しても、ツアー側からの積極的な売り込み前に「自発的な問い合わせや財政的オファー」が殺到しているという。ロラップCEOは「そこには、これまで一度もPGAツアーに関わったことのない新しい企業が多数含まれている。あらゆる予算やマーケティング目標に適合する価格帯を提示できたことが奏功している」と明かした。2層構造への移行は、スポンサー獲得のビジネスモデルとしても大成功を収めていると説明した。

改革の陰にある「地方大会の悲哀」と、選手理事の苦渋の決断

画像: イーストレイクで記者の質問に応えるブライアン・ロラップCEO(写真/Getty Images)

イーストレイクで記者の質問に応えるブライアン・ロラップCEO(写真/Getty Images)

実力主義と商業的成功を熱弁するロラップ氏に対し、アトランタの会見場では極めて生々しい質問も飛んだ。

「ジョンディアクラシック」や「サンダーソンファームズ」といった、何十年もツアーを支えてきた「労働者階級のトーナメント」が2部(チャレンジャー)に置かれ、その街に世界トップ100の選手が来なくなることへどう答えるのか、という問いだ。

ロラップ氏は「ツアー全体のビジネスを成長させることが、結果的に彼らの保護にも繋がる」と大局的な視点を説くが、長年ツアーを支えてきた伝統ある地方コミュニティやボランティアたちが被る「一時的な悲哀や喪失感」が、綺麗事で片付かないことも事実だ。

この「実力主義の冷徹さ」と「伝統の保護」の対立を前に、筆者の脳裏に浮かび上がったのは、今年6月の「BMW選手権」のメディアデーで、未来競争委員会のメンバーであり選手理事を務めるカミロ・ビジェガスが苦渋を滲ませながら語っていた、あの切実な告白だった。

「全員を満足させることはできない。それが世界の仕組みだ。しかし、もし私たちが今、痛みを伴う変化を拒めば、次の2030年の放映権交渉でツアーはより悪い状況に追い込まれ、結果的に全選手や、ツアーが支えている慈善活動にまで壊滅的な影響が及ぶことになる。古い習慣にしがみつくのではなく、全体を生き残らせるために変化を受け入れなければならないんだ」

最高峰のビジネスとして羽ばたくためのメリットクラシーの裏には、地方の犠牲を呑み込んで突き進むという、ツアー全体の存続をかけた現場の切実な覚悟が存在している。

LIVゴルフ「特例復帰」は行わない。冷徹な宣告

ツアーが絶好調であり、スポンサーが殺到しているからこそ、PGAツアーはLIVゴルフに対して強気な姿勢を崩さない。

では、LIVゴルフへ移籍した選手たちが、この魅力的な新制度に参加する道は残されているのか? ロラップ氏の答えは極めて冷徹だ。

かつてブルックス・ケプカに適用したような「復帰メンバープログラム(特例)」を復活させる可能性について問われると、ロラップ氏は「現状は復活させる予定はない」と一蹴した。

実のところ、ケプカが復帰した際、ツアーは単なるペナルティとしての罰金ではなく、「PGAツアー チャリティーズ(ツアー慈善基金)」へ500万ドル(約7億5000万円)という巨額の慈善寄付を行うことを求めた。

実はこの500万ドルのうち「半額の250万ドルは、99名のPGAツアー選手自身が選定した地域社会の慈善団体」へ直接分配・寄付される仕組みになっている。ただの没収金ではなく、ケプカ自身や仲間たちが重要だと信じる地域活動に還元させることで、ロラップ氏は「復帰メンバーがコミュニティと再接続する非常に素晴らしい模範となった」と肯定的に振り返る。

さらに彼は、LIVの今後の動向(新投資家の参入など)についても「私はニュースで読むことしか知らない」と距離を置いた上で、ツアー復帰の絶対条件を突きつけた。

「PGAツアーに復帰したい選手は、まず既存の契約義務(LIVとの契約)から完全に解放されていることを証明しなければならない。ブルックスはそれを証明した。それが証明されない限り、真剣に検討することはできない」

「PGAツアーは実力主義とルールに基づく組織だ」とロラップ氏は強調する。LIVの動向に振り回されることなく、自らのルールを守り、ツアーの価値を高めることにのみ集中する。これが、絶好調のPGAツアーが導き出した、迷いのない答えである。

強大なビジネスと貫く哲学――絶好調のPGAツアーが導き出した「答え」

圧倒的な視聴率と観客動員を武器に、スポンサー争奪戦を巻き起こし、LIVゴルフに対しては毅然とした態度を貫くPGAツアー。その強大なビジネスの全貌が見えてきた。

※明朝配信の【第3部】では、欧州ツアーと共闘する「秋の国際戦略」に迫ります。

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