イリノイ州のメダイナCC No.3(7548ヤード、パー70)で開催される「プレジデンツカップ2026」。世界最高峰のプロたちが国と地域の威信をかけて激突するこの対抗戦は、通常のトーナメントとは全く異なる心理戦の舞台となる。過去の通算成績は米国13勝、世界選抜1勝、引き分け1。現在10連勝中という圧倒的な強さを誇る米国に、世界選抜がどう挑むのか。両チームの主将の言葉から、マッチプレーという特殊なフォーマットが持つ過酷な裏側を紐解いていく。

18個のミニプロジェクトと「失われつつある芸術」

「ストロークプレーは72ホールの長期的プロジェクトだが、マッチプレーは18個のミニプロジェクトなんだ」

WGCマッチプレー選手権で2度(2006・2009年)の優勝を誇る「マッチプレーの達人」であり、自ら2023年にメダイナCC No.3のコース大規模改修を手掛けた設計家でもある世界選抜のジェフ・オギルビー主将は、マッチプレーの神髄をこう定義する。

通常のトーナメントであれば、選手は4日間かけてコースの罠を攻略し、最も少ないスコアを目指す。しかし、プレジデンツカップは違う。

「マッチプレーはもっとメンタルな戦いなんだ。コースを相手にするのではなく、目の前の『人間(相手選手)』と戦わなければならない」

相手の息遣いを感じるほどの距離感で繰り広げられる濃密なメンタルバトル。オギルビー主将はさらに、マッチプレー独特のプレースタイルの変化について解説する。

「ストロークプレーでは常に安全な確率(パーセンテージ)を狙う。だがマッチプレーでは、相手のショット次第で攻撃的にも守備的にも一瞬で戦略が変化する」

相手がミスをしてボギーを叩きそうな状況であれば自分は安全にパーを拾い、相手がピンそばに寄せればリスクを冒して攻める。1ホールごとに完結する目まぐるしい判断と駆け引きの連続なのだ。

大会歴代最多タイとなる12回目の出場を果たすアダム・スコットは、このマッチプレーを「現代ゴルフで失われつつある芸術」と表現する。

「ストロークプレーと違い、相手にプレッシャーを与える戦略が重要だ。あえてティーショットでレイアップして先にフェアウェイへ置くことで、相手の判断を狂わせることができる」と語るように、コースの仕掛けを知り尽くしたオギルビー主将の戦術眼のもと、高度な駆け引きが繰り広げられる。

米国主将の葛藤と、相棒たちが明かす「世界1位と組むリアル」

画像: ブランド・スネデカー(左)とジェフ・オギルビー(右)

ブランド・スネデカー(左)とジェフ・オギルビー(右)

一方、最強チームである米国選抜を率いるブランド・スネデカー主将は、マッチプレー特有の「ペアリング(誰と誰を組ませるか)」の難しさを吐露した。特に頭を悩ませているのが、世界ランキング1位の絶対王者、スコッティ・シェフラーの相棒選びだ。

「タイガー・ウッズやジャック・ニクラスといった歴代の最強選手たちもそうだったが、シェフラーと組む選手には独特の心理的プレッシャーがかかるんだ。『彼は世界最高の選手だ。自分が彼の足を引っ張ってはいけない』とね。その重圧に負けず、自分自身のゴルフができるパートナーを見つけることが主将としての最大の課題だ」とスネデカー主将は語る。

しかし、相棒候補たちの口から返ってくるのは意外なほど自然体の言葉だ。

13歳からの幼なじみであるサム・バーンズは、2022年大会でペアを組んで勝ち星なしに終わった際も「スタッツ分析ではどのペアと当たっていても勝っていた圧倒的な内容だった。彼をガッカリさせてもそれがゴルフ。世界1位と組む重圧は感じない」と語る。前回2024年大会で相棒を務めたラッセル・ヘンリーも「タイガーと組むなら緊張しただろうが、スコッティの家にも遊びに行く仲だし、彼はパートナーをすごくリラックスさせてくれる」と全幅の信頼を寄せる。

アナリティクスと「謝罪禁止」の絆

両主将とも、現代ゴルフにおいて「Strokes Gained(ストローク貢献度)」などのデータ分析を活用してペアリングや戦略を練っていることは認めている。しかし、最後はやはり「人間」の勝負だ。

「データは活用するが、最終的には選手の意志と目に見える状態(直感)を信じる」と口を揃える両主将。

また、交互に打つフォーサムズ特有のメンタル面について、初出場のクリス・ゴッタラップらは「相棒に対して絶対に『ごめん(謝罪)』と言わないルール」を明かしている。ミスはお互い様であり、謝るのではなく次のショットでいかに挽回(バウンスバック)するかがすべてだからだ。

最新のアナリティクスと、土壇場のメンタルが交錯するメダイナの地。第7回目の出場となる松山英樹や、12回目のアダム・スコット、そして初出場の久常涼らが、この濃密な対人戦でどのようなドラマを見せてくれるのか。熱狂のティーオフが迫っている。

写真/Getty Images


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