タイガー・ウッズらとの会話で見つけた「シンプル」な感覚
今年初め、モリカワは長年指導を仰いできたパッティングコーチのステファン・スウィーニーと道を分かち、自力での感覚模索を続けていた。
「彼から多くの知識を得たけれど、毎週毎週、しっかりと自分の中に定着する『何か』を見つける必要があったんだ」
コーチ不在の中で彼を救ったのは、「TGL」の現場で偶然交わされたトッププロたちとの会話だった。
「TGLでタイガー(・ウッズ)、キズ(ケビン・キスナー)、そしてマックス(・ホーマ)と素晴らしい話をしたんだ。本当はキズに手柄を立てさせたくないんだけどね(笑)。でも、彼とマックスのおかげなんだ。彼らの言葉が、僕の中にずっと残っていた」
世界最高峰の技術を持つ彼らからのアドバイスは、決して複雑なメカニズムの指導ではなく、極めてシンプルなものだった。その教えを胸に、現在の彼のパッティングルーティンは驚くほど削ぎ落とされている。
「僕のウォームアップを見てもらえればわかるけれど、本当にとてもシンプルなんだ。多くはやっていない。ただ、今年学んだことを取り入れているだけさ」
メンフィスの「迷宮」から、イーストレイクの「超高速グリーン」へ

イーストレイクでパッティングが好調なコリン・モリカワ(写真は26年全米オープン)
パッティング感覚の復活には、コースコンディションの劇的な変化も味方した。2週間前の「フェデックスセントジュード選手権(メンフィス)」、モリカワはライン読みに不満を残していた。
「パットの調子自体は今年ずっと良かったのに、メンフィスのグリーンは新しく張り替えられたばかりで落ち着いておらず、ラインを読むのが本当に難しくて混乱させられた」
しかし、今週のイーストレイクのグリーンは「ここ数年で最も速い」コンディション。圧倒的なショット力を持つモリカワにとって、この硬く締まった高速グリーンはむしろ好都合だった。
「芝目の方向に向かってボールを落とせるから、スピンでピタッとボールを止められる。ショットでピンに絡められるからこそ、グリーンの速さを味方にして綺麗なラインが見えているんだ」と、イーストレイク攻略の技術的背景を明かす。
プレジデンツカップ「自動選出枠」への執念と、6人だけのグループチャット
モリカワがパッティングの感覚を必死に取り戻そうともがいていた裏には、もう一つ、彼を突き動かす強力なモチベーションが存在していた。9月末に開催される対抗戦「プレジデンツカップ」の代表入り、それもキャプテン推薦ではなく「自動選出枠(ポイントランク上位6名)」での切符獲得への執念だ。
米国選抜のキャプテンを務めるブラント・スネデカー(スネッズ)からの言葉が、1年を通じてモリカワの頭を離れなかったという。
「去年、スネッズと『自力でトップ6に入ることの重要性』について話したんだ。その時の会話が、今年ずっと僕の心に刺さっていた」
彼はBMW選手権終了時点で、見事に自動選出枠の6位に滑り込み、自力で代表の座を勝ち取った。代表確定の夜、キャプテンから届いたのは、自動選出された「上位6名」だけに送られた特別なメッセージだった。
「選ばれる自信があったとしても、最終的には誰かの判断に委ねることになる。それだけは避けたくて、どうしても自力で枠を勝ち取りたかった。だから、あの6人のメッセージスレッドに自分の名前があることには、本当に大きな意味があるんだ」
自らの手で運命を切り開いた安堵感と、ナショナルチームの一員としての強烈なプライドが、彼の言葉からひしひしと伝わってくる。
削ぎ落とされた思考と完全復活したパット――ムービングデーへ
シンプルな思考を取り戻し、代表枠のプレッシャーという大きな重荷を下ろしたモリカワの心と体は、今、極めてクリアな状態にある。「明日はムービングデーだ。さらに大きな動き(チャージ)を見せたいね」
タイガーたちからの助言を胸に、パターの感触を完全に掴んだ若きメジャー覇者が、週末のイーストレイクで年間王者のタイトルへと襲いかかる。
写真/USGA提供
