ジェラードの戦略:前週の焦りと重いラフが生んだ「80%スウィング」

あえて80~90%のスウィングで最終戦に挑み、それがはまっているライアン・ジェラード(写真は26年全米オープン)
この日「65」をマークし、自身2度目となる36ホール終了時点での首位(または首位タイ)に立ったジェラード。彼の好調を支えているのは、ショートアイアンでの綿密な距離コントロールだ。
彼が今週「スピードを落とす練習」に没頭した背景には、前週のBMW選手権(ベルリーブCC)からの技術的な伏線があった。
「先週はボールが自分の予測以上に飛びすぎてしまい、距離感が合わずにイライラしていたんだ」
さらに今週のイーストレイクは、連日の雨によってラフが「ジューシーで非常に重い」コンディション。ラフに捕まればボールが深く沈み、フライヤーで飛びすぎる危険と常に隣り合わせだった。だからこそジェラードは、あえてフルスウィングを捨てた。
「今週は練習場で、8番、9番、ピッチングウェッジ、ギャップウェッジを使って、80パーセントや90パーセントのスピードで距離を打ち分ける練習に多くの時間を費やした。スピードを落として打つことに、ずっと快適さを感じている」
あえてスピードを落とし、弾道やスピン量を自らのコントロール下に置く。前週の反省と今週の重いラフへの警戒心が生んだ繊細な技術が、厳しいピン位置に対して確実にチャンスを作り出し、首位タイという結果を結実させたのだ。
ホブランの戦略:「応急処置」の裏に潜む無双のパッティング(SG: Putting 1位)

いまのスウィングに不満はあるが、結果がいいのでと割り切るビクトール・ホブラン(写真は26年全米オープン)
一方、2023年のフェデックスカップ王者であるホブランのアプローチは、より泥臭く、実戦的なものだ。
この日「66」をマークしたホブランだが、スウィング自体は理想の状態から程遠い。好調だったトラベラーズ選手権を引き合いに出し、彼は現状をこう分析する。
「トラベラーズではドライビングでフィールド1位だったし、ボール初速も80m/s近く(時速170マイル台後半)に達して、本当に真っすぐ打てていた。でも今は、そこから大きく変えたわけではないのに、スウィングに違和感がある。少し余計な補正(バンドエイド)をしなければならないんだ」
「理想の状態に戻したい」と葛藤を抱えながらも、不完全な状態を受け入れて凌ぐホブランだが、その裏ではライバルを絶望させる驚異的なデータを叩き出している。2日目を終えて、彼のグリーン上のストローク貢献度(SG: Putting)は「+4.691」を記録し、堂々のフィールド第1位に君臨しているのだ。
「ボールが真っすぐ行く以上は、スコアを作れると分かっている。それが今の僕の現在地だ」
ショットが不完全であっても、ボールがグリーンに乗りさえすれば、イーストレイクを知り尽くした圧巻のパットタッチでスコアを削り取っていく。完璧を追わず、コース上で機能する「応急処置」と極上のパッティングで首位に立つ姿にこそ、凄みが如実に表れている。
正解なき迷宮で首位に立った2人の答え

ビクトール・ホブラン(左)とライアン・ジェラード(右)
綿密な距離コントロールのためにあえて「80%スウィング」を取り入れたジェラード。スウィングの違和感を抱えながらも「応急処置」と圧巻のパッティングでスコアを作るホブラン。
プレースタイルも現状の課題への向き合い方も全く異なる2人が、同じ「通算10アンダー」という頂点に辿り着いた。この対照的なアプローチこそが、ゴルフというスポーツの難しさと面白さを象徴している。正解のない迷宮の中で、彼らが週末にどのような戦いを見せてくれるのか、ますます期待が高まる。
写真/USGA提供
