1970年代からアジア、欧州、北米などのコースを取材し、現在は日本ゴルフコース設計者協会名誉協力会員として活動する吉川丈雄が、ラウンド中に話題になる「ゴルフの奥深い知識」を綴るコラム。第84回目は、ウェールズを代表する名門リンクス「ロイヤル・セント・デビッドGC」の美しさと、ウェールズでのゴルフ旅の魅力について。

言語も景観も変わる連合王国――ロンドンから車で向かうウェールズの旅情

画像: ロイヤル・セント・デビッドGC(公式HPより。画像をクリックすると公式HPに移動します) www.royalstdavids.co.uk

ロイヤル・セント・デビッドGC(公式HPより。画像をクリックすると公式HPに移動します)

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英国の海岸線には数えきれないほどのコースが造られている。日本の海岸線は白砂青松という景観イメージがあるが、英国ではコースが造られている海岸線は荒れた不毛の砂地だ。海からの風は強く緯度的にも厳しい気候の地でもありコースに向いた場所だから「神が造り給うた」リンクスなわけだ。

リンクスの全部が荒ぶる海岸の地に造られたわけではない。ウェールズにロイヤル・セント・デビッドGC(Royal St. Davids GC・1894年開場・18H/6687Y/P69)というコースがある。

ロンドン郊外から車で出発。ウェールズに入ると、道路標識には英語と全く読むことのできない言語の表記があった。読めない言語の正体はウェールズ語だが、ロンドンから車で数時間走っただけで言語が変わるという体験は実におもしろい。

初めてスコットランドのエジンバラを訪れた際、紙幣に「バンク・オブ・スコットランド」と記されデザインもイングランドと異なっていたことを思い出すが、ウェールズはイングランドと共通の通貨(ポンド)が使われていた。

考えてみれば英国はUK、つまり連合王国だから当たり前だが、狭い国土のなかで言語と紙幣が異なるのは、例えば北海道に行くと1万円札の肖像画は渋沢栄一ではなく榎本武揚になるとか……そんな感じだろうか。

閑話休題。

ロンドンからほぼ半日走り、日が傾く頃にハーレックの町に到着し、最初に見かけた大きなホテルに飛び込んだ。ロビーから海岸方向を眺めると眼下に夕日によって黄金色に輝くリンクスが広がっていた。ロイヤル・セント・デビッドGCだ。

このコースの特徴は各ホールから中世のハーレック城が眺められることだ。ハーレック城は13〜14世紀の最高の城建築とされ世界遺産でもある。中世の城を眺めながらのプレーはロイヤル・セント・デビッドGCならではで、極めて印象的でもある。ちなみにハーレック(Harlech/ハーレスとも発音する)とはウェールズ語の美しい(hardd)と岩(llech)の組み合わせだ。

コースの開場は1894年。かつてハーレック城は波打ち際に接する崖の上に建っていたが、数百年かけて海岸線が約800メートル後退し、そこに広がった壮大な砂丘地帯にこのコースが造られた。その後、1908年にはロイヤルの称号を受けている。ウェールズのランキングトップ5で英国のベストコーストップ50、世界ランキング100にも選出されているウェールズを代表する名コースだ。

レイアウトは変化に富んでおり、9番ホールでクラブハウスへ折り返す伝統的な「往復型」ではなく、18ホールを1巡してハウスへ戻る周回形式になっている。そのため、ホールごとに向きが目まぐるしく変わり、吹き抜ける風の向きもめまぐるしく変化する。

画像: オーシャンリンクス宮古島3H※写真はリンクスのイメージ

オーシャンリンクス宮古島3H※写真はリンクスのイメージ

リンクス特有の風を読みながらのプレーは醍醐味があり「神が造り給うたリンクス(実際にはマンメイドリンクスだが)」に今自分がいることを意識することにもなり忘れがたい体験を味わえる。もちろん吹き付ける“気まぐれな風”はほとんどのリンクスにいえることだが。

イングランド、スコットランドのコースを巡るゴルファーは多いが、時にはウェールズも訪れてほしい。素朴な牧場景色、町の落ち着いた佇まい、ジェントルなウェールズ人、どこまでも続くワインディングロード……旅は楽し、なのです。

文・写真/吉川丈雄(特別編集委員)
1970年代からアジア、欧州、北米などのコースを取材。チョイス誌編集長も務めたコースやゴルフの歴史のスペシャリスト。現在、日本ゴルフコース設計者協会名誉協力会員としても活動中。

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